ピエール・ブーレーズ追悼 1925.3.26. – 2016.1.5.
ピエール・ブーレーズ追悼 1925.3.26. – 2016.1.5.
現代音楽界における唯一無二の存在であり、作曲家・指揮者・著述家・組織者としても等しく活躍し影響力を持っていたピエール・ブーレーズ氏が、1月5日、バーデン・バーデンの自宅で亡くなりました。享年90歳(バーデン・バーデンは1958年に氏が指揮者としての活動を本格的に開始させた場所でもありました)。
ブーレーズの音楽はその複雑さ・難解さで知られていましたが、指揮者としてのブーレーズは、欧米でたちまちのうちにその名声を確立させました。1965年にクリーヴランド管弦楽団を指揮してアメリカ・デビューを飾り、2年後の1967年には同団のミュージック・アドヴァイザーに就任(1972年まで)。一方1971年にはロンドンのBBC交響楽団の首席指揮者に就任するかたわら、レナード・バーンスタインの後任としてニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督にも就任しています(1977年まで在任)。
主にこれら3つの世界的オーケストラを中心とする指揮活動で、ブーレーズは自作のほか、ドビュッシー、ラヴェル、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルン、バルトーク、ストラヴィンスキー、メシアン、ヴァレーズ、カーターなどの幅広い音楽の解釈者として知られるようになりました。CBSはブーレーズの指揮活動の初期からその演奏をレコーディングとして記録しており、それらは2015年3月に氏の90歳の誕生日を記念して、CD67枚組のボックス・セット「ピエール・ブーレーズ~ザ・コンプリート・ソニー・クラシカル・アルバム・コレクション」にまとめられました。
このボックスには、グラミー賞を受賞したパリ・オペラ座とのベルク「ヴォツェック」全曲(1966年)、クリーヴランド管弦楽団とのストラヴィンスキー「春の祭典}(1969年)、ニューヨーク・フィルとのバルトーク「管弦楽のための協奏曲」、ラヴェル「ダフニスとクロエ」が含まれています。そのほか、コヴェント・ガーデン王立歌劇場でのドビュッシー「ペレアスとメリザンド」、BBC交響楽団とのバルトーク「青ひげ公の城」、シェーンベルク「モーゼとアロン」、マーラー「嘆きの歌」の第1部を含む世界初録音や、珍しいところでは、ヘンデル「水上の音楽」、ベルリオーズ「レリオ」(語りはジャン=ルイ・バロー)、ワーグナー「使徒の愛餐」など収録されています。ソニー・クラシカルの「ピエール・ブーレーズ~ザ・コンプリート・ソニー・クラシカル・アルバム・コレクション」は、ブーレーズ氏の指揮者としての卓越した業績を記録したレガシーともいうべきもので、あらゆるクラシック音楽ファンにお楽しみいただけるボックス・セットです。
ブーレーズの死に際して、フランスの首相マニュエル・ヴァルスは『勇敢さ、革新、創造性――フランス音楽界においてピーエル・ブーレーズが意味するのはこの3つであり、世界に向けてその音楽の素晴らしさを伝え続けた』とツイートしています。フランス国内においては、パリのポンピドゥ・センターの隣にIRCAM(フランス国立音響音楽研究所)を1977年に設立し、さらシテ・ド・ラ・ミュージック(1995年)やパリ・フィルハーモニーの創設(2015年)にもかかわりました。ブーレーズの影響力は、フランス国内にとどまらず、クラシック音楽やクラシック音楽の演奏家が果たす役割に新しい意味や意義を見出すことにつながっているのです。氏の死去によって、私たちは類まれなアーティストでありヴィジョンを持った音楽家を失いましたが、彼の足跡はソニー・クラシカルの数多くの録音に刻み込まれているのです。心からのご冥福をお祈りいたします。
ソニー・クラシカル・インターナショナル