ボブ・ディラン・パリ公演ライヴレポートby菅野ヘッケル
ボブ・ディラン 2015年10月18日(日)
ル・ドーム・ド・パリ パリ、フランス
1. Things Have Changed
2. She Belongs To Me
3. Beyond Here Lies Nothin'
4. What'll I Do
5. Duquesne Whistle
6. Melancholy Mood
7. Pay In Blood
8. I'm A Fool To Want You
9. Tangled Up In Blue
(intermission)
10. High Water (For Charley Patton) 11. The Night We Called It A Day
12. Early Roman Kings
13. Why Try To Change Me Now
14. Spirit On The Water
15. Scarlet Town
16. All Or Nothing At All
17. Long And Wasted Years
18. Autumn Leaves
(encore)
19. Blowin' In The Wind
20. Love Sick
ディランがいなかったら、パリに来ることはなかっただろう。初めてのパリだ。10月1日にオスロからはじまったディランの2015年秋ヨーロッパツアーは全40公演の長丁場。その年のツアーの最終はニューヨークが恒例になっていたが、今年はヨーロッパで終わりになりそうなので、急遽、パリとロンドンの公演を見ることにした。
パリの初日が終わった。予想以上に感動した。熱心なファンのおかげで最近のコンサートのほとんどを、数日遅れでネットで聞くことができる時代になったので、実際に会場にいなくてもおおよその雰囲気はわかったつもりでいたが、生で体験するとまるでちがう。やっぱり、ボブは最高だ!
8時ちょうどにスチュ・キンボールがアコースティック・ギターで「フォギー・デュー」の一節を弾きながら暗がりのステージに登場した。続いてバンドのメンバー、最後にボブが登場し、ステージの照明が点灯する。日本公演よりも、やや明るい。それでも一般的なコンサートと比べたら、恐ろしく暗い照明だ。ボブは、ハンク・ウィリアムスが着たら似合うだろうと思うような、前身頃をターコイズ色のラメ刺繍で飾った派手なカントリースーツを着て、グレーのスペイン帽をかぶっている。1曲目から、体がよく動く。今夜はアニメーテッド・ボブだ。
セットリストを見て感じるように、ボブのオリジナル曲が少ないのは残念だが、シナトラの曲もCDで聞くよりも、もっと艶かしく感じる。ボブのヴォーカルのうまさに魅せられる。ロック世代のクルーナーだ。休憩をはさんだ2時間余りのステージは、完成されたパッケージショーだと思う。IBMワトソンが「ボブの歌は過ぎ行く時と、消えゆく愛がテーマだ」と分析しているが、そのことを念頭にコンサートのセットリストを解析すると興味深い結果が得られそうな気がするがどうだろう。ネット上には、ボブはひとつのストーリーを伝えようとしているのでなないか、という意見も掲載されている。
2015年版ボブのショー、もちろん主役、演出もボブ自身だ。聴衆に媚びるような妥協は一切ない。だから、固定セットリストで各地を回るのだ。客の反応はそれぞれかもしれないが、ぼくは感動した。(菅野ヘッケル)
photo by 菅野ヘッケル