アナログ・ステレオ時代のベートーヴェン全集の定番~セル&クリーヴランドのベートーヴェン:交響曲全集
タワーレコード x "Sony Classical"究極のSA-CDハイブリッド・コレクション
ベートーヴェン:交響曲全集(2016年DSDリマスター)/ジョージ・セル
Beethoven: The Nine Symphonies / George Szell
■品番:SICC-10224~8 ■ハイブリッドディスク5枚組|SA‐CD層は2ch ■発売日: 2016年6月22日予定
■定価: ¥10,000+税 ■音匠レーベル使用 ■各ディスクは通常のジュエルケースに封入し、三方背ボックスに収納
■日本独自企画 ・完全生産限定 ■世界初SA-CDハイブリッド化(交響曲第3番を除く)
■アナログ・ステレオ時代のベートーヴェン全集の定番
アナログ・ステレオ時代のベートーヴェン全集の定番。曖昧さを残さぬ緊密な演奏設計のもと、筋肉質の響きと強い推進力を持ち、オーケストラの各声部が無理なく驚くほどクリアに再現されるさまは、セルの耳の良さとクリーヴランド管の極めて高度な演奏能力の賜物であり、まさにカラヤン/ベルリン・フィルやオーマンディ/フィラデルフィアなどと並ぶ、20世紀のオーケストラ芸術の極点を示したものといえるでしょう。各所に聴かれるオーケストレーションの改訂、リピートの採用・不採用にはセルならではの慧眼が光ります。
これら9曲の交響曲は、1957年2月の第3番「英雄」に始まり、1964年10月の第1・第2番まで、ほぼ7年がかりでじっくりと録音され、エピック・レーベルから発売されました。エピック・レーベルは、英EMIがエンジェル・レーベルでアメリカ市場に進出したことで、英コロンビア録音の供給が途絶えた米コロムビアが、1953年に蘭フィリップスと提携して創設されたレーベルでした。当初はフィリップス音源のアメリカにおける窓口としてドラティ、ヨッフム、ケンペン、オッテルローなどのヨーロッパ録音を発売していましたが、しばらくするとアーティスト・ロスターの強化のために、セル&クリーヴランドやレオン・フライシャーら米コロンビアのアーティストが「移籍」し、アメリカ録音も発売されるようになりました。セルとクリーヴランド管弦楽団は、いわばこの新興のエピック・レーベルの看板アーティストであったわけです。
米コロンビアの子会社的存在だったため、レコーディングは米コロンビアのスタッフが手掛けており、セル&クリーヴランドの録音も1950年代はハワード・H・スコット(グレン・グールドの最初のプロデューサーとしても知られています)が、1960年代に入るとポール・マイヤースがメインにプロデュースを担当しています。それゆえ当時の最先端の録音技術や機材が惜しげもなく投入され、ステレオ時代に入ると本家米コロンビアが標榜した「360 サウンド」を真似て「ステレオラマSTEREORAMA(「ステレオ」と「パノラマ」を掛けた造語)」を旗印に、左右に広く拡がり、密度濃く鮮度の高いステレオ録音を発売するようになりました。同じアメリカのメジャー、RCAが推し進めた「リビング・ステレオLIVING STEREO」と並んで、当時の最高峰のステレオ録音が実現したのです。
「ステレオラマ」のロゴ。時期によって複数のデザインがある。色はアルバムデザインに合わせることが多かった。
■本拠地セヴェランス・ホールの優れた音響
レコーディングは、全てクリーヴランド管弦楽団の本拠地だったセヴェランス・ホールで行なわれました。1929年に完成し、1931年にこけら落としが行なわれた1844席を擁する名ホールで、ギリシャ新古典様式の外観とアールデコを思わせる優美な内観で、「アメリカで最も美しいコンサートホール」と称されています。響き過ぎず、しかもセルの持ち味である透明性とクリアなサウンドを余すところなく収録できるレコーディング会場としても優れています。エピックのLPにはオーケストラの名前の脇に、ホールのファサードを象ったロゴが使われることが多かったのも、ホールとオーケストラの結びつきの重要性を示すものといえるでしょう。
セヴェランス・ホールのファサードとともにデザインされたクリーヴランド管弦楽団のロゴ。これもアルバムデザインに合わせて色が変わった。セルのロゴもあった。
セルのベートーヴェンの交響曲9曲は、1965年にエピック・レーベルで初めて7枚組のLPボックス・セットとしてまとめられました。セルの録音は、エピックがポップス色を強めた1960年代後半からはコロンビアに「里帰り」し、1970年にセルが亡くなった直後に、アメリカで追悼盤としてこのベートーヴェンの交響曲全集が再発売されたのもコロンビア・レーベルでした。この時は、セルの9つの指揮写真をモチーフにした新たなデザインのボックスが採用されました(今回のSA-CDハイブリッド化のボックスです)。全集の日本盤としての初出は日本コロムビア時代の1965年で、CBSソニー時代にはやはりセルの追悼盤として1970年に発売され、さらに「セル・メモリアル・アルバム」として1980年に再発売されています。国内盤CDとしては今回が初の全集ボックス化。2004年以来12年ぶりのニュー・リミックス&DSDリマスタングとなります。
エピック初出全集のジャケット
■別冊解説書掲載内容(予定)
1970年のセル追悼盤として再発売された際に解説書に掲載された、当時のアメリカ音楽批評界の大御所2人の評論家によるセル論の初邦訳のほか、日本を代表する作曲家で歯に衣着せぬ音楽評論でも知られた諸井誠氏によるセルのベートーヴェン論、セルによる独自のオーケストレーション改編を中心にその今日的意義を問う木幡一誠氏の新稿を加え、さらにセルとクリーヴランド管によるシーズン毎のベートーヴェン作品演奏リストを付す予定です。
①ハロルド・C・ショーンバーグ「ジョージ・セル、その力と芸術」(1970年、初邦訳)
②ドナルド・ヘナハン「ジョージ・セル~知性と感情」(1970年、初邦訳)
③木幡一誠「セルのベートーヴェンの今日的意義」
④諸井誠「巨匠セルの没後10周年に寄せて」(1980年)
⑤セル&クリーヴランド管弦楽団 ベートーヴェン作品演奏リスト(その1)
⑥曲目についてのノート
⑦歌詞対訳付き(歌詞訳:舩木篤也)他
ジャケットデザイン:M7X30281(1970年、セルの追悼盤およびベートーヴェン生誕200年記念として再発売された時のボックス・ジャケット)
初出:Epic BSC 150(1965年)
日本盤初出:CSS64~9(1965年11月)
■収録曲
ベートーヴェン
DISC 1
1.交響曲 第1番 ハ長調 作品21
2.交響曲 第2番 ニ長調 作品36
DISC 2
3.交響曲 第3番 変ホ長調 作品55 「英雄」
4.交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
DISC 3
5.交響曲 第5番 ハ短調 作品67
6.交響曲 第6番 ヘ長調 作品68 「田園」
DISC 4
7.交響曲 第7番 イ長調 作品92
8.交響曲 第8番 ヘ長調 作品93
DISC 5
9.交響曲 第9番 ニ短調 作品125 「合唱」
9.
アデーレ・アディソン(ソプラノ)
ジェーン・ホブソン(メッゾ・ソプラノ)
リチャード・ルイス(テノール)
ドナルド・ベル(バリトン)
クリーヴランド管弦楽団合唱団
合唱指揮:ロバート・ショウ
クリーヴランド管弦楽団
指揮:ジョージ・セル
[録音]
第1番:1964年10月2日
第2番:1964年10月23日
第3番:1957年2月22日&23日
第4番:1963年4月5日
第5番:1963年10月11日&25日
第6番:1962年1月20日&21日
第7番:1959年10月29日&30日
第8番:1961年4月15日
第9番:1961年4月21日&22日
クリーヴランド、セヴェランス・ホール
[プロデューサー]
ポール・マイヤース(第1番・第2番・第4番・第5番)
ハワード・H・スコット(第3番・第7番・第8番・第9番)
トーマス・フロスト(第6番)
[アナログ・トランスファー、リミックス、リマスタリング・エンジニア]
アンドレアス・K・マイヤー(マイヤーメディアLLC)
LPレコードに掲載されたセルのプロフィール