レイ・ラモンターニュ
2004年、RCAからのRay LaMontagneの高く評価されたデビュー作、「Trouble」は静かに250,000枚以上の売り上げを記録した。それはこのニューハンプシャー出身のシンガー・ソングライターを世界中のリスナーが彼の良さを人に広めたという草の根の結果である。その情熱的なニューボイスは荒々しくて滑らか、俯瞰的で身近に感じるものだった。



しかしフォローアップとなる次作品には、あれほど受け入れられたのに、LaMontagneは同じようなのものを作ろうとしなかった。「単に楽曲のコレクションは作りたくなかった」と彼は説明する。「それは悪いことでもなんでもないけれど、同じことを繰り返したくなかったんだ。」



だがそれはくり返しを避けるというより遥かに拘りがあったようだ。LaMontagneは自分がエンタテイナーであるとは思っていない。彼は自分の音楽を作曲し、レコーディングし、演奏し、それによって純粋な情熱が勝ち誇る。「常に自分を表現しているんだ。自分の曲を解き放してあげているんだ。沢山のエンタテイナーであるソングライターやミュージシャンがいて、みんな楽しそうにしている。時々とても羨ましく思うんだ。みんな最高に楽しそうだから」と彼は言う。



自分の人生と関係なく、一つの作業であるとソングライティングは見られがちだが、LaMontagneにとって、曲は自身に起きることの結果を形にしたものだ。「曲はいろんなところからくる。練習のようなものもある。そんな曲はとてもいい曲になるかもしれないけど、他の曲はもっとすごく純粋な感情の場からくるんだ」と彼は言う。



そうした曲が今回のニューアルバム、『’Till The Sun Turns Black』に詰め込まれている。有名なプロデューサー、そしてミュージシャンであるイーサン・ジョーンズとまた組み、ニューヨークの北部にあるエレアースタジオでセッションを始める前に、何をセカンドに入れるべきか、彼は自分が作った曲をあれこれ調べた。とても効果的で流れるような素敵な曲が沢山あったし、それ以上に彼に食い込んだ曲もあった。



そういう曲をあえて彼は選んだ。「作曲するのが楽しかったかり、時にはライブで演奏するのが楽しかったりする曲はあるけど、レコーディングの時になると自分には何の意味もなくなってしまえ。そんな曲は省いてしまった。いつも自分が最後まで取り組まないといけないような曲をレコーディングしたいんだ。」



『’Till The Sun Turns Black』を構成する11曲について、これらのことが重視された:有意味性への要求、感情的な関連性、そして正式にレコーディングされるまでアーティストの頭から離れようとしない曲に取り組むことの苦労だ。ホーンで温もりを出したソウルクラシシズムでより幅広いサウンドを出し、「Trouble」で一躍有名になったLaMontagneのビンテージアメリカンのR&B・アメリカーナフォークカントリーのハートと技を合わせ、今まで以上の壮大なものに仕上げている。曲のサイクルを通して、LaMontagneの“疲憊した、苦味がある、悩ましく、打ちのめされた、理解しがたい”声は、例え「男にはいくつもの殺し方がある/いくつもの死に方がある」と歌っていても、常に中心的で活き活きとしている。



「これは絶対に「Troubleパート2」なんかではないんだ。人は何でもカテゴリーの中に入れたがることが分かった。昨年2年に及ぶツアーの最後の方で、「疲れていないか?」という質問ばかりされた。大声を出してなければおかしいんじゃないかって感じだった。だけど声は楽器なんだ。どの曲も違う歌い方が求められるんだ。どの曲もクラシックソウルスタイルで歌っていたらこのアルバムは効率的でないと思う。僕はそれぞれの曲について行きたいんだ。」



曲のサイクルの構成をLaMontagneはこと細かく考慮した。美しく、時には痛ましいオーケストレーションで作られた。オープニングには集中力が残酷にも消えてしまうことを主張する「Be Here Now」だ。「僕達は気が散る人間だから、拘束されたまま人と関わり合うのは難しい。理解し合ってないのに拘束されていることは大きなチャレンジになってしまうんだ」と彼は説明する。



そしてサイクルはアメリカに神話がなくなっていることを非難するタイトルトラックで終わる。「僕達の文化はとても剥き出しになっていて、頼りにできるようなイベントがないような気がする。自分はよく何かに陥ったりするんだけど、そんな時は乗り越えさせてくれるような人やストーリーがあったらどんなにいいだろうかと思うんだ。この先僕達は何を残して行くだろうか。瞬きをしたらもう消えているだろうか。人は何を掘り起こすだろうか?美術作品?それとも発泡シチロールのコップ?



この両極端の間には個人的な状況の中で関わり合う人達を取り上げる。時にはうまく行き、時にはお互いを傷つける。彼の率直で屈しない表現力にははっと息を飲んでしまうが、こうした曲の中にも優しさがを感じるファーストシングル、「Can I Stay」や男は常に疎遠になっていると悩む「Empty」。そしてルー・リードを思い起こすようなバックグラウンドベース曲の「Barfly」。ビンテージソウルを思い出させる「Three More Days」や「You Can Bring Me Flowers」。「Gone Away From Me」や「Lesson Learned」ではアメリカンフォークミュージックやスティーヴン・フォスターを反響させている。それまでの音楽性と感情をまとめているのがこのアルバムのラストソング「Within You」。LaMontagneはこの曲について、「答えは自分の中にある」と答える。



「人はいつも自分の経験に捕らわれてしまいがちだが、とても重要なことは進行形でいろんな経験をしているってことなんだ。このアルバムは自分を越えて、生きることやそれについて考えようとしているんだと思う。僕は自分が経験したことに入り込むからそんな時は目隠しをして、自分の人生のイベントを見つめている。でも最後には目隠しをまた外すんだ。」と彼は言う。



一般ブルーカラー男からスタジオやステージの上で心を剥き出しにした微妙なニュアンスを持つミュージシャンへの一つの旅を伝えている『’Till The Sun Turns Black』。Ray LaMontagneには進む道はそれしかない。「自分を表現するために僕達はここにいるんだ」と彼は言う。