クリスチャンのチャイコフスキー・プロジェクト、始動!第1回発売は劇付随音楽「雪娘」と「白鳥の湖」組曲の2タイトルを4月27日に国内盤同時発売。
クリスチャンのチャイコフスキー・プロジェクト、始動!
MDRライプツィヒ放送響、NYベースのアブソリュート・アンサンブル、そしてバルト海フィルおよびグシュタード音楽祭管などと多彩な活動を展開しているクリスチャン・ヤルヴィがソニー・クラシカルで始動させる新たなレコーディング・シリーズ「チャイコフスキー・プロジェクト」。第1回発売として 第1弾の劇付随音楽「雪娘」、第2弾の「白鳥の湖」組曲が同時に登場します。
◎ライプツィヒでの破天荒なプログラミング
クリスチャンは2012/2013年シーズンにMDRライプツィヒ放送交響楽団の首席指揮者に着任して以来、毎シーズンその独自のプログラミングで数多くの聴衆を魅了してきました。ライプツィヒ着任3年目の2014/2015年シーズンは「GO NORTH」と題され、クリスチャンの出自であるエストニアも含む、ノルディック(北欧)の作曲家が幅広く取り上げられました。2015年はシベリウス、ニールセン、そしてアルヴォ・ペルトのアニヴァーサリーであり、特にヤルヴィ家とは親しいペルトは「FEATURED COMPOSER(特集作曲家)」として、シーズンを通じて多くの作品が取り上げられています。そしてこの3人にとどまらず、「ノルディック」をキーワードとする数多くの作曲家がクリスチャンらしい大胆かつ独自のセンスで組み合わされて聴衆に提供されました。古典とされる作品と現代曲(必ずしも人口に膾炙したビッグネームばかりではない)を大胆に一晩のプログラムに配置するクリスチャンの手法は、一言では要約しきれないほどの多様性(あるいは雑食嗜好性、というべきかもしれない)が内包されており、保守本流の伝統的プログラムを高水準で取り上げている同じ町のゲヴァントハウス管弦楽団の方向性とははっきりとした対照をなし、定期会員の数も大きく伸びているといわれています。さらにクリスチャンの言うこの「ノルディック・シーズン」は、シーズン中にライプツィヒおよび近郊で開催される4つのミニ・フェスティヴァル(これらもクリスチャンによるプロデュース)と関連付けられ、そこではさらに多様な、ジャンルを超えた音楽やアーティストが取り上げられることで、クラシック音楽の枠にとどまらない拡がりを示すことになりました。
◎「ノルディック・シーズン」の劈頭を飾った大作「雪娘」
クリスチャン・ヤルヴィが、その大胆かつ多様極まりない「ノルディック・シーズン」の開幕を託した作品が、チャイコフスキーの劇付随音楽「雪娘」です。ロシア人ならば誰でも知っている雪娘の伝承を、これまた当時の人気劇作家オストロフスキーと新進作曲家チャイコフスキーがタッグを組んで作りだしたこの作品は、劇というよりもむしろミニ・オペラとも言えるほど音楽部分の充実が図られています。ロシア民謡から換骨奪胎された美しく記憶に残る旋律、繰り返しによる親しみやすい有節歌曲を思わせる歌や合唱、起伏に富んだ雪娘の悲恋物語、最後の太陽への熱狂的な賛美など、若きチャイコフスキーが作曲家としての能力を全て注ぎこんだ大作であり、クリスチャンが重要性を置いたのも頷けます。この作品の全曲録音はそれほど多くはなく、LP時代には1950年代のガウク指揮のモノラル盤、1970年代のプロヴァトフ指揮のステレオ盤などがありましたが、クリスチャンの父ネーメが、CD時代になってからの1994年にデトロイト交響楽団と録音したシャンドス盤が本格的な代表盤となりました。今回のクリスチャンによる新録音は、この「雪娘」の魅力をクリスチャンらしいパワフルで直截な演奏によって伝えてくれます。
◎グシュタード音楽祭管弦楽団との「白鳥の湖」
クリスチャンの多彩な活動チャンネルの一つに、若手の音楽家の指導があげられるでしょう。父ネーメ・兄パーヴォと毎夏関わっている故国エストニアのペルヌにおける「ヤルヴィ・アカデミー」、バルト海周辺の国々のオーケストラ・メンバーを核に若手の奏者とともに組織されるバルト海フィルハーモニックおよびバルト海ユース・フィルハーモニック、そしてスイスのグシュタード・メニューイン音楽祭におけるグシュタード音楽祭管弦楽団という3つのプロジェクトを推進させています。そのグシュタード音楽祭管の2015年のテーマとして、クリスチャンは、「雪娘」のテーマである「復活と再生」という文脈に沿いながら、北欧諸国の理想主義と純粋さのシンボルとしての「白鳥」をテーマにして、「白鳥の湖」を取り上げました。しかもクリスチャン自身が編曲を担い、バレエ全曲版から独自の選曲で構成され、振り付け抜きのドラマティックかつシンフォニックな文脈の中で、オリジナルのストーリーのエッセンスを追うことができます。
◎続編も予定
クリスチャンは、チャイコフスキーの劇場作品に基づいた演奏会用組曲を編む予定で、まずは《眠りの森の美女》と《くるみ割り人形》のレコーディングが続くことになっています。