コンチータ

トム・ノイヴィルトとコンチータ・ヴルスト。息の合ったチームの 2 人は、デュオとしてのみ機能する。彼らは決して目を合わせることがないが、鏡の中では一瞬たりともお互いを見逃すことがない。

私人とフィクション上のキャラクターは、互いの存在を尊重し理解し合っている。ふたりはふたつの独立した人格であり、それぞれが個別のライフ・ストーリーを持ち、ひとつになると、寛容と反差別に対抗する力強い一例となる。

コンチータの存在は、トムが生まれてこの方ずっと差別に対処してきた事実に帰する。結果として彼はあごひげを生やした女性という人目を惹く意思表示を作り上げたのだ。彼女は“人と違う”や“普通”といった概念について語り合うための起爆剤となると同時に、彼のメッセージを明瞭で間違いのない形で世界中に届けるための手段となった。

外見、性別、民族は、個人の尊厳や自由においては何の関係もない(オーストリア人ならば、「それらはヴルストだ」と言うだろう)。トムとコンチータはこう口を揃える。「大切なのはその人個人。誰のことも傷つけない限り、誰もが自分に合っていると感じる人生を自由に生きるべき」。

コンチータのあごひげは、従来の女装との違いを明確にしている。このフィクション上のキャラクターにおいては性別が混合され、性差がぼやけ始める。そしてアーティスト、トム・ノイヴィルトは遅くとも楽屋に入るまでにはその衣装を脱ぎ落とす。

トムは 1988 年 11 月 6 日、オーストリアはグムンデン生まれ。シュタイアーマルク州のバート・ミッテルンドルフという小さな村で育った。2007 年に ORF(オーストリア放送協会)のタレント・オーディション番組『スターマニア』に参加し 2 位を獲得。2011 年にオーストリア・グラーツの服飾学校を卒業してからはウィーン在住である。

コンチータが初めて公の場に登場したのは 2011 年、ORF のタレント・オーディション番組『ディア・グロッセ・チャンス』(『大きなチャンス』)だった。2012 年にはユーロヴィジョン・コンテストのオーストリア予選に出場し、またもや 2 位を獲得。彼女にとって現時点で最も大きな成功を収めたのが 2014 年だった。コンチータはコペンハーゲンで行われたユーロヴィジョン・ソング・コンテスト(本大会)に優勝し、ヨーロッパや世界中の視聴者を魅了したのだ。彼女はついに頂点に立ったのだ。それもヨーロッパ全土の!

リスペクトと愛へのこだわりが常に輝きを放つ彼女のステージ上の存在感は、シンガーとしても、国際的なファッション・シーンのスターとしても、また政治的な舞台においても、クラシックで洗練されたエンタテインメントを約束してくれる。彼女はカール・ラガーフェルドやジャン・ポール・ゴルチエといったデザイナーたちにインスピレーションを与え、パリのクレイジー・ホースで行われた自身のショウではオーディエンスを魅了し、イギリスの人気テレビ・パーソナリティのグレアム・ノートンやゲストたちには「あなたは私たちの質問の多くに対する答えだ」と絶賛されるのだ。その後間もなく、彼女は「ゴールデン・グローブ賞」でハリウッドを魅了した。

彼女は 2014 年 10 月には欧州議会を訪れ、国連事務総長の潘基文氏とも面会した。潘氏は彼女の不寛容や差別との戦いへの献身を特に高く評価し、彼女のイメージの打ち出し方が「人権教育の瞬間」であるという。


『ビーイング・コンチータ』(コンチータであること)
彼女の胸で動いている 2 つの心臓への関心は高い。コンチータが人生について語るには十分な理由である。若くして波乱万丈の人生を彼女が打ち明けるのが、著書『ビーイング・コンチータ』である。ドイツ語版は3月に出版され、英語、フランス語、イタリア語、ポルトガル語の翻訳版が 5~6 月に続く。その他の言語への翻訳も現在準備中。


『コンチータ』
コンチータ・ヴルストが最大の情熱をかけるのはいつでも音楽。彼女のシングル「ヒーローズ」は 2014年 11月にリリースされ、そのわずか数ヶ月後には「ユー・アー・アンストッパブル」が続いた。待望のスタジオ・アルバムをリリースもしないうちに、コンチータはアマデウス・オーストリア音楽賞の「最優秀女性アーティスト」、「ソング・オブ・ジ・イヤー」(「ライズ・ライク・ア・フェニックス」)、「ビデオ・オブ・ジ・イヤー」(「ヒーローズ」)3 部門にノミネートされ、それらすべてを受賞している。
彼女のデビュー・アルバム『コンチータ』は 2015 年 5 月中旬にリリースされる。パワー・バラードからダンス・フロアを賑わせる曲まで、スウィングからポップスまで、2014 年度ユーロヴィジョン・コンテスト優勝者がその技量を余すところなく魅せつける、シンプルに『コンチータ』とタイトルを付けられたデビュー・アルバム。ヒット曲「ライズ・ライク・ア・フェニックス」、「ヒーローズ」、「ユー・アー・アンストッパブル」以外にも珠玉の名曲は多い。「カラーズ・オブ・ユア・ラヴ」や「ファイアーストーム」のドライヴ感溢れるビート、オリエンタルな影響のみられる「アウト・オブ・ボディ・エクスペリエンス」、「ホウェア・ハヴ・オール・ザ・グッド・メン・ゴーン」のスウィングするブラス・セクションもあれば、壮大なバラード好きが楽しめる「ピュア」のような曲もある。
自らの人生のヒーローとなり、自らの意思で、差別や暴力を伴わず、たゆまぬ愛とリスペクトを携え、留まることを知らないコンチータ。
彼女はアーティストとして、ファッションの世界において、そして全人類の尊厳の提唱者として、この大いに人間らしいメッセージに忠実であり続ける。


愛。リスペクト。コンチータ。