yukihiro(L’Arc-en-Ciel / ACID ANDROID)が語るGRASS VALLEYとの出会いとその魅力
アルバム6作品をデジタルリマスターして収録したBOXセット『Original Album Remastered Edition Box』。
そしてタイトで緻密なドラミングに影響を与えた上領亘のプレイはその目に耳にどう映っていたのか?
自身の現在を語る上で切っても切り離せないバンドへのリスペクトをyukihiroが語る。
——まずyukihiroさんとGRASS VALLEYの出会いの衝撃について教えてください。何才ぐらいのときにどんなシチュエーションで聴いたのでしょうか?
yukihiro:19歳くらいの時にTVの音楽番組でライヴ映像かMVを見たのが最初です。1st EP「FREEZIN'」や2nd EP「MOON VOICE」がリリースされた頃(両作とも1987年)だと思います。その時は衝撃すぎて、見なかったことにしようと思ったくらいです。その頃僕はまだZI:KILL加入前で、ドラマーとしてプロミュージシャンになりたいと思っていました。でもGRASS VALLEYがやっていることを見たときに「こんなすごいことまで出来ないとダメなの?じゃあプロになれない・・・」とショックを受けました。だからGRASS VALLEYを知らないことにしようと決めたんです(笑)。
——yukihiroさんは特にドラムの上領亘さんのプレイスタイルに強く影響を受けたと思いますが、どういうところが秀でていると感じましたか? ほかのドラマーとの相違点についても教えてください。
yukihiro:初めてGRASS VALLEYの映像を見た時、僕はもうドラムをやっていたので、上領さんに目を奪われました。最初は何をやっているか訳がわからなかったです。まずドラムセットが普通じゃない(笑)。タムがなくて、バスドラとエレドラのパットが並んでいて。叩き方もドラムを叩いてるように見えなかったんですよね。踊っているように叩いているというか、自分が今まで見てきたドラマーとは全く違って「こんな風にドラムを叩く人がいるの?」と衝撃を受けました。そしてまずは見ないふりをしたんです(笑)。でもすぐに思い直し、頑張ってコピーしようとしたんですが・・・、無理でした。あの頃はYouTubeなどもちろんなかったので、TVの音楽番組をVHSに録画して、何度も繰り返し見ては一時停止して、セッティングがどうなっているか調べて真似したりしていました。
——GRASS VALLEYはテクノ、ニューウェーブ、UKロックの影響を受けたクールな温度感を持ち合わせているバンドだと感じています。yukihiroさんの視点から見た彼らの魅力とは?
yukihiro:まずはルックスです。出口さんには音楽性も含めてJAPAN※のデヴィッド・シルヴィアンを感じました。その頃デヴィッド・シルヴィアン風のヴォーカリストは多くいましたが、デヴィッド・シルヴィアンファンも「出口さんは認める」というような雰囲気がありましたね。GRASS VALLEY の音楽性からもJAPANを連想する人は多かったと思います。僕も大好きなJAPANをGRASS VALLEYから感じました。でも、当時の海外のニューウェーブ、UKロックのバンドって演奏はイマイチみたいなところがあったじゃないですか(笑)。GRASS VALLEYはその頃の洋楽に通じる雰囲気を持っていて、且つ演奏がみんなうまい。演奏力もあって、この音楽性というのが本当に説得力がありましたね。出している音とルックス、全て完璧で、そういうシーンにいた他の日本のバンドと比べても頭一つどころじゃなく、飛び抜けた存在でした。
——GRASS VALLEYのライヴ(映像でも)に触れたときに感じたこと、思い出があれば教えていただけますか?
yukihiro:生では観たことがないんです。ライヴを観られなかったのは本当に残念です。TVで放送されたライヴ映像を知り合いが1本のVHSにまとめてくれたので何度も繰り返し見ていました。
——それほど大きな存在であるGRASS VALLEYの思い出深い楽曲ベスト3を、曲にまつわるエピソードとともに教えていただけますか?
yukihiro:好きな曲がありすぎてベスト3は無理ですね・・・。5曲あげると
「FREEZIN'」(1st EP表題曲)、「MOON VOICE」(2nd EP表題曲)「STYLE」(3rd EP表題曲)
「MY LOVER」(4thシングル表題曲)、「灰色のオリオン」(9thシングル表題曲)です。「灰色のオリオン」は上領さんの作曲。僕は上領さんに初めてお会いした時に「ドラマーでも曲を書いた方がいい」と言われて、曲を書くようになったんです。
——今回の再発企画はyukihiroさんのリクエストで実現、GRASS VALLEYのオリジナルアルバムにデジタルリマスタリングが施されるのは初となります。熱望していたファン、まだGRASS VALLEYに触れたことがない世代に向けてメッセージをお願いします。
yukihiro:メッセージはないです(笑)。僕が欲しかったから企画を持ち込みました。「なんで廃盤なの?」とずーっと思っていましたし。欲しい人はたくさんいるに決まっていると思っていましたが、商品化されて嬉しいです。
インタビュー・文 / 山本弘子
※JAPAN
1974年に結成されたイギリスのバンド。メンバーはデヴィッド・シルヴィアン(Vo)、スティーヴ・ジャンセン(Dr )、ミック・カーン(B)、リチャード・バルビエリ(Key)、ロブ・ディーン(G)。麗しいルックスもあいまって本国より先に日本で人気に火がついたバンドとしても知られる。デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージックなどのグラムロックの影響とテクノ、ニューウェーブの要素を合わせ持つ。1980年に発売された4枚目のオリジナルアルバム『孤独な影』には同じ1978年にYMOでデビューした坂本龍一が参加。
GRASS VALLEY
Original Album Remastered Edition Box
品番:DQCL-743~748 Blu-spec CD2 6枚組
価格:12,500円+税
DISC 1:1st Album 「GRASS VALLEY」
DISC 2:2nd Album 「MOON VOICE」
DISC 3:3rd Album 「STYLE」
DISC 4:4th Album 「LOGOS~行~」
DISC 5:5th Album 「瓦礫の街~SEEK FOR LOVE」
DISC 6:6th Album 「at GRASS VALLEY」
Sony Music Shopにて予約受付中