イル・ディーヴォ 最新作「アモール&パシオン」大いに語る!
2015年10月下旬、プロモーション来日した際に実施した、イル・ディーヴォ・オフィシャル・ インタビューを公開します。最新作「アモール&パシオン」についてメンバーが大いに語りました。是非ご覧ください.。
イル・ディーヴォ オフィシャル・インタビュー
(interview & text: 服部のり子)
前作『ミュージカル・アフェア』で、イル・ディーヴォは、全編で“ミュージカル・ナンバーを歌う”という初めてのコンセプト・アルバムに取り組んだ。それは、2004年にデビューした彼らが20周年に向けて、次なる10年のチャレンジとして掲げたテーマでもあった。2013年のインタビューでも「イル・ディーヴォが10年続いたことに多くの人が驚いている。僕らは、さらにイル・ディーヴォを進化させたいと思っているが、そのためにはチャレンジを恐れてはいけない。コンセプト・アルバムは、今後も作り続けたい」と語っていたが、その言葉どおりに新作『アモール&パシオン』は、初めてラテン音楽に挑んだアルバムで、全編スペイン語で歌っている。これまで多彩な言語で歌うことをグループの特徴にしてきただけに、大きなチャレンジになっている。それらについて、メンバーに大いに語ってもらった。
●新作『アモール&パシオン』ではラテン音楽を取り上げている。このコンセプトはどのように生まれたものか。
カルロス・マリン「スペインのTV番組に出演した際に、ソニー・スペインの社長からラテン音楽のアルバムを歌ってはどうか、という提案があった。当初は雑談程度だったが、そのアイディアが僕達のマネージメントやラテン諸国のソニー・ミュージックに伝わり、ぜひ実現させようと、僕らの元に次々に音源が送られてきたところから具体的に話が進展していったんだ」
ウルス・プーラー「だから、結果として全編スペイン語で歌っているけれど、あくまでも一番美しいラテンの曲を歌うことがアルバムのコンセプト。もし、ブラジルの歌が選ばれていたら、それはポルトガル語で歌っていたと思う」
●12曲収録されていますが、候補曲のデモ音源は、どれくらいの数が集まったのですか。
ウルス「100曲~150曲はあったと思うよ。リスニング・セッションを何回も行い、そこから候補曲を絞っていった。今回は、初期段階からミーティングに積極的に参加して、選曲に深く関わり、これまでになく僕らの意思が反映された作品になっている」
セバスチャン・イザンバール「実は、『ベサメ・ムーチョ』はフランスでも有名だけれど、それ以外は、初めて聴く曲ばかりだった。でも、リスニング・セッションで聴き始めると、どの曲もメロディは豊かで、歌詞の意味は深く、表現が美しい。聴いていると、すごくイメージが膨らみ、まるで南米を旅しているような気分になったんだよね」
カルロス「多くの候補曲の中からベスト・ソングを12曲選ぼうということになり、まず11曲が決まったんだけれど、これまで僕らが得意としてきたスケール感のある曲が足りないかなと思い、最後にベートーヴェン作曲の『喜びのシンフォニー』が加わった。『誰も寝てはならぬ』のような力強さがある曲なので、最後に加えて本当に良かったと思う」
●では、各収録曲についてご紹介いただけますか。
①『首の差で(ポル・ウナ・カベーサ)』
ウルス「集められたデモ音源の中で最初に聴いたのが『首の差で』だった。聴いた瞬間に僕は、夢中になり、その場で3回続けて繰り返し聴いた。興奮で心が高揚する一方で、どこか安らぐ感覚があって、それが喜びに変わるような曲なので、一度聴いたら忘れられない。タンゴの燃えたぎるようなエモーションもいいし、アルバムの方向性を示してくれた曲でもあった」
②『抱きしめて(アブラサメ)』
