FLOWER FLOWER 新作「マネキン」インタビュー記事到着しました! (転載可) インタビュー:田中久勝
思えばFLOWER FLOWERは今までワンマンライヴを行っていなかった。2013年の活動開始以来、ロックフェスへの参戦や対バンライヴはあったものの、ワンマンライヴは行っていなかった。それどころか2013年の『カウントダウンジャパン』への出演を最後に、yuiの体調不良、結婚、出産という大きな出来事が続いた事が理由で、スタジオワーク以外、目立った活動をしていなかった。しかし5月8日、大阪、東京でワンマンライブを行うと突然のアナウンス。その後も夏フェスへの参戦、1年ぶりのシングル「マネキン」(8月2日)の発売が発表され、FLOWER FLOWER完全復活ののろしがあがった。まずは、6月22日にFLOWER FLOWERとしては約3年半ぶりのライヴをビルボードライブ大阪で、6月30日に東京・恵比寿ガーデンホールで“復活”ライヴを行い、その見事なバンドアンサンブルにFLOWER FLOWERというバンドの可能性を、改めて感じ取った人が多かったはずだ。それはメンバーも同じで、再び始まるFLOWER FLOWERというバンドの物語へのワクワク感が止まらないようだ。ライヴの余韻を楽しんでいる4人に、7月のある日、インタビューした。
――まずは久々のライヴを終えて、いかがでしたか?
yui 3年半ぶりということで、色々忘れていたこともありました(笑)。バンドとしていうとグルーヴの出し方とかも忘れていたり、でも途中から「これだったこれだった」と体が思い出し、いい演奏ができたと思います。個人的には人前で歌うという感触も忘れていたので、最初はすごく緊張しました。でもそれよりもお客さんの方が緊張していたみたいで(笑)、それが伝わってきて少しずつ緊張がほぐれていきました。
――リハはいつ頃からやっていたんですか?
yui 5月です。集中してリハをやっているうちにどんどんスイッチが入ってきて。
sacchan リハと並行してレコーディングもやっていたので、バンドとしての感覚はすぐに戻ってきた感じはありましたが、やっぱり本番が近づくにつれ、不安も少し感じていました。
yui ライヴをやらせていただいて、これからの活動もいい方向に向かっていくと確信できました。今後のFLOWER FLOWERの未来が見えたような気がしました。
――yuiさんプライベートで大きな環境の変化があって、家族との生活が中心になっていると思いますが、その中で音楽、ひいては歌、FLOWER FLOWERの存在というのは、休養前と現在とでは変わってきましたか?
yui FLOWER FLOWERを始めた頃は、ロックというか歪んだ音を好んで使ったり、憤りや、初期衝動をモチベーションに音楽を作っていました。出産、結婚を経験して、そこは変わってくるだろうなと思っていました。でもリハスタに入って、久しぶりにメンバーと音を出してみたら、「あれ、私変わっていない部分もあるな」って。このバンドは自分が思っているよりも、ロックが似合うかもしれないって思いました
それで考え方が変わって、シングルも最初に考えていたものよりもヘビィなロックの「マネキン」でいってみようよって、メンバーに提案しました。
――前作「宝物」の、温かかった感じから一転して「マネキン」はyuiさんがFLOWER FLOWERをやりたい!って思った頃の、初期衝動のような熱さを感じて、「戻ってきた」という感覚が強かったです。
yui 最初は夏っぽい感じのシングルにしたかったんです。青春時代に聴いていた90年代のロックやポップスを聴き直して、夏っぽいシンプルなポップスもいいなぁと思っていたのですが、プリプロ、レコーディングをやっていくうちに、どんどん真面目になっていってしまって。
――アー写、ジャケ写はポップな感じです(笑)。
yui そうなんです、ポップな感じの曲でいくので、アー写もジャケ写もポップに行きますって言っていたはずなのに、思っていたのとは違う感じに収まってしまい(笑)。着地点はちょっとずれた感じはしますが、「神様」(2014年)もそうでしたが、メッセージ性や強い主張がある曲を、時々意識して作りたいと思っているので、タイミング的には少し時間が空いたのでいいかなと思いました。
――確かにリアルで、ヒリヒリする言葉が並んでいます。
yui そうですね、最初はここまでヒリヒリする歌詞を書こうとは思っていなくて、書いていくうちに、何かに“当てていこう”と思ったんです。音に対しても直角じゃないですけど、その方が変に浮かなくていいんじゃないかと思ったので。ミックスも洋楽のような感じにしたいと思って、臨場感もプラスされて、インパクトが強い感じになっていると思います。
――ヘビィなアコースティックというイメージで、強い音とシンプルだけどヒリヒリする強い言葉が、こちらに向かってくるような感じがしました。
yui 是非女子高生とかに聴いて欲しいです。歌詞を書いていくうちに、2つの人格が出てきて、最初は強い言葉で書き出したのに、最後は弱い自分でもいいじゃんってなっていて。人間の心の内側には色々な感情があるので、これでよかったと思います。日本人って人に合わせたり、人の意見に流されたりする人が多い気がしていて、でももっと自由にやればいいじゃん、合わせる必要ないじゃんって思って、それを言葉にしたら、自分に答えが返ってきた気がして。私は弱いけど、それでいいじゃん、何も言わないでよって、もう一人の自分に言われた気がするので、それでこの歌詞の中には登場人物が二人いる感覚があって。
――メンバーの皆さんはyuiさんから「マネキン」を聴かされた時は、どう感じましたか?
