ノーベル文学賞授与式でのスウェーデン・アカデミー、ホレス・エングダール氏Award Ceremony Speech訳

2016.12.11


ノーベル文学賞授与式:プレゼンタースピーチ

プレゼンター:ホレス・エングダール氏

(スウェーデン・アカデミー、ノーベル文学賞委員会メンバー)

Award Ceremony Speech

今回シンガーソングライターがノーベル文学賞の受賞者になったからといってセンセーションが起こるべきではありません。はるか昔はすべての詩が歌われていたり、旋律をつけられて詠唱されていたのですから。詩人たちは熱狂的な表現者であり、吟遊詩人とも言われていました。「歌詞(lyrics)」という単語も「リラ(lyre、古代ギリシャの民族楽器)」が由来となっています。しかしボブ・ディランの功績は、ギリシャ人やプロヴァンス人の時代への回帰ではありませんでした。彼は代わりに全身全霊を20世紀のアメリカのポピュラー・ミュージックに捧げたのです。それらはプロテスト・ソング、カントリー、ブルース、初期のロック、ゴスペルといったメインストリーム・ミュージックであり、ラジオ局や蓄音機から流れてくるような、あらゆる人種の市井の人々のための音楽でした。

 

大衆がポップ風のフォーク・ソングを期待する中、1本のギターを抱えて佇む1人の若者がストリートと聖書の言葉を融合させて生み出したものは、世界の終わりを無用な再生のように感じさせることになります。

 

ボブ・ディランにノーベル賞を授与することによってその革命(的な功績)を認めることが大胆な決断に感じられたのは授与以前のみの話であり、今では既に当然のことに思われます。しかし彼は文学というシステムを混乱させたことにより賞を与えられるのでしょうか?そういう訳ではありません。もっとシンプルな理由があります。それは彼が永遠に続けているツアーの会場のステージ前で胸を躍らせながら、あの魅惑の声を待っている皆さんと同じ思いによるものです。

 

ボブ・ディランはその全作品により、詩というものの概念やその作用に関する私たちの考えを変えました。もし文学界の人々が不満の声を上げるのであれば、神様とは書くのではなく踊り歌うものであることを彼らに思い出させるべきでしょう。

Presentation Speech by Professor Horace Engdahl, Member of the Swedish Academy, Member of the Nobel Committee for Literature, 10 December 2016.



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