“WE ARE THE RAVEONETTES,

AND YOU ARE NOT..."


2002年11月、ザ・レヴォネッツはニューヨークでソールドアウトのショーを行った。マーキュリー・ラウンジを埋めつくしたニューヨークきっての粋を気取る観客に向かって、ベースとヴォーカルのシャリン・フーがひょうきんにこう言った。「あたし達が噂のザ・レヴォネッツよ、で、貴方達は違うわけ。」



ザ・レヴォネッツは、シャリン・フーとスーン・ローズ・ワグナーというデンマーク出身の二人が結成したデュオ。デンマークの音楽シーンに幻滅した二人は、自分たちでまったく新しいロックンロール・サウンドを創り出し、世界に打って出ることにしたのだ。



ギターを弾いて歌っているスーンが全てのソング・ライティングも手がけている。プルオーバーのセーターにいつも付けているバッジ「Back To Mono(モノラルに戻ろう)」が、その意気込みを物語る。そう、フィル・スペクターが編み出したロックの「ウォール・オブ・サウンド」の支持者なのだ。「デンマークからニュー・ガレージ・ロックの新星」と銘打ったデビューアルバム『Whip It On』は、「爆音のステレオ録音(モノラル対応)/EXPLOSIVE STEREO(MONO COMPATIBLE)」でレコーディングされており、新世代に向けたデュオ独特の「ウォール・オブ・サウンド」を、どうよとばかりに聴かせる。



THE RAVEONETTES STYLE

彼らのサウンドは、前のジェネレーションの「素晴らしい音楽へのトリビュートなんだ」とスーン。「クランプスの原始的なシングル・ビートや、80年代のジーザス&メリー・チェインのようなノイズとダークなフィーリング、60年代のガール・グループ、それにスーサイドの単調なサウンドなんかだよ」



「ヴォーカルはエヴァリー・ブラザーズ風ね」とシャリン。「私たちの良さはデュオならではのダイナミックさと、男女のヴォーカルをうまく組み合わせた歌い方。二人で細かいところまで協力してるのよ。スーンが曲を書くんだけど、一人でやるのはそこまで。あとは全部二人で一緒にやるの。プロデュースも選曲も二人でやるし、ヴォーカルも一緒」



デュオは音楽だけでなくカルチャー的にも前時代の影響を受けている。『Whip It On』のパッケージのインスピレーションは、ジャンクなB級映画から得ているし、サウンド・メイクではデンマーク映画における「Dogme95(ドグマ)」からヒントを得た。そのためデビュー・アルバムのレコーディングでは、あらかじめ次のようなルールを作ったのだった。

(1) 曲は全部、同じキーのB♭マイナーでレコーディングする。

(2) 3つのコードしか使わない。

(3) 曲はどれも3分以下におさめる。

(4) ハイハットやライド・シンバルは使わない。



BEAT ON THE ROAD

『Whip It On』の曲のほとんどは次のようにしてできたという。「ドラムマシーンを使って4トラックで仕上げている。大事な点は、すべて思いつくまま自由に創ったということなんだ。ビート・ジェネレーション文学のスタイルさ、ジャック・ケルアックとかね。でも僕はそれをレトロ感覚でやり直したわけじゃない。1つのビートを決めたら3分間流す。その間にギターを弾いて歌って仕上げるんだ。その場の雰囲気が大切なんだよ」



ジャック・ケルアック同様、スーンはこの画期的なアルバムの何曲かをアメリカ放浪中に書き上げた。「1998年にアメリカに行った」とスーン「ニューヨークのヘルズ・キッチンやシアトル沖の小さな島、ラスベガス、ウェスト・ハリウッドの小さなアパートを転々とした。バンドを組もうとメンバーを探してたんだけど、1人も見つからなかった。それでその間、曲作りに専念することにしたんだ」。その時書いた曲のうち、「Bowels Of The Beast」(ラスベガスからインスピレーションを得た)と「Cops On Our Tail」(ロサンゼルス郊外の砂漠をドライブ中の出来事)は、『Whip It On』に収録されている。「行く当てのない落ち着かない気分やアメリカでの経験が原点となっている。目にしたことや行った街や、ある場所特有の雰囲気なんかだよ」



DENMARK

デンマークに戻ったスーンは、以前から知っているシャリン・フーを訪ねた。「彼女が歌ってることを知ってたし、ベースも弾けるしね。僕はデンマークの音楽シーンで一風変わった相手を探してたんだよ。あの国ではオルタナティブっていうのは見下されてるんだ。オルタナティブを流すラジオ局もないし、NMEだって手には入るけどひと月遅れさ。デンマークは何でも歴史に学ぶ国なんだよ」



「私たち二人ともコペンハーゲンに住んでたし、音楽の趣味が同じだったから、知り合うのも当然だったわ」とシャリン。「共通の友人を通して知り合い、同じような音楽をやりたいと思ってることが分かったの」



