グレン・スコット
グレン・スコット…彼は1999年にEPIC/USからアルバム『ウィズアウト・ヴァーティゴ』でデビューを果たした。その記念すべき第1作目はダニー・ハサウェイ、ビル・ウェザーズ、マーヴィン・ゲイ、カーティス・メイフィールド、ファンカデリックといった70年代のアメリカン・ソウル/ファンクに敬意を払うと同時に、ロック、ジャズ、レゲエ、ゴスペルから、90年代の産物であるドラムン・ベースやダブのようなクラブ・サウンドまでも取り込み、見事ポップへと昇華させたサウンドが大いに話題を呼び、ここ日本でもシングル「ヘヴン」が全国10局以上のFMでパワープレイになるなどヒット。その年に行われた来日公演での素晴らしいライヴ・パフォーマンスと共に、その存在を鮮烈に人々の心に焼き付けた。



しかし、その後産業としての音楽業界の在り方に疑問を抱き、彼はアーティストとしての確固たる自由を求めEPICを離れる決心をする。そうして一時アーティストとしては表舞台から姿を消したが、ミュージシャン/ソングライター/プロデューサーとしては数多くのアーティストの作品に関わり、傍らで自らの創作活動も続けていた。



そして2002年、遂に彼はニュー・アルバム『ソウルライダー/SOULRIDER』を完成。それはより彼自身の内面り光を当て、よりストイックに、より忠実に創りあげられ、前作以上にポジティヴで美しいメッセージに溢れ、揺るぎない自信に満ちた「音楽」に。彼のオルタナティヴな音楽性を更に押し進めつつ、グルーヴィーかつソリッドに織り上げられたメロディとサウンドが、彼のソウルフルでフリーなヴォーカル/コーラスとシンクロし、タイトル通り堂々、新世代のためのソウルを鳴らす…。



ソング・ライティング、楽器演奏(ピアノ/ギター/ベース/ドラム/パーカッション/ストリングス・アレンジまで)、プロデュースを殆ど独りでこなし、レコーディング、ミックスに至るまで自らコントロールしているが、あくまで“全ては「歌」を響かせるため”と彼は言う。



ジャマイカ系移民の牧師の子としてロンドンに生まれ、幼い頃から自然に音楽を作り始めた彼。アメリカのレーベルからのレコード・デビューし、日本でもブレイクを果たし、現在はスウェーデンのアーティストのプロデュースを手掛けている。その翼はグローバルにまだまだ広がっていく。『ソウルライダー』は共に生きる世界中の人々に向けられたメッセージであり、同時にグレン・スコットという一人のアーティストの人生を写し取った記録でもある。



今音楽シーンでは、エリカ・バドゥ、ジル・スコット、インディア.アリー、アメール・ラリューらが“オーガニック・ソウル”として脚光を浴び、男性アーティストでもディアンジェロ、マックスウェルら70’sソウル・チャイルドが“ニュー・ソウル”として人気を集めている。同じく往年のソウルを信奉しながら、決してそれだけに留まらない“ハイブリッド(混合/雑種)・ソウル”グレン・スコット−彼はこれから始まる新たなムーヴメントの先駆者となるのか、それとも音楽史上ただ一人のオリジナルとして名を残すのか… その答えはまだまだ先にならないと分からない。