ボブ・ディラン 2014年4月3日 Zepp DiverCity第3夜ライヴレポート by菅野ヘッケル
2014.04.04
INFO
ボブ・ディラン2014年4月3日Zepp DiverCity第3夜ライヴレポートby菅野ヘッケル
見逃すな、この奇跡。世界がうらやむ日本限定特別公演ZEPPツアー!
東京3日目4/3、雨のZEPP DiverCity。セットリストは2日目と同じ!今日は初日2日目よりももっといい!昨日の休みはさんでディラン様さらに絶好調!
菅野ヘッケルさんからの第3夜ライヴレポートです!!
【ボブ・ディラン、2014年4月3日Zepp DiverCity3日目ライヴ・レポート】
東京で連続9日間という長丁場の3日目、休養日を1日取ったボブになにか変化があるかな? 「すごい、最高!」の一色にそまった2日間の観客の反応に、きっとボブも満足しているだろう、とぼくは勝手に想像した。緊張感が和らぎ、ややリラックスしてきたのか、7分遅れて場内が暗くなり、スチュの弾くアコースティックギターのリフが流れ、バンドメンバーが現れる。最後にボブが登場。バンドメンバーたちはダークグレーのスーツ、ボブは一見すると2日目とおなじように見えるが、ポケットや着丈などディテールがちがう白っぽい衣装に白いスペイン帽をかぶっている。靴は白黒のコンビのカウボーイブーツだ。
オープニングは「シングス・ハヴ・チェンジド」。どうやら昨年から取り入れた固定セットリストで日本ツアーもおこなうようだ。昨年は、ファナティックなファンは、セットリストが毎回ちがうことに喜びを感じ、どれだけめずらしい歌を直接聞けたかを自慢するようになっていたので、固定セットリストに不満の声をあげたりもしたが、今回の日本ツアーではいまのところ不満の声は聞こえてこない。固定セットリストで毎回おなじ曲を歌うといっても、ボブの場合は毎晩歌い方が変る。バンドもボブの気分に合わせて変るからだ。ほかの多くのアーティストのように、あらかじめしゃべりや動きまでを決めておき、それを毎回繰り返すわけではない。
3日目のボブは、オープニングの「シングス・ハヴ・チェンジド」からノリがいい。ヴォーカルにパワーが増し、特徴的な押しつぶされたヒキガエルのような声をもときおり混ぜ込む。そして歌いながら、何度も決めポーズを取る。「いいね!」ぼくは心のなか思わず叫んだ。2曲目「シー・ビロングズ・トゥ・ミー」はビートを効かせた行進曲のようだ。もちろんこの歌でハーモニカも演奏された。観客は毎回ボブがハーモニカをひと吹きしただけで大歓声をあげるが、今夜のハーモニカは格別、大歓声に値する。3曲目「ビヨンド・ヒア・ライズ・ナッシン」ではボブがピアノでリードを取り、しつこいぐらいにおなじリフを繰り返す。この時あらためて感じたが、PAも会場の音響環境もすばらしい。2階席で聞いていても、各楽器の音がバランスよく聞こえるし、なによりもボブのヴォーカルが明瞭に伝わってくる。アメリカで何度か見たこともあるが、生で聞くよりも後日入手したテープで聞いた方がいいサウンドだったといったケースもあったほどなので、今回の日本ツアーはサウンド面でも最高だ。「ホワット・グッド・アム・アイ?」ではボブの低音に艶と伸びがあるのに気づいた。一部のファンは、声の音域が狭くなったので、アップシングを多用するようになったと指摘したりしているが、そんなことはない。出そうと思えば、ボブはいまでも艶ややかな低音も、伸びのある高音も、鼻にかかった、あるいはしわがれた特徴的なヴォーカルも、何だって出せるのだ。すべてその瞬間の気分でコントロールしているのだろう。「デュケーン・ホイッスル」はまさにエンジン音を轟かせて突っ走る列車のような雰囲気をみごとにかもしだしている。「ウェイティング・フォー・ユー」ではボブとチャーリーが聞き応えのあるバトルを交わす。代表曲「ブルーにこんがらがって」はまるで陽気なボブのように、かなり派手なジェスチャーを交え、ピアノに移動してからは執拗に同じリフをくりかえす。これもボブのコンサートの醍醐味のひとつだ。「ペイ・イン・ブラッド」でも気分よさそうにジェスチャーを混ぜ、腰に手を当てて微妙なダンスを見せてくれた。1部の締めくくりは「ラヴ・シック」。不気味さが増幅され、「恋のやまいを患っている」と告白するボブは、年をとっても男の色気を発散させる。チャーリーもたまったものを吐き出すようにリードを演奏する。「サンキュー。15分待っててくれ。戻ってくるから」ボブはそう言い残して、ステージから消えた。
(ブレーク)
休憩時間にすぐ近くにいた中山ラビさんと話をする機会があった。彼女は1978年の初来日以来、来日するたびにかならず見ているというファンでもある。ディランの作品をベースに日本語の歌もつくったりしていることがきっかけで、ぼくはラビさんのファンになった。「すごいね。いいね。前回(2010年)よりもいいわ」。そうボブは回を重ねるごとに何かしら新しい魅力を与えてくれるのだ。だから、何回も見たくなるし、見逃すことはできない。コンサートが終わった後で、「フォーゲットフル・ハート」に特に感動したとも語ってくれた。中山ラビさんも現役で歌と演劇の世界で活動を続けている。フォーエヴァー・ヤング、ラビ!。
スチュが弾くエレクトリックギターリフが流れ2部がはじまる。まずドニーのバンジョーをフィーチャーした「ハイ・ウォーター」。つづいてハーモニカのイントロではじまる「運命のひとひねり」。不朽の名盤『血の轍』収録曲だけあって、観客の歓声も一段と高まる。今回の日本ツアーは、2000年代以降、とくに最新作『テンペスト』収録曲が中心となっている。19曲のセットリストのなかで、古い時代の作品は、60年代の「シ・ビロングズ・トゥ・ミー」「見張り塔からずっと」「風に吹かれて」、70年代の「ブルーにこんがらがって」「運命のひとひねり」、80年代の「ホワット・グッド・アム・アイ?」、90年代の「ラヴ・シック」だけだ。2部は2000年以降の歌が続く。「アーリー・ローマン・キング」では、ボブのピアノとチャーリーのギターの掛け合いがブルースの醍醐味を醸し出す。最近のボブが得意とするスタイルだ。シャークスキン・スーツではないが、バンドメンバーの黒いスーツがギャング団のようