ポーター・ロビンソン&マデオン“シェルター・ライヴ・ツアー”
2016年12月10日 米シアトル/Wa Mu Theater 北米ツアー最終公演 ライヴレポート
ポーター・ロビンソンとマデオンが初めて共作した「シェルター」のリリースに伴い実現した「シェルター・ライヴ」ツアー。北米の20都市を回った同ツアーはソールドアウトが続出し、チケットの売り上げ枚数は、計105000枚を超えた。その最終公演地、ワシントン州シアトル。完売になったWAMUシアターの場内は、まるでフェスのようなムードに包まれていた。オープニング・アクトがフロアを盛り上げている間、着ぐるみや派手な水着などのレイヴ・ファッションに身を包んで踊っている若者達が、あちこちにいる。
9時すぎ。ステージが青白くライトアップされ、「シェルター」のキーボード・サウンドが流れ始めた。次の瞬間、ステージ前方から花火が噴出し、ステージ中央にマデオンとポーターが並んで登場。彼らの間と両脇には24個のライトがついたスタンドがそびえ立ち、後方には巨大スクリーンがある。青と緑のライトが交錯する中で、一斉に踊り、飛び跳ねる観客。それからマデオンが「アイ・ノウ」と歌った後をついで、観客が「アイ・ノウ!」と叫ぶ。始まったばかりなのに、一体感がものすごい。
続いて、マデオンの「ペイ・ノー・マインド」へ。2人が手を高く掲げて左右に振ると、それに合わせて観客の手が大きな波のように動く。「シアトル! 最高にマジカルだよ! ありがとう」と、ポーターが叫んだ。2人が並んで盛り上げていることで、ステージから放たれるエネルギーが、ソロの時と比べて何倍にも強まっている気がする。2人の曲が交互に継ぎ目なくプレイされるのだが、どちらの曲に対しても反響の大きさは同じで、彼らが等しく愛されているのが伝わってくる。「僕が世界一好きな曲の一つ、マデオンの曲だよ」と、ポーターが「ビーイングズ」を歌う場面では、彼らの絆を特に強く感じた。
照明は曲毎に様変わりし、バックのスクリーンでは曲に合わせてリリックの文字が点滅しながら映し出されたり、「シェルター」のPVのアニメが断片的に映し出されたりする。パイロと花火も惜しみなく噴出され、高揚感のあるサウンドとビートがそれらの演出と相まって、非常にエキサイティングな空間が生まれていた。2時間半が瞬く間に過ぎ去り、大歓声に応えて始まったアンコールは、再び「シェルター」。2人にスポットライトだけをあてたステージ上で、ポーターがキーボードを弾き、マデオンが歌う。大合唱が巻き起こった後、大量の紙吹雪が観客に降り注ぎ、花火がそれに続いた。
最後にマデオンが、「今夜は「シェルター・ライヴ」北米ツアーの最終公演で、すごく特別だった。最高の観客だったよ、本当にありがとう」と感謝を伝え、ポーターが「10年位前、まだ僕達が子供の頃にインターネットの掲示板でマデオンと会って、それから僕達は音楽を作り始めた。長い時を経て、こうして一緒にステージに立って君達の前でショウをやれたことが、信じられないよ。どうもありがとう!」と言って、ショウを締めくくった。それから2人は固く抱擁をして、ステージを後にした。「シェルター」という楽曲で合わさった2人の世界観が現実の世界となって、何千人ものファンと共に祝われているという、かけがえのない特別なショウだった。そして、この幻想的な新世界の中に日本の文化が織り込まれていたことが、感動をより大きなものにしてくれていたと思う。
(文:鈴木美穂 photo by:Jasmine Safaeian )