カルロス「この曲を選べたことは、僕の喜びだった。というのは、子供の頃からフリオ・イグレシアスのファンだったので、フリオが共作したこの曲が好きだったし、16歳頃からは自分でもよく歌っていたから。そんな想い出深い曲なので、今回レコーディング出来て本当にうれしかった」
③『ドント・ウォナ・ルーズ・ユー(シ・ボイ・ア・ペルデールテ)』
デイヴィッド・ミラー「僕もあまりラテン音楽のことを知らなかったけれど、この曲は、ラテン・ナンバーと言っても、グロリア・エステファンの全米NO.1ヒット曲なので、僕が育ったアメリカのポップ・ソングと大きく変わることなく、エキゾチックすぎず、セクシーすぎず、ミステリアスすぎることもないので、最初から全く違和感がなかった。『アンブレイク・マイ・ハート』とか、『ウィズ・アウト・ユー』とか、イル・ディーヴォと合体してうまくいく要素を多分に含む曲だと思うので、出会うべくして出会った曲だと思う」
④『キサス・キサス・キサス』
カルロス「この曲を歌うのは、驚きであり、ひとつの賭けでもあった。というのは世界の多くの人は、『キサス・キサス・キサス』というタイトルよりは、ドリス・デイが英語詞で歌った『パハップス・パハップス・パハップス』の方が馴染み深いと思うから、僕らがこの曲をやるの?というのが第一印象だった。それが007風のカッコいいアレンジになったので、これならば、と自信を持って歌うことができた。また、社交ダンスをやっている方に踊っていただけるような曲にもなっていると思う」
⑤『ベサメ・ムーチョ』
デイヴィッド「セバスチャン同様に、他の曲は聴いたことがある、という程度で、馴染み深い曲は、この『ベサメ・ムーチョ』くらいしかなかったので、やはり一番歌いやすかった。そんな有名な曲をプロデューサーのフリオ・レジェス・コペロが他にはない、壮大なオーケストラのアレンジで、シネマティックに仕上げてくれたのがすごく良かった。僕の一番お気に入りでもあるんだ」
⑥『誰だろう(キエン・セラ)』
セバスチャン「“コールドプレイ+イル・ディーヴォ+ラテン”といった感じの曲だよね。そのなかで個人的にはリズムがモダンで、オリジナルは、1950年代に作られているけれど、ラテン音楽の過去と現在を結びつけるような存在の曲になっている。コールドプレイ風のメロディックなピアノがすごく気に入っている。ライヴでは女性のみなさんにこの曲で踊っていただこうと思っている」
⑦『帰郷(ボルベール)』
セバスチャン「カルロス・ガルデルによるタンゴの名曲は、アコーディオンなどがゆったりとメロディを奏でるところから始まって、そこからタンゴに転じていく。その展開がドラマティックで、すごく気に入っている」
⑧『愛の遍歴(イストリア・デ・ウ・ナモール)』
デイヴォッド「心からいい曲だと思うし、歌えたことに誇りを持っているけれど、その一方で、まだ十分に理解しているとは言い難い曲でもあるんだ」
カルロス「いろいろな逸話がある曲だけれど、スペインよりも南米でよく知られている。失敗を含めた愛の物語を綴っていて、メキシコ出身の人気シンガー、ルイス・ミゲルがカヴァーして有名になった」
⑨『あなたなしでは(エレス・トゥー)』
カルロス「スペイン人にとって自慢の1曲。1973年にスペインのバンドがユーロヴィジョン・コンテストに出演して、この曲で準優勝を果たし、アメリカや南米でも爆発ヒットしたという歴史がある。僕も小さい頃から知っている。この曲を書いたシンガー・ソングライターのファン・カルロス・カルデロンは、素晴らしいハーモニーを生み出す名人でもあり、イル・ディーヴォならではのカヴァーになっているけれど、いくつか彼のハーモニーも採用して歌に組み入れている」
⑩『遠く離れていても(コンティーゴ・エン・ラ・ディスタンシア)』