mafumafu 歌詞がまだないラフなデモの段階から、世界観がすごくあって。簡単な打ち込みのトラックに、アコギを弾いてラララって歌っているだけでしたが、それで充分完成されていました。この曲に関してベースは、まずドシッと支えようと思いました。シンプルに弾く事に徹したら、メンバーが色々と音的に仕掛けてくるだろうというのは、長年の付き合いの中での感覚でわかるので、そこは委ねられるというか、任せられるというか。バンドのポジショニング、フォーメーションというのが、3年半のブランクがあったのですが、それが無駄ではなかったというか、メンバーは色々と活動していて、それが今回、ちゃんと音に反映されていると感じました。3年半は無駄ではなかったと。
yui いつも冗談っぽく言うのですが、FLOWER FLOWERをやっているのは、このメンバーを自慢するためにやっています。バランスも良くて、本当にかっこいい音を出してくれます。
mura☆junいつもの優しいアコギに、でもフレーズはすごく力強くて、そこに明確で綺麗な、しかも力強いメロディが乗っていて、16ビートのドラムの打ち込みが入っていて、それが夏っぽさだったんですよね。メロディとリフがしっかりしていて、これはすごい曲になるという印象がありました。
Sacchan 先ほどヘビィなアコースティックと言っていただきましたが、僕も正にそんな感じで、正直一度も夏っぽいとは思ったことはなくて(笑)。気だるくて、邦楽っぽくなくてすごくかっこいいと思ったので、曲をもらった時にyuiに「すごくいいよ」ってすぐにLINEをしたのを覚えています。
――yuiさんの歌が持つ浮遊感とは違う、UKロックに感じる浮遊感がというか、それがあいまって、癖になって繰り返し聴きたくなります。
yui プロデューサーとかもいないので、バンドメンバーで話し合って作っていって、ある程度は聴きやすいというか、たくさんの人の耳に入りやすいものも選択していければいいなと思っていて、でもちょっと変なのもいいなあと、その狭間にある曲だと思います。
――「変なの」と言っている感じは伝わってきます。
yui でもたくさんの人に聴いて欲しいという矛盾が(笑)。
――カップリングの「ドラマ」も重厚な音とピアノが絡んで、極上のバンドアンサンブルを聴かせてくれます。
yui 「マネキン」って洋楽っぽいサウンドとアレンジで、でも日本語を載せたら当然日本っぽくなるじゃないですか。「ドラマ」はそれをちょっと濁らせてくれるというか、洋楽チックで、でも聴きやすい曲なので、強い曲と優しさを感じさせてくれる曲と、そのバランスがいいなと思いました。
――この曲は作詞がyuiさんで、作曲はFLOWER FLOWER名義になっています。セッション感が凄く出ていると思います。
yui 3年半前にできた曲で、よくプリプロ中にセッションが始まって曲ができたりするのですが、その中の1曲です。どんなジャンルの音楽もできるメンバーなので、どんな曲が出てくるのかいつもわからなくて。この曲も面白いのですが、自分の声には合わないと最初は思っていました。黒人のゴスペルを歌っている人が歌うと、すごくいいのにと思ったのですが、自分で歌ってみるとすごくしっくりきて。
――音のイメージだけでいうとモノトーンで、でもyuiさんの歌が差し色になっていて、両方が際立ってくる感じがしました。このバンドアンサンブルはライヴで是非聴きたくなりますね。
yui 私もすごく楽しみです。
――久々のライヴもやって、こうやって音源もリリースして、改めて歌うという事に向き合ってみて、以前よりもフラットな気持ちで歌えている感じがありますか?
yui 自分の世界に入って、気持ちを声だけで表現する時は集中が必要で、その時人の目があると、うまくいかないこともよくあったのですが、今は“そこ”に一瞬でスっと入れるようになって。 “そこ”に自由に行き来できるようになっている事に、自分でもびっくりしました。声が制限されずに、大きく出るようになったのかなと思ったり、前よりもメンバーが出す音がしっかり聴けるように、鮮明に聴こえるようになりました。それを感じながら歌えるところが、変わったと思う部分ですね。
――バンドが引っ張ってくれるというか、バンドが声を掘り起こしてくれたというのはありますよね。
yui ありますね。今までは勝手に一人で鎧を着ていた気がしていて、でも今はみんなで共有している感覚があるので、その鎧が少し軽くなっているというか、なんなら着ていないと感じる時もあるくらいで、それだけ自由に歌えているのかなと思っています。
――ひとつ上のステージに上がったという言い方もできます。
yui だといいのですが (笑)、色々な事をあまり気にしなくなってきたのかな……。
――それがいい意味で曲にも歌にも表れているのだと思います。
yui 今までは、自分というロウソクを、大きな炎で燃え上がらせ、どんどん削っていたのだと思います。今はその減り方がすごく少なくなった。それは子どもが生まれ、守るものができ、自分が壊れてしまったらいけない状況だからだと思います。メンバーもいるし、支えもあるので、そういう意味では、自分をあまり追い込まず、負担を掛けず歌えるようになった感じがします。こんなに気持ちよく歌っている事、今までにあったかなあと思うくらいの自由さというか。
――yuiさんが30歳になったと聞いて、ちょっとびっくりしました。時間って流れてるんだなってしみじみ思います。
yui 大きくなりました(笑)。30歳になったら色々切り捨てるのかと思っていたら、3年も休んだし、またここに戻ってくる事ができて感謝しかないですね。戻ってこれると思っていなかった。ミュージシャンって、作品を出したりライヴをやったり、とにかく出し続ける、やり続けることで成立しているものだと思っていたので、3年空くというのは相当な覚悟というか、全てを失うかもしれないということも考えました。でもまたこうやって機会をいただけたのでメンバーがついてきてくれる限り、一生懸命頑張りたいと思います。
(メンバー大きく頷く)