オリー・マーズ、東京公演最速レポート!(2014年2/18(火)@赤坂ブリッツ)
サード・アルバム『ライト・プレイス・ライト・タイム』で昨年10月に本邦デビューを果たし、翌月プロモーションで初めて来日したオリー・マーズが、早くもジャパン・ツアーを敢行。東京と大阪での計2公演を見事売り切って急成長ぶりを見せつけたが、うち2月18日に赤坂ブリッツで開催された東京公演は、昨春英国とアイルランドで敢行したツアーとほぼ同じセットに、ちょっとしたサプライズをプラス。日本のファンのためだけに用意された、約90分のショウでもてなしてくれた。
ほぼ予定通りの19時過ぎ、バンド(ドラム~ギター~ベース~キーボードの4ピース)とふたりのバッキング・シンガーがひと足先にステージに姿を見せ、歓声を上げるオーディエンスをじらすように『Army of Two』のイントロを長めにプレイする中、オリーが駆け出てくる。白いTシャツ&黒いベスト&パンツ&帽子という定番スタイルで、第一声は「コンニチワ!」だ。ちなみにバンドの面々もシンガーたちも全身ブラックで、『ライト・プレイス~』のジャケットを模した背景共々、ヴィジュアルはシックに統一されている。
続いて、「僕と一緒に踊りたい子はいるかい?」と前置きして『Dance With Me Tonight』に突入。早速お得意のお尻を強調したダンスを交えて、エンターテイニング・マシーンと化したオリーは、途中、最新シングル『Hand on my Heart』でスローダウンしたほかはハイテンションに飛ばす。とにかく一瞬もじっとしていないし、あらゆるポーズや身振り手振りに愛嬌があって、惹きつけられ微笑まずにはいられない。マイク・スタンドを巧みに使ってのダンスは、時にかなりキワドかったりもするのだが、いやらしさが全然ないというのも、お茶目なキャラの持ち主ならでは!
かつ、どんなに歌って踊って息を切らしていてもマメにMCを挿むオリーは、上野動物園や猫カフェを訪れたことを報告し、曲間にオーディエンスが静まりかえると「みんな寝ちゃったの?」とか「帰っちゃったの?」と不安げに問いかけ、「ロンドンに行ったことはある?ロンドンより東京のほうがいいよね。あ、そんなことを言ったらまずいな、僕はロンドンに住んでいるのに。帰れなくなっちゃう。立ち入り禁止って言われて。あ、そうしたら東京に住めばいいんだ!そうなると日本語を勉強しないと。やっぱり言葉の壁は厳しいか……」と長々とモノローグを展開したり……。とことん気さくな語り口が、アーティストとファンの距離をどんどん縮める。
そして8曲目に待ち構えていたのが、今夜最大のハイライト。オリーによる『上を向いて歩こう』のカバーだ。ご存知坂本九が歌ったこの曲は、1963年に『SUKIYAKI』のタイトルで、日本語の曲としては史上初めて全米ビルボード・チャート1位を獲得した歴史的名曲だが、新たにオノ・ヨーコが英語の歌詞をつけたヴァージョン『Look At The Sky』を初めて歌うという栄誉に、オリーが浴したのである。しかも2月18日はオノ・ヨーコの誕生日でもあり、色んな意味でスペシャルなのだと説明するオリー。「もしかしたら何回かやり直さないとうまく歌えないかもしれない。日本人にとってどれだけ大切な曲か心得ているから、ちゃんと歌わなくちゃ。明日は今日よりいい日になると信じるために、力と勇気を与えてくれる曲なんだよね」と気合は満々だ。編成もスペシャルで、アコギと控えめなキーボードの音でシンプルにアレンジ。彼とバッキング・シンガーの歌声の美しいハーモニーを前面に押し出して、割れんばかりの拍手を浴びる。
その後自身の曲に戻ったオリーは、セカンド『In Case You Didn’t Know』のお気に入り曲だという『Oh My Goodness』や『Loud & Clear』で再びテンションを上げてゆく。全くブレない満点のヴォーカルは終始ソウルフルな力強さをキープするが、そんな中でも独身の女の子たちに捧げた『One of These Days』は、ミッドテンポのドラマティックなサウンドも相俟って、歌い手としての彼の魅力が最もリアルに感じられる瞬間だったんじゃないだろうか。
ここでふたつ目のサプライズ。4年前の『Xファクター』の予選を振り返るオリーは、「こうやってツアーで世界を旅するようになった今、全ての出発点をみんなに見てもらうのもいいんじゃないかと思った」と、まさに2009年の第1次予選で勝負をかけた、スティーヴィー・ワンダーの『迷信(Superstition)』をパーフェクトに歌い、さらにデビュー・シングル『Please Don’t Let Me Go』でも出発点を再確認。そして、これまでに自分が書いた中で一番気に入っているという『Dear Darlin’』と、2曲目のUKナンバーワン・ヒットだった『Heart Skips a Beat』、これまた思い入れの深いふたつの曲で本編のラストを飾る。後者では、オリーの「ジャンプ!」の声に合わせて跳ねる満場のオーディエンスが、会場全体を揺らしたものだ。
続くアンコールの冒頭、歌を披露したのはオリーではなくて、オーディエンスだった。『上を向いて歩こう/Look At The Sky』がよほど気に入ったのか、オーディエンスにリクエストして歌わせて、自分はビート・ボクシングで伴奏。「ソー・ビューティフル!」と称賛を浴びせた彼は、「日本に戻ってくるのが待ちきれない!」と別れの挨拶をすると、お待ちかねの『Troublemaker』でフィニッシュ。あの大合唱から察するに、現在制作中の4枚目のアルバムを携えて次に日本に来る時には、さらに大勢のファンが彼を出迎えることになるに違いない。
(text by 新谷洋子)
OLLY MURS Japan tour 2014
@Akasaka Blitz (2/18, 2014)
1. Amy Of Two
2. Dance With Me Tonight
3. Personal
4. I've Tried Everything
5. Hand On My Heart
6. Hey You Beautiful
7. I'm OK
8. Look At The Sky (オノ・ヨーコ英語詞による「上を向いて歩こう」新スタンダード・ナンバー/世界初披露)
9. Oh My Goodness
10. Loud & Clear
11. One Of These Days
12. Superstition (スティーヴィー・ワンダーのカヴァー)
13. Please Don't Let Me Go
14. Dear Darlin'
15. Heart Skips A Beat
-encore-
16. Troublemaker
photo by Yoshika Horita