SUNE ROSE WAGNER

スーンはドイツ国境近くのデンマークの小さな町で育った。初めて聴いたポップ音楽は、母が買ったボブ・ディランの『偉大なる復活/Before The Flood』だった。「母はディランがアコースティックでやってるアルバムだと思ってたんだよね。これがきっかけで僕はディランのアルバムを全部買った。それからマーク・ノップラーとダイアー・ストレイツを聴いて、ギターを弾きたくなったんだ」。スーンはむさぼるように音楽を聴き、「ライブラリーができるほど」のコレクションが出来上がった。ロックのルーツや支流を求めて聴いた初期のガール・グループやバディ・ホリー(サイコなウォール・オブ・ノイズに仕上げたホリーの「Every Day」はザ・レヴォネッツのライヴの定番)から、ソニック・ユースの『デイドリーム・ネイション』(スーンはこれで不協和音にハマった)まで様々である。



SHARIN FOO

シャリンもまた、豊かな音楽遍歴を持っている。ロック・ギタリストの父親のおかげで、ビートルズからヴェルヴェット・アンダーグラウンドまで幅広いポップ音楽になじんできた。様々な音楽に傾倒した彼女はあちこち旅し、半年間インドに滞在してドゥルパドとカッワーリーを熱心に学んだこともある。ドゥルパドは今も演奏されているヒンドスタン地方最古の古典音楽だ。180cmの長身でナチュラル・ブロンド、中国人の血が4分の1入っているシャリンは、子供の頃から祖父の国である中国を何度も訪れている。こういう背景のシャリンとスーンが自分たちの音楽を模索し始めると、全てがしっくりときたのだった。



WHIP IT ON !

「これだって感じだった」と、シャリンはスーンと一緒に音楽をやり始めた時のことを話す。「一緒に歌うとすごく自然でマジカルなのよ。どちらか一方が欠けても、だめ。二人が合わさって、さらに良いものができる」



もっと先進的な音楽がやりたいというスーンは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドや古典音楽のサウンドが好みというシャリンと意気投合した。ワンス・ワズ&サウナ・レコーディング・スタジオで、二人の言葉によると「ちょっと肩ならししただけ」で、『Whip It On』のレコーディングに取りかかった。コペンハーゲンにあるこのスタジオは元ソニー・スタジオだった。二人は2001年のクリスマスの頃、セッションに使用されていない時期の同スタジオを3週間ほど借り切り、プロダクションまでをすべて二人で片付けてしまったのだ。サンプリングしたドラムやギター、ベースをプロ・ツールで処理して、「オーバーダブは一切なし、全部1回のテイク」とのこと。1回といっても最初のテイクとは限らずに、一番良かったテイクを一曲ずつ、それぞれ1つのグルーヴ感があるように落とし込んだのだ。



ライヴではギタリストのマノ・ラマダスとジャズ・ドラマーのジェイコブ・ホイヤーを加えている。「ジャズ・ドラマーが欲しかったんだ、あの巧みな腕がね」。最初のギグの1回は、デンマーク第2の都市オーフスにあるザ・スポットで行った。その近くで2日間開催中の音楽会議に出席していたローリング・ストーン誌のデイヴィッド・フリックが、たまたまザ・レヴォネッツのショーを観て、「この新人バンドに一目でぞっこんほれ込んだ」という。このベテラン・ロック評論家は次のように書いている。「ワグナーとフーは、ハリケーンのようなフィードバックと低くトレモロの効いたベースを背景に、平坦な旋律をフラットなボーイ&ガールのヴォーカルで歌う。いわばジーザス&メリー・チェインにブロンディのデボラ・ハリーを加えた感じ。またはラモーンズを従えてグレゴリオ聖歌を歌うシャングリラズと言ってもいい」



2002年7月、ニューヨークにやってきたザ・レヴォネッツは、パンクのメッカCBGB'sに登場し、新曲3曲を披露した。この新曲は、ブロンディ、ゴーゴーズ、マーシャル・クレンショーなど数多くのアルバムで知られる伝説的プロデューサー、リチャード・ゴッテラーと共にレコーディングしたばかりだ。今、彼らの最初のフル・レングス・アルバムを手がけているゴッテラーはこう言う。「初めてザ・レヴォネッツを聴いた時、ニューヨークの輝かしいパンク革命の頃を思い出したよ。二人の音楽にはあの頃のエネルギーと興奮がある。しかも、さらにパワーアップして今風のサウンドになってるんだ。これは素晴らしいレコードだよ。大物になること間違いなしだね」



『Whip It On』は、ザ・レヴォネッツが打ち立てた“ウォール・オブ・ニュー・ロック・サウンド”の礎なのである。