【Live Report】チープ・トリック最新ライヴ・レポート(2017/8/2 フロリダ・タンパ公演)

2017.08.08



Cheap Trick Live in the U.S.A.

At MidFlorida Credit Union Amphitheatre, Tampa, FL, USA (August 2, 2017)

 

 昨年遂にロックの殿堂入りを果たして以来、快進撃を続るチープ・トリック。七年ぶりのアルバムとなった『バン・ズーム・クレイジー・ハロー』のリリース、同じく殿堂入りを果たしたハートとジョーン・ジェットと組んでの一大全米ツアー、クラシック・ロック・アワードを含む二度の来日、間髪をおかずにリリースされた最新アルバム『ウィア・オール・オーライト』、その直後から始まったフォリナーと組んでのデビュー40周年ワールドツアーと、その精力的な活動振りはとても40年来のヴェテランとは思えない。日本でもエピック時代の全アルバムが膨大な量のボーナストラックを加えてリマスターされ、デビュー40周年記念コンプリート紙ジャケ・コレクションとして九月に再発される事になった。正に第三期黄金時代到来といっても過言でないだろう。



 今回は、フロリダ州タンパ公演で捉えた彼らの最新ライブの模様をお伝えする。前述した様に、この公演はジェイソン・ボーナムのLed Zeppelin Experienceを前座に据え、フォリナーとのジョイントで行われているデビュー40周年記念ツアーの一環としてのもの。フォリナーの特別ゲスト扱いではあっても、実際の演奏時間からするとダブル・ヘッドライナーとした方が相応しい。当日の客足も好調で、前日に熱帯嵐が通過したばかりとは思えない数の大観衆が会場を埋めた。



開演前、ミート・アンド・グリートに入れなかったファン達を見つけたリックは、彼らのところまで行くと全員にピックをプレゼントしていた。Tokyo 78とロゴの入ったTシャツを着たナイスガイのロビン、いつもクールな笑みが耐えないトム、バニーの後を受け継ぐという大役を見事にこなしている人懐こいダックスと、メンバー揃って気さくな人ばかり。デビュー40年経っても彼らがこれだけ多くの人達から支援され続けているのは、その素顔もファンの期待を裏切らない魅力的なものだからだろう。



 50分ほどのジェイソン・ボーナムの演奏が終わると、たった15分しか間を置かずにチープ・トリックのライブが始まった。お決まりの「Hello There」に続いたのは意表を突いたビートルズ・カバーの「Day Tripper」。1980年リリースのEPで聴かれたテイクよりも若干へヴィな演奏が印象的だ。ここ数回のライブでも「She Said She Said」や「Magical Mystery Tour」が二曲目に演奏されていたが、今ビートルズのカバーを演奏させたら彼らの右に出る者はいないだろう。「California Man」や「Need Your Love」では78年の武道館に観衆をタイムスリップさせ、「Hot Love」ではファーストのハングリーな感触が蘇る。コアなファンには第二期黄金期の隠れた名曲「Never Had a Lot to Lose」が待っている。毎日セットリストを大幅に入れ替える彼らのライブだが、いつどんな曲を演奏しても全く隙が無いのだから感服してしまう。ストーンズの『メインストリートのならず者』を連想させるジャケットの新作からは、シングルとなった「Long Time Coming」、そしてキンクスに通じるグルーヴがカッコいい「You Got It Going On」が演奏された。どちらも非常にライブで映える曲で、当夜の観衆の反応もとても良いものだった。この新作は『Heaven Tonight』以来の彼ら最高のロックンロールアルバム、と高評価を受けているが、この夜の演奏を聴けば誰もそれに異を唱える事はないだろう。



 蒸し暑いフロリダの夏、バンドも観衆も汗だくになり始めた頃、トムがお馴染み12弦ベースによるソロを披露して、彼のヴォーカルをフィーチュアしたヴェルヴェット・アンダーグラウンドのカヴァー「I'm Waiting for the Man」が演奏される。続いて喉を万全に休めたロビンが大ヒット曲「The Flame」を熱唱。単なるパワーバラードであるだけでなく、ロビン・ザンダーという不世出の名ヴォーカリストの素晴らしさが堪能できるのがこの曲最大の魅力だ。ここからはチープ・トリック・クラシックの連発される。「I Want You to Want Me(甘い罠)」、「Dream Police」、そして彼らの代名詞「Surrender」と来て客席が盛り上がらない訳が無い。



「Surrender」ではリックが客席に無数のピックを何度もばら撒き、歌詞に合わせてキッスのレコードではなく『at武道館』のジャケットを客席に投げ込む。この場面で、アメリカの大人気番組「America’s Got Talent」に出演し一躍有名人となった地元のサーカス師、ベロ・ノックスがゲストとしてコーラスに参加。公演前夜に全米で放映されたエピソードにおいて、大砲から打ち出されプロペラの回るヘリコプターを飛び越す、という超スタントを見せた彼の登場に大観衆も大喜びだ。これそチープ・トリックならではのタイムリーな演出と言えるだろう。


 持ち時間の60分を10分以上も超える大熱演を披露した彼らに、客席から大きな声援が寄せられる。チープ・トリックのライブにはオートチューンもバッキングテープも存在しない。本物のロックンロールと極上のポップスが見事にブレンドされたエネルギッシュなパフォーマンス、それが常に約束されているのだから。毎晩変幻自在のライブを魅せてくれる彼らのパフォーマンスは、いつ何度体験しても決して飽きるがない。開演前に筆者がロビンと談話していた時、彼の着ていたシャツに話が及ぶと彼は微笑んでこう言った:

「だってさ、日本のファン達がいたからこそ僕らのキャリアがあるんだからね」

 来年は『チープ・トリックat武道館』リリース40周年ということで、彼らと日本のファンにとって重要な一年になるだろう。ロビンにTokyo 18とロゴの入ったシャツを着て貰うためにも、来年武道館で40周年記念公演が実現する事を祈っている。



Setlist

  1. Hello There
  2. Day Tripper
  3. California Man
  4. Never Had a Lot to Lose
  5. Hot Love
  6. Long Time Coming
  7. Need Your Love
  8. You Got It Going On
  9. I'm Waiting for the Man (Tom Petersson on lead vocals)
  10. The Flame
  11. I Want You to Want Me
  12. Dream Police
  13. Surrender
2017年8月 南 陽一郎

photo:Myamamoto

 


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