アミーチ・フォーエヴァー
ジェフ・シューエル
ニュージーランドで生まれ育ったヴォーカルの達人、ジェフこそが最初にアミーチ・フォーエヴァーの種を捲いた人物だ。18歳の頃までボーイ・ソプラノとして学校の聖歌隊で歌っていたシューエルは、公認会計士になるべく勉学に励んでいたのだが、休日に、子供の頃のヒーローであったエルヴィス・プレスリーの故郷を訪れたことで、突然人生の転機を迎えることとなる。歌手を目指すことになった彼は、ボストン音楽院で学んだ後、ロンドンへと向かう。そこで彼は、音楽家、会計士という二つの眼識を生かして、エンターテインメント会社を設立した。

シューエルは、まずソロとしてのキャリアをスタート。ロイヤル・アルバート・ホールへの出演を果たし、また、2002年コモンウェルス競技大会では故郷ニュージーランドの国歌を歌っている。シューエルとそのパートナー、シモーヌ・ランハムが、伝統的なオペラの技法とポップ・ミュージックの親しみ易さを兼ね備えたグループの結成に思いを巡らせるようになったのは、数えきれないほどの出会いを重ねてきたからだ。中でも、クラシック・アーティストのクロスオーヴァーな成功に幾度も手を貸してきたナディア・ライビンとの出会いは特に重要なものであった。


ジョー・アップルビー
イングランドはブラックプール出身。このどこまでも舞い上がるソプラノ・ヴォイスの持ち主は、子供の頃よりダンスの授業には目もくれず歌のレッスンに打ち込んでおり、ついには英国王立北音楽院でオペラを学ぶまでに至る。あの高名なドイリー・カート・オペラ・カンパニーより奨学金を得た彼女は、ロンドンのロイヤル・フェスティヴァル・ホールやロイヤル・アルバート・ホールでパフォーマンスを行なうまでになり、『コシ・ファン・トゥッテ』のデスピーナや『皇帝ティートの慈悲』のセルヴィリアをはじめ、あらゆるオペラの主要な役柄を片っ端から演じていった。そして、カール・ローザ・オペラやグラインドボーン・フェスティヴァル・オペラに出演していた頃、彼女はジェフ・シューエルと共に歌う機会を得る。そして、ヴォーカル・アンサンブルのアイディアが閃くのだ。そしてその直後、この2人に才能溢れる2人の若いシンガーがさらに加わることとなる。
デヴィット・ハビン
イングランドのボーンマウス近郊生まれ。歌い始めたのは、地元のロックンロール・バンドでのこと。次第にオペラに興味を持つようになった彼は、ロンドンのマウントビュー演劇学校で歌と演技の勉強を始める。すぐさま彼は、ウエストエンドのミュージカルに抜擢され、『レ・ミゼラブル』のマリウスや『ウエスト・サイド・ストーリー』のトニーといった主役を演じるようになる。その後、さらにオペラの修練を重ねるため英国王立北音楽院に進んだ彼は、引き続き全英の様々なオペラ・カンパニーの公演で『椿姫』のアルフレード、『こうもり』のアルフレート、『蝶々夫人』のピンカートン、『ドン・パスクワーレ』のエルネストなど、お馴染みの役どころを次々と務めている。

彼が初めてジョー・アップルビーと出会ったのは、誉れ高いグラインドボーン・フェスティヴァル・オペラ・カンパニーの一員として活躍していた頃のこと。彼はますます発展していくバンド結成のアイディアに心底惚れ込んだのだった。


ニック・ギャレット
ロンドン生まれのギャレットは、トリニティ音楽大学で声楽、作曲、ピアノ、指揮を学び、音楽的素養を身に付けると、ウォルフソン・ファンデーションより声楽での奨学金を勝ち取っている。そして、世界的に知られるヴォーカル・アンサンブル“ザ・スウィングル・シンガーズ”の一員として活躍した後、ギャレットが次に向かったのは世界の一流オペラ・ハウスであった。ロイヤル・オペラ・ハウス、イングリッシュ・オペラ・ハウス、スコティッシュ・オペラ・ハウス、パリ国立歌劇場などで30以上の主役を務めた彼は、その豊かなバス・バリトンを聴衆にアピールする。彼は、アミーチ・フォーエヴァーの作品でも、コンポーザーとして、そして才能溢れるミュージシャンとして、作曲、アレンジなどで貢献している。グループがラインナップを拡張するにあたって、彼が選ばれたのも当然の事だった。
ツァケーン・ヴァレンタイン
アミーチ・フォーエヴァーという驚くべき才能の集合体は、祖国の伝統的で豊潤なアカペラ合唱で経験を積んだ、南アフリカ、ヨハネスブルグ生まれのソプラノ歌手、ヴァレンタインを迎えることで完成された。プレトリア州立大学で音楽の学位を取得したヴァレンタインは、プレトリア・テクニコンでさらにオペラの修練を積み、ほどなく母国の熱心な音楽愛好家たちから注目を集めるようになる。彼女が、ケープ・タウンのスピアー・オペラ・カンパニーによる『ウエスト・サイド・ストーリー』でマリア役を射止めただけでなく、ネルソン・マンデラといった世界的指導者たちの目前で行なわれた注目度の高いリサイタルに抜擢されたのも、それほど不思議なことではなかっただろう。彼女は他にも、『マリツァ伯爵夫人』のマリツァ伯爵夫人役、『ボエーム』のムゼッタ役、『リゴレット』のチェプラーノ伯爵夫人役などを務め上げている。

目標とするキャリアを求めてロンドンに赴くや、彼女はすぐさまこの新興の若きアンサンブルにおけるキー・パーソンとして迎えられる。そしてこのアンサンブルは、彼らの間に芽生えた深い友情をその名に込めて、アミーチ・フォーエヴァーと名乗ることとなった。