ミッシェル・ウィリアムス

最新作『サヴァイヴァー』が既に全世界セールス800万枚を突破、名実共に世界No.1女性グループとしてポップ・シーンの頂点に立つデスティニーズ・チャイルド。2002年はメンバー3人それぞれがソロ活動を展開するということで大きな話題を呼んでいる。今回その第1弾リリースとして、一昨年2月からグループに加わった新メンバー:ミッシェル・ウィリアムスのソロ・アルバム『ハート・トゥ・ユアーズ/Heart To Yours』が登場!



敬虔なクリスチャンとして知られるデスチャは、これまでアルバムには必ずアカペラのゴスペル・ナンバーを収録、ライヴでも3人の歌声で荘厳に歌い上げるゴスペル・メドレーがハイライトとなるなど、最先端のR&Bナンバーと共に彼女達の音楽に欠かせない要素として常にゴスペル・ソウルに対してリスペクトを捧げてきた。先日の米国同時多発テロ被害に対するベネフィット・コンサート『The Concert For New York City』、『United We Stand』に出演した際もゴスペル・メドレーを被害者のために捧げている。

中でもミッシェルは幼い頃から生まれ故郷のイリノイ州、ロックフォードの聖歌隊でゴスペルを歌っており、それがシンガーとしての自身のルーツであると公言している。今回のソロ・デビューにあたり、彼女は真っ正面からゴスペル/スピリチュアル・ソウルに取り組みアルバムを作り上げた。



ゲストに、やはりアーバン・ゴスペルの人気女性デュオ:メアリー・メアリー、ゴスペルの女王と賞されるシャーリー・シーザー、男性ゴスペル・ヴォーカル・グループ:メン・オブ・スタンダード、そしてP.Diddyのバッドボーイ所属で人気R&Bシンガー:カール・トーマスらを迎えている。

プロデューサー陣もデイモン・エリオットのようにデスチャで馴染みの面々は極めて少なく、今乗りにノッているウォーリン・キャンベル(メアリー・メアリーetc.)、実兄エロン・ウィリアムス(昨年リリースのデスチャX’MASアルバムでもミッシェル・ソロをプロデュース)、バスター&シャヴォニ(ヨランダ・アダムスetc.)…と、R&B/ゴスペル・シーンから多彩な顔ぶれを揃えて、デスチャとは一線を画す独自路線を打ちだしている。



今様のR&Bのトレンドをふまえつつ、メロウでピースフル、春らしく心浮き立つリリカルなサウンドは、時に純真に祈りを捧げる少女のような、母のように暖かく包み込むようなミッシェルの清々しい歌声と相まって、聴き手に天上の「癒し」を与えてくれる。

US1stシングルとなるフォーキーでメランコリックな「ハード・ア・ワード」、メアリー・メアリーとのデュエットによるタイトな「ソー・グラッド」、ハッピーでポジティヴなメッセージを込めた「サン・ウィル・シャイン・アゲイン」、9/11の悲劇に捧げられた「ベター・プレイス(9.11)」、シャーリー・シーザーとの高揚感溢れる壮大なゴスペル・ナンバー「スティール・アウェイ~」…次々表情を変える彼女のヴォーカルと丁寧に作り上げられたバック・トラックがアルバム最後まで決して飽きさせない。



ミッシェルのソウルフルでハスキー、個性的なヴォーカルが、「インディペンデント~」以降の新生デスチャが最強のヴォーカル・グループへとステップアップする大きな原動力となったことは誰もが認めるところだが、本作によって一人のヴォーカリスト/アーティストとして彼女が現在のシーンにおいて希有な輝きを放っていることに気付かされる。今後の動向が気になる注目アーティストがまた一人誕生した。