ノディーシャ
 多くの新人アーティスト達にとって、レコード会社の重役たちの前でオーディションを受けるというのは難しいものだ。しかしノディーシャは違った。ジャネット・ジャクソンやメアリー・J・ブライジなど数多くのスーパー・スターを手がけてきたプロデュース・チーム、ジミー・ジャム & テリー・ルイスのレーベル、フライト・タイム・レコーズのオーディションでノディーシャは自分のパフォーマンスのなかばに来たとき、テリー・ルイスがまだ半信半疑な顔をしていることに気が付いた。「心の底から歌っていたんだけど彼は『君はそんなものかい?』って顔で私を見てたの。だからテーブルに飛び乗って彼の目の前でダンスをはじめたわ。そしたら彼の表情ががらって変わったのよ!」彼女は説明する。「私がパフォーマンスを終えると、しばらくみんな黙ってたわ。そしてテリーが部屋を見渡して『彼女とサインしよう』って静かに言ったよ。私はその場では平静を装ったけど、ビルの外にでたらキャーって叫んで飛び跳ねちゃったわ!」彼女がそのオーディションを受けたとき、まだ16歳だったということをとってみてもいかに彼女がプレッシャーに強いかわかるはずだ。「人生を決めるまたとないチャンスだってことはわかってた。だから絶対にそのチャンスを逃したくなかったの。絶対に今日この場で契約を手にいれてやるって考えながら部屋に入ったの。」

 「最初は彼女の声に驚かされた。でもパフォーマンスを見るうちに僕達がずっとオーディションをしてきたなかでもみたことのないようなエネルギーとスタイルに圧倒されたんだ。いままで誰もオーディションで僕の目の前にまで来てパフォーマンスなんてしなかったから。彼女はリアルでスターだよ。」8度もグラミー賞にノミネートされた大物プロデューサーであるテリー・ルイスはそう語る。

 そのジミー・ジャム & テリー・ルイスをはじめ、ジャーメイン・デュプリやダラス・オースティンといったスーパー・プロデューサーたちがバックアップしたこのデビュー・アルバムで彼女はテリー・ルイスのその判断が間違っていなかったことを証明している。現在18歳になった彼女だが、そのエモーショナルでリッチなボーカルはとても18歳とは思えない。アルバムのほとんどは彼女とテリー・ルイスの会話のなかから生まれたという。「テリーは私の恋愛話を聞いて、私が経験した良かったことや悪かったことを彼と何時間も話し合ったの。それが曲になっていったわ。」と彼女は言う。「最初は彼にパーソナルなことを教えるのにとまどったんだけど、すぐにそれがリアルで正直な曲になるんだってわかったの。」

 カリフォルニア州サン・バーナーディノ出身のノディーシャはブランディやジャネット・ジャクソンに影響を受けてアーティストになることを決意。6歳の時にパフォーマンスすることをはじめた彼女はティーン・グループ、イマチュア(後にIMXと改名)のバックダンサーとして採用される。その後も地元でパフォーマンスしたりデモを作ったりしながら自分のスキルに磨きをかけていった。「10歳のときにジャネットの『You Want This』のビデオをみて、ダンスと歌が私の本当にやりたいことだってインスパイアされたの。それからはずっとどんなオーディションでもジャネットの曲を歌ってきたわ。自分がそのジャネットを育てたジミー・ジャム & テリー・ルイスと仕事してるなんて今でも信じられない!」そう彼女は言う。

 アルバム・リリースの前にインターナショナルにプロモーション活動を開始した彼女はすでに「Get It While It’s Hot」と「That’s Crazy」という2曲のプロモーション・ビデオを撮影した。監督はロニ・サイズやスパイス・ガールズなどのビデオを手がけたUKのジェイク・ナヴァ。ビデオ撮影で忘れられない思い出は?の問いには「『That’s Crazy』でのキス・シーンよ!すごい緊張したわ。だって知らない人と大勢の知らない人達がみてる前でキスしなきゃいけなくて、それが撮影されてるのよ!」と答える。

 テリー・ルイスはこう締めくくる。「ほんの一瞬彼女にスポットライトをあてるだけで、彼女はその瞬間を何ものにも変えがたいものにしてしまう。それがスターっていうことなんだ。彼女はとてもスペシャルなシンガーでスペシャルなパフォーマーだよ。」