B.ディラン2014年4月18日Zepp Nagoya:第13夜ライヴレポートby菅野ヘッケル

2014.04.21



ボブ・ディラン名古屋第二夜。4/18Zepp Nagoya公演、菅野ヘッケルさんからの日本公演通算第13夜ライヴレポートです!!ついに終盤、お次は本日4/19(土)13年ぶりの福岡公演へ!

【ボブ・ディラン、2014年4月18日Zepp Nagoya:ツアー13日目ライヴ・レポート】

ボブ・ディラン
2014年4月18日
Zepp Nagoya


いつものように7時きっかりに3連チャイムが鳴り、スチュがアコースティックギターを弾きながら左手から姿を現す。暗闇のなかでスチュがニール・ヤングの「オハイオ」を連想させるリフを奏でている間に、右手からバンドメンバーとボブも姿を見せる。ミュージシャンがそれぞれの位置に立ち、ボブがステージセンターのマイクスタンドの前に立つと、1曲目の「シングス・ハヴ・チェンジド」がスタートした。今夜も調子はよさそうだ。照明はあいかわらず信じられないほど暗い。ボブは優しい声で、ていねいに歌っている。今夜のボブの衣装は黒の上下だが、昨夜の派手な刺繍がほどこされた衣装とはちがう。今回の日本ツアーで初披露となるエレガントなステージスーツだ。上着の両サイドのポケットにレザーっぽく見える縁取りがある。ズボンにはもちろん白のストライプが入っている。頭にはいつもとおなじグレーのスペイン帽をかぶっている。バンドメンバーたちはグレーのスーツに身を包んでいる。アップシングを取り入れながら、ボブは右手でマイクスタンドをつかみ、左手を腰に当てる見慣れたポーズで歌い終わる。そのままその場に留まり、2曲目の「シー・ビロングズ・トゥ・ミー」に移る。65年の作品だが、力強い行進曲風にアレンジされているので、レコードとはまるでちがう。ボブが「シー・ドント・ルック・バック」と歌った時に、初めてあの曲だと気づくファンもいたかもしれない。スチュのオープンコードのように響くリズムギターにのせて、ボブは強弱をつけたヴォーカルで歌い、この歌でハーモニカも演奏する。

ボブがステージ右サイドのピアノに移動して、3曲目の「ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン」がはじまる。今夜もボブは座ってピアノを演奏する。マイナー調のロックナンバーのこの曲で、ジョージがブラシで叩きだす正確なビートにのせて、ボブはメロディアスなリフをピアノで生み出す。それにチャーリーがギターで繊細なリフを重ねる。ボブは気に入ったリフが生まれると、それを執拗に繰り返す傾向があるが、この曲でも後半はおなじリフを繰り返し何度も叩きだす。つづいてボブはステージセンターに移動して、「ホワット・グッド・アム・アイ?」を歌う。ソフトでテンダーなヴォーカルを聞いているとボブの愛に包まれているような気分になる。無関心だったり、優しさが足らなかったり、悲しませたりするのに「ぼくのどこがいいのか?」と訊かれても、すべてと答えるだけだ

昨夜は5曲目にレアな「ワーキングマンズ・ブルース#2」を歌ったが、今夜はいつものセットリストに戻って「ウェイティング・フォー・ユー」だ。ピアノを演奏しながら、説得力あふれるヴォーカルを聞かせるボブは、強調する箇所を濁声で歌う。いったいボブは何種類の声を使い分けられるのだろうか? 優雅なワルツにアレンジされたこの歌では、ボブがピアノでリードを取り、チャーリーがそれにギターで合わせる。つづく「デュケーン・ホイッスル」は、オールドタイミーな、陽気なダンスナンバーだ。トニーのスタンドアップベースが弾けるリズムを叩きだし、ボブはメロディを崩して歌う。途中で繰り広げられるジャム演奏に観客から拍手がわき起こる。前回の来日公演のおなじような調子の「サマー・デイズ」では、トニーがスタンドアップベースをくるりと回転させたりしたものだが、今回はそうした派手な動きはない。