セバスチャン「キューバ風アレンジもそうだけれど、何よりも歌詞が気に入っている。今こうやって、みんながそれぞれ曲を紹介するなかで、思い出したことがある。6年前にベネズエラのカラカスで、スペイン語アルバムをやってもいいよね、って話したことがあり、その時にこの曲が話題になった。当時すでにルイス・ミゲルがこの曲を歌っていて、彼のあの素晴らしい歌声を超えることは絶対に出来ないよ、って思ったことが蘇ってきた。あれから6年が経ち、イル・ディーヴォならではの歌が出来たと、誇りに思える」
⑪『かつて愛した人へ』
ウルス「個人的にすごい想い出がある曲なんだ。11年前に初めてNYを訪れた時に、現地にいる友人と開いた食事会で、彫刻家で資産家の男性が上機嫌で、酔いに任せてこの曲を何度も歌っていた。デモ音源を聴いた時にそれを想い出すと同時に、初めて歌詞を理解し、曲の全貌を知った(笑)。なぜか奇妙だったあの晩のことがずっと記憶にあるなかで、11年後にイル・ディーヴォとして歌うことになった。そのことに不思議な運命のようなものを感じている」
⑫『喜びのシンフォニー(イムノ・デ・ラ・アレグリア)』
ウルス「母国スイスで音楽を学んでいた学生時代に当然何度も歌っている。でも、当時はドイツ語で歌っていたので、それをスペイン語に替えて歌うのはちょっと不思議な感覚があった。さらに他の曲とも違うので、最初はアルバムに入れるべきかどうか、正直迷った。それが聴いた方からの評判が良かったのと、僕らにはこういった壮大なスケールの曲は欠かせないだろう、との判断から収録したのだけれど、結果良かったと思っている」
●デイヴィッドからプロデューサーの話が出来ましたが、彼は今回どのような点で手腕を発揮してくれたのでしょうか。
セバスチャン「プロデューサーのフリオは、コロムビア出身なので、ラテン音楽を皮膚感覚で理解している。その彼が手腕を大いに発揮してくれたことで、クオリティが高く、色彩豊かなアルバムになった。カルロス以外の、ラテン音楽に馴染みがなかった3人を、正しい方向へ導き、ラテン音楽の旅へ送り出してくれた。柔軟性もある人なので、さまざまなアレンジを試みて、全ての曲に豊かな個性をもたらしてくれた。一緒に仕事をして、なぜ彼がラテン系の人気シンガーから引っ張りダコで、グラミー賞を何度も受賞することになったのかを理解できた。加えて、前作をプロデュースしてくれたアルベルト・キンテーロが今回ミックスダウンを担当してくれたんだけれど、僕らの声をよく理解してくれているので、このような複雑な構成の作品でその手腕を大いに発揮してくれた。その点もすごく感謝しているよ」
●最後にアルバムを通して伝えたいことなどをお願いします。
ウルス「僕らがこのアルバムで伝えたいのはタイトルにもあるように“愛と情熱”。プロデューサーのフリオと電話で話した時に「収録曲の全てに情熱が溢れているよね」と言ったのを聞いて、情熱のアルバムにしようと心を決めた。全員が全力投球で、1曲1曲に情熱と愛と心を込めて歌った。美しくて、エキサイティングで、高揚感溢れるエモーショナルな素晴らしき作品になったので、必ずみなさんに僕らの愛と情熱が伝わると自負している」
セバスチャン「『遠くにいても』を日本のファンのことをいつも心にとめている、忘れていないよという思いを込めて歌ったとまず伝えたい。また、音楽の旅であり、人生の旅をこのアルバムに込めているわけだけれど、旅にはいい日があれば、悪い日もある。もし、気持ちがふさぐことがあったら、このアルバムを聴いて、ぜひ明るい日にしてもらいたいと思う」
デイヴィッド「素敵なリズムがいっぱい詰まっている作品なので、心も魂も体も、ぜひこのアルバムに合わせて踊っていただきたい。そして、来年のコンサートで会いましょう。今アイディアを練っている最中なので、楽しみにしていただきたいです」
(2015年10月27日 ソニー・ミュージック乃木坂オフィスにて)