天才か、悪魔か……モーツァルトのオペラで話題をさらったギリシャの鬼才が放つ憂愁のシンフォニー
クルレンツィスのチャイコフスキー「悲愴」、11月1日国内盤発売!来日は2019年2月!
天才か、悪魔か……
モーツァルトのオペラで話題をさらった
ギリシャの鬼才が放つ憂愁のシンフォニー
チャイコフスキー
交響曲第6番「悲愴」
テオドール・クルレンツィス指揮
ムジカエテルナ
Design: Fons Hickman/Cover image: Markus Probst
Tchaikovsky: Symphony No.6 “PATHETIQUE”
TEODOR CURRENTZIS/MusicAeterna
■2017年11月1日発売 ■SICC-30426
Blu-specCD2仕様 ■定価¥2,600+税
■テオドール・クルレンツィスによる欧文ライナー翻訳つき
【収録曲】
チャイコフスキー
交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」
第1楽章 アダージョーアレグロ・ノン・トロッポ [19:42]
第2楽章 アレグロ・コン・グラツィア [7:42]
第3楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ [8:36]
第4楽章 フィナーレ:アダージョ・ラメントーソ [10:21]
【演奏】
テオドール・クルレンツィス(指揮)
ムジカエテルナ
【録音】2015年2月9~15日 フンクハウス・ナレパシュトラーセ、ベルリン(セッション録音)
モーツァルトのオペラ三部作「フィガロ」「コジ」「ドン・ジョヴァンニ」で話題をさらったギリシャの鬼才指揮者クルレンツィスの新作はなんとチャイコフスキーの「悲愴」交響曲! これまでにもショスタコーヴィチの交響曲をはじめ、ソニー・クラシカルに移籍してからもストラヴィンスキーの「春の祭典」や「結婚」、またチャイコフスキーではコパチンスカヤをソリストに迎えた「ヴァイオリン協奏曲」が発表されていましたが、交響曲レパートリーとしては移籍後初のものとなるという点でも大きな話題をさらうことは間違いないでしょう。今後はマーラーの交響曲やベートーヴェンの交響曲チクルスにも取り組むとアナウンスされていますが、この「悲愴」は、オーケストラ指揮者としてのクルレンツィスにさらなる注目を集める1枚になるでしょう。クルレンツィス自身による詩的なライナーノーツも必読です。日本盤のみ高品質Blu-specCD2仕様。
メランコリーに侵されて、あるいは「愛がもう一度僕らを引き裂いていく(Love will tear us apart)」
チャイコフスキーに、手紙の形を借りて──テオドール・クルレンツィス
(・・・)ピョートル・イリイチ、ずっと以前から私は、なぜあなたの交響曲というのは始まり方がこうもぎこちないのか、理解しようと努めてきました。あらゆる可能性を探りたくて、自分でオーケストレーションしようとまで考えました。一体なぜどうして、ヴィオラが主要主題を始めなくてはならないのか? でも私の試みはすべてどうしようもない、幼稚なものでした。あなたの禁欲主義こそが、知られていない物語、完全には理解されていない物語を語るための唯一の正しい方法だからです。対称性というものが持っている平板な正常性は私たちすべてに、この世界の中にいる自分自身に慣れるように強いる――ゆっくりとより厳しいものになりつつあるこの世界の中にいる、すでに私たちの肉体から離れて、言わば私たち自身の影になりつつあるこの世界の中にいる私たち自身に慣れるように。その影はそれ自身の生命を持ち始めているばかりではなく、私たちを脅かし始めてもいます。
これはまるで、鏡の中を覗き込んで、いつものように鏡に映った自分の姿を自分の眼で見ようとしたら、突然、自分の姿が体から離れて勝手に動き始め、それから顔中をピシャリピシャリと叩き始めたようなものです。第2主題まで涙はない。砂漠に水がないように。動揺もない。ただ悲しみだけがある。遠くで聞こえていた叫び声が次第に近づいてきて、だんだんと大きな叫びになり、ついには部屋に入ってくるように。そして突如として私たちは理解する。この叫びは私たち自身から発していたのだということを。 (・・・)
(ライナーノーツより抜粋/渡辺正訳)
チェロ奏者以外は立って演奏するムジカエテルナ(2015年) Photo: Anton Zavjyalov
◎クルレンツィス、ソニー・クラシカルでの初の交響曲録音
モーツァルトのダ・ポンテ・オペラ三部作でソニー・クラシカル・デビューを飾り、コパチンスカヤとのチャイコフスキー、そして「春の祭典」で昨年後半の日本クラシックCD界の話題をさらったギリシャの鬼才指揮者、テオドール・クルレンツィスの新作、チャイコフスキーの「悲愴」です。
◎衝撃的なザルツブルク音楽祭デビュー
クルレンツィスが今年夏のザルツブルク音楽祭にデビューし、ピーター・セラーズ演出の「皇帝ティートの慈悲」、それからモーツァルト「レクイエム」、マーラー「巨人」などを取り上げた演奏会で大きな話題を呼びました。先ごろNHK BSではモーツァルト「レクイエム」が放映されましたし、舞台を現代に移し、同じモーツァルトの「アダージョとフーガ」、「ハ短調ミサ」のキリエ、「フリーメイソンの葬送音楽」を挿入した「ティート」もクラシカジャパンでオンエアされています。
◎「毎晩『悲愴』のマスターとともに眠っているよ」(クルレンツィス談)
この「悲愴」は、そのザルツブルク音楽祭デビューに合わせて発売するべくソニークラシカルが準備を進めていたのですが、何せ、チャイコフスキーはクルレンツィスにとって、モーツァルト、マーラーと並ぶ大切な作曲家。今春の音源編集中は「毎晩『悲愴』のマスターとともに眠ってるよ」と語っていたほど作品に入れ込んでいたクルレンツィスは、自分が納得いく形に仕上がるまでじっくりと時間をかけ、ようやく完成を見たのです。自ら書きおろした長文のライナーからも彼の思いを読みとっていただけるのではないかと思います(ちなみにライナーのタイトルLove will tear us apartは、イギリスのロックバンド、ジョイ・ディヴィジョンの1980年のヒット曲)。
◎ベルリンで最も静寂が保たれた「フンクハウス・ナレーパシュトラッセ・ベルリン」でのレコーデイング
録音は2015年2月にベルリンで行なわれています。会場は「フンクハウス・ナレーパシュトラッセ・ベルリン」。1950年代に建設され旧東ドイツの国営放送局があった場所で、その中にある大スタジオ(といってもコンサートホール並みに天井が高く容積も大きく5列ほどの客席もあり)は、ベルリン市内および近郊で最も静かな録音会場の一つと高く評価されています。ここでは、東ベルリンの諸オーケストラのさまざまな録音が、そして壁崩壊後はバレンボイム/ベルリン国立歌劇場によるワーグナーのオペラが、さらに2000年代に入ると、マレイ・ペライアのソロ・アルバム、パーヴォ・ヤルヴィ/ドイツ・カンマーフィルのベートーヴェンやシューマンの全集が生み出されてきました。壁も床も木張りで残響は短め、響きは温かみのある明晰さが得られる場所です。
◎来日公演決定!
来日公演については、すでに発表されていますように、2019年2月にチャイコフスキー・プログラムが計画されています。
2019年2/13(水)19時 サントリーホール
チャイコフスキー: 組曲第3番 ト長調 op.55
チャイコフスキー: 幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」op.32
チャイコフスキー: 幻想序曲「ロメオとジュリエット」
Kajimotoウェブサイト http://www.kajimotomusic.com/jp/news/k=2855/