チープ・トリックUSライヴ・レポート@フロリダ・タンパ公演(2019/10/18)

2019.11.09

Cheap Trick Live in the U.S.A. 

At MidFlorida Credit Union Amphitheatre, Tampa, FL, USA (October 18, 2019) 

夏から秋にかけ、様々なアーティストたちによるライブが、全米の各地にある巨大アンフィシアターにて開催される。北米夏のロック風物詩とも言えるこの半野外でのライブ、近年では二組以上の大物バンド達が組んでツアーに出る形式が通例となった。例を挙げれば昨年のジャーニーとデフ・レパード、フォリナーとホワイトスネイク、ジェフ・ベックとポール・ロジャースといった様に、一公演の料金で二つの大物バンドによるライブを楽しむ事が出来る訳だ。

 

 

今回レポートするチープ・トリックのライブも、フロリダ州タンパにあるミッドフロリダ・アンフィシアターにて、ZZトップの50周年全米ツアーの特別ゲストとして行われたものである。ただ特別ゲストとは言っても、曲数にして15曲、70分に及ぶ演奏時間は、事実上ダブルヘッドライナーとした方が妥当だろう。ステージも通常の彼らの公演に於けるステージセットそのままであり、開演前のミーグリでもZZトップ以上に多くのファンを集めていた。誤解を招くといけないので記しておくが、ZZトップは全米で未だ絶大な人気を誇っており、その根強い支持度には日本では計り知れないものがある。逆に言えば、それだけチープ・トリックはアメリカでも未だ支持され続けているのだ。 

 



2016年の『バン・ズーム・クレイジー・ハロー』以降、彼らは一年に一作のペースでアルバムをリリースしてきた。しかし2018年にアルバム先行シングルとしてリリースされた「The Summer Looks Good On You」以降、続く新作に関するニュースが入ってこなくなった。リック・ニールセンは「新作はもうじきリリース出来ると思う」と語っているが、その代わりに毎年精力的にツアーを行っているのだから、今は取り合えずライブを見に来てくれ、という事なのだろう。 

 



30分ほどの前座バンドの演奏後、定刻の7時45分きっかりにチープ・トリックのライブが始まった。定番のオープニング「Hello There」に続いたのは32年ぶりに生で披露された「How About You」。1985年リリースのアルバム『Standing On The Edge』からの選曲だが、こういった曲が披露されるようになったのはドラムのダックス・ニールセンの意見によるところが大きいそうだ。バニー・カルロスの後を継いでダックスがドラマーになってから既に十年以上、以降セットリストは毎晩変化自在となり、バンド全体のパフォーマンスもより活気あふれるものとなった。

 

 

「He’s a Whore」と「You’re All Talk」という初期二枚のアルバムからの痛快ロックンロールナンバーにしても、コアなファンにアピールすると同時に大陸的ブギーのリズムを好むZZトップのファン達にも歓迎されていた。加えて当夜最大のポイントとなっていたのが、ロビン・ザンダーの長男であるロビン・テイラー・ザンダーがバッキングヴォーカルとリズムギターを務めていた点だ。

 

 

彼自身プロミュージシャンとして長年キャリアを積んできており、ロビンの地元タンパでの公演という事で共演が実現したのだが、その効果は「You’re All Talk」の様なライブで音痩せしがちな曲においてテキメンだった。ロビンがギターを持たずマラカスを振りながら歌に集中し、リックが思い切りソロを弾きまくれたのも、後ろにテイラーの存在があってこそだ。両親譲りの甘いルックスも女性ファンには嬉しいボーナスであり、今後パーマネントなサポートメンバーとして彼がツアーに同行する可能性もある、とすら思わせるパフォーマンスだった。

 



「Need Your Love」、「Ain‘t That A Shame」、そしてトムの12弦ベースソロがフィーチュアされるジャム重視の中盤は、70年代の伝統的クラシックロックファン達にとって見応えも聴き応えも十分の場面だ。ベースソロの間、トムがZZトップを意識して西部劇のアウトローの如く、バンダナで顔の下半分を隠していたのはご愛敬。

 

 

ロビンの歌唱が素晴らしい大ヒット曲「The Flame」では、リックが「My favorite singer in the whole world!」と誇らしげに彼を讃える。続いて「I Want You to Want Me」、「Dream Police」そして「California Man」と、畳みかけるように勢いのあるヒットナンバーが連発された後、満を持して「Surrender」が飛び出す。

 

 

総立ちとなった大観衆の声援に応えるが如く、リックはお決まり通りに客席にピックをばら撒き、『at武道館』のジャケットが客席に投げ込み、最後に彼のトレードマークである五本ネックギターを抱えて、お別れの挨拶である「Goodnight Now」のリフをかき鳴らす。あっという間の70分のライブは。未だ蒸し暑い10月のフロリダの夜を吹き飛ばすような爽快なものだった。 

「安仕掛け」というバンド名に反し、チープ・トリックのライブにはインチキや誤魔化しは存在しない。真剣勝負のパフォーマンスこそが彼らの身上であり、常に極上のエンターテインメントが約束されている。次のライブでは近くリリースが予定されている新作からのパワフルな楽曲が聴けることだろう。2020年に再度来日公演が実現する事を願うばかりだ。 

 

 



Setlist 
1 Hello There 
2 How About You 
3 He’s A Whore 
4 You’re All Talk 
5 Need Your Love 
6 Ain’t That A Shame
7 Stop This Game 
8 12 Strings Bass Solo 
9 I'm Waiting for the Man (Tom Petersson on lead vocals)  
10 The Flame 
11 I Want You to Want Me 
12 Dream Police 
13 California Man 
14 Surrender 
15 Goodnight Now 

 

 

 


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