ボブがステージセンターに移動して「ペイ・イン・ブラック」がはじまる。この曲は回を重ねるごとに強く心に突き刺さる。この歌を聞いてぼくは「戦争の親玉」を連想する。怒りはだれに向けられているのだろうか? 次はボブの代表曲、ライヴで1000回以上歌っている「ブルーにこんがらがって」。短いハーモニカのイントロから入って、ていねいに、全体的にややソフトに歌われるが、「一つ一つのことばが真実に響く/きみのためにぼくの魂が書いたことば」のバースを力強く歌ったあと、すごいハーモニカプレーを聞かせる。最後はピアノに移動し、ミニジャム演奏で終わった。1部を締めくくる「ラヴ・シック」では、スチュがエレクトリックギターで鋭いリズムを刻み続け、チャーリーがメローでスプーキーなリフを重ねる。ステージセンターのマイクスタンドの前に立ったボブは自由なヴォーカルで男の苦しみを、手でジェスチャーを交えながら歌う。最近のヒット曲のひとつなので、観客の歓声は一段と大きくなる。歌い終えたボブは「アリガトウ。数分いなくなるけど、待っててくれ。戻ってくるよ」と言い残してステージを去っていった。

休憩時間に耳にする観客の声は、いつもどこでもおなじだ。要約すると「知っている歌は少なかったけど、すごいパフォーマンスだった。感動した」ということになる。たしかに熱狂的なファン以外には、今回のセットリストはあまり知られていない曲が多く並べられているかもしれない。しかしライヴパフォーマンスは、新しい未知の魅力を感じる場とも言える。思い出を確認する場ではない。ファンの思い出を蘇らせようと、レコードヴァージョンをライヴで再現し、ノスタルジーにすがるアーティストも大勢いる。ボブはちがう。ボブはノスタルジーとは無縁だ。観客に媚を売る気もない。ボブは、今現在の自分を歌で表現し、はたして観客に伝わるかどうか、受け入れられるかどうかを確認したいと思っているのではないか、とぼくは勝手に想像している。今夜の観客を観察する限り、ボブは成功したと思う。しかもボブとは何十歳も年の離れた若い世代までも感動させたと思う。72歳のボブを見て、格好いいと話す若い女性の姿も大勢見かける。

2部も、スチュのギターリフではじまった。今夜のスチュはいつもとちがうリフをエレクトリックギターで弾いている。ステージに全員がそろうと「ハイ・ウォーター」がはじまった。ボブのヴォーカルに迫力があふれている。強烈なヴォーカルデリバリーだ。右手でマイクスタンドをつかみ、体をひねってスチュを見ながらリズムに合わせて体を動かす。「ハイ・ウォーター・エーーーヴリウェア」とあちこちに迫りくる洪水の危機が切迫感をもって伝わってくる。ドニーがすばらしいバンジョーを聞かせたあと、ストップ&リスタートを取り入れて終了した。つぎはハーモニカのイントロで「運命のひとひねり」がはじまる。この歌でも、ことばが明瞭に、ニュアンスを込めて優しく歌われる。最後はハーモニカの余韻を残してフェードアウトで終わった。

ピアノに移動して「アーリー・ローマン・キング」がはじまる。ボブは若さを感じさせるパワフルなヴォーカルを聞かせる。座ってピアノを弾くボブは、昨夜は1フレーズごとにリズムに合わせて左足を大きく上下させていたが、今夜はややおとなしい動きだ。今夜はテンダーナイトだ。つぎはボブがステージセンターに移動し、ハーモニカの短いイントロで「フォゲットフル・ハート」がはじまる。ボブは、ニュアンスを込めて、ソフトに、説得するように歌う。年老いた男の物悲しさ、悲哀、哀れみが、まるで魔術をかけたかのように観客を引きつける。感動で覚醒する。すごいな

次はピアノに移動し、一転して軽快な「スピリット・オン・ザ・ウォーター」がはじまる。スチュがギターで正確なリズムを刻み、チャーリーがノリノリのリフを加える。ボブはピアノで得意の「ドレミファソラシド」と音階をなぞるリフを繰り返しながら、ストーリーを展開させていく。軽妙なジャズナンバーのように聞こえる。ボブがステージセンターに移動して「スカーレット・タウン」がはじまる。今夜のスカーレット・タウンは、不安さと不気味さが強く伝わる。チャーリーの繊細なギターリフが心に響く。スカーレット・タウンは天国ではなく、終末を迎えた世界なのだろうか。この歌を聞いていると、ボブはストーリーテラーの天才だと再認識させられる。はたしてボブはどこに連れて行ってくれるのだろう

「スーン・アフター・ミッドナイト」は何度聞いても甘い調べが心地いいポップスのように聞こえる。ドニーのペダルスティールと、チャーリーの低音で奏でるギターの音色が甘さを倍増させる。ただし歌っている内容はちがう。甘さではなく、苦しみを歌っている。ボブがステージセンターに移動し、2部を締めくくる「ロング・アンド・ウェイステッド・イヤーズ」がはじまる。ここで今夜初めてステージの照明が明るくなった。やや動きのすくなかったボブも、この歌では手でジェスチャーを交えながら、吠えるように、ある時は吐き出すように、ことばを放つ。観客の興奮もピークに近づく。最後は決めポーズで終わった。今夜のボブは、歌い終わった後、お辞儀を2回したように見えた

アンコール1曲目はもちろん「見張り塔からずっと」だ。帽子を脱いだボブは座ってピアノを弾きながら、ヴォーカルに合わせたリフを叩きだす。観客の反応は頂点に達した。昨夜のボブは、あまりに自由にピアノを演奏したために、やや崩れかけた箇所があった。今夜はおなじことが起きないように、トニーがボブの近くまで出てきて、見守っているようだ。それが功を奏して、すばらしい仕上がりになった。ボブも、途中でいままでにない歌い方も披露した。ドラムス以外がすべて演奏をやめて、ボブがフリーフォームでピアノを弾く箇所も楽しめた。今夜の「見張り塔からずっと」は、すべてがボブの思い通りに決まった感じがするボブも最後にドヤ顔を決めたように見えた。そして軽く3回お辞儀をしたようにも見えた。きっと満足したのだろう。最後の「風に吹かれて」をボブはかなり大胆に崩して歌った。ボブがピアノで、チャーリーがギターで、ドニーがヴァイオリンで、美しいリフを生み出す。本来なら観客もいっしょに歌いたいと思う曲かもしれないが、それはさせないと言わんばかりに、アレンジを変えている。歌の最後、ボブはハーモニカを吹きながらステージセンターに出てきて、すべてが終わった。あいさつに代えて整列したボブとバンドメンバーに、今夜も花束が送られる。ボブは両手に持った2個の花束を胸に当て、お礼を言うように軽くお辞儀をして去っていった。(菅野ヘッケル)



Bob Dylan
April 18, 2014
Zepp Nagoya


Act 1
1. Things Have Changed (Bob center stage)
2. She Belongs To Me (Bob center stage with harp)
3. Beyond Here Lies Nothin' (Bob on grand piano)
4. What Good Am I? (bob center stage)
5. Waiting For You (Bob on grand piano)
6. Duquesne Whistle (Bob on grand piano)
7. Pay In Blood (Bob center stage)
8. Tangled Up In Blue (Bob center stage then on grand piano)
9. Love Sick (Bob on center stage)

(Intermission)

Act 2
10. High Water (For Charley Patton) (Bob center stage)
11. Simple Twist Of Fate(Bob center stage with harp)
12. Early Roman Kings (Bob on grand piano)
13. Forgetful Heart (Bob center stage with harp)
14. Spirit On The Water (Bob on grand piano)
15. Scarlet Town (Bob center stage)
16. Soon After Midnight (Bob on grand piano)
17. Long And Wasted Years (Bob center stage)

(encore)
18. All Along The Watchtower (Bob on grand piano)
19. Blowin' In The Wind (Bob on grand piano with harp then center stage)

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●最新オリジナルアルバム『テンペスト』
(全9曲中6曲を本ツアーで演奏!)
http://www.sonymusicshop.jp/m/item/itemShw.php?site=S&ima=4001&cd=SICP000003663

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