ミッドナイト・オイル

ミッドナイト・オイルは1972年、シドニーで結成、1978年のアルバム『Midnight Oil』でデビュー。当初はサーフパンク色が強かったものの、フロント・マンのピーター・ギャレットの人種問題や環境問題を基にした社会的なメッセージを込めた歌詞と骨太のロック・サウンドにより、地元オーストラリアはもとより、世界各地で絶大な支持を得て一時代を築いたオーストラリアを代表する国民的ロック・バンドといえる。

 

活動時の逸話には事欠かず、早くから核兵器撲滅を訴え1983年のアルバム『Red Sails in the Sunset』は日本でレコーディングされ(この頃から政治的なメッセージがより顕著になっていく)、1985年のEP『Species Deceases』は広島/長崎の惨事から40年目に敢えて発表されている。代表作は1987年の6枚目のバンド史上最大のヒット・アルバム『Diesel&Dust』。先住民から奪った土地の返還を訴える「Beds Are Burning」が全世界で大ヒット。アルバムはオーストラリアでは6週連続NO.1獲得、全米でも最高位21位を記録した。

 

●Midnight Oil - Beds Are Burning

 

1990年には米エクソン社がタンカー事故で海洋に石油を流出した事件を受けて、ニューヨークのエクソン社前にトラックで乗り付けゲリラ・ライヴを行い、世界中の新聞一面で取り上げられたことも広く知られている。2000年のシドニー・オリンピック閉会式でのパフォーマンス時には“Sorry”と書かれた衣装を着て登場。19~20世紀にかけてアボリジニの子供を親元から略奪する政策が行われていたことを風化させないための喚起であった。

 

2002年にピーター・ギャレットがオーストラリア政界入り(環境大臣まで上りつめた)にともないバンドは一度解散したが、2016年に再結成がアナウンスされ、2017年にワールドツアーをスタート。2020年には、オーストラリアの先住民とのコラボレーションをテーマにした17年ぶりとなる新曲「Gadigal Land(ガディガル・ランド)」とミニ・アルバム『The Makarrata Project(ザ・マカラータ・プロジェクト)』を発表。「Gadigal Land」はAPRA(豪著作権団体)のソング・オブ・ザ・イヤーを受賞。『The Makarrata Project(ザ・マカラータ・プロジェクト)』はチャートの首位を獲得し、オーストラリアのグラミー賞ともいえるARIA賞に5部門ノミネートされた。一連の収益の一部は、先住民との和解を進める組織に寄付される。

2021年10月29日新曲「Rinsing Seas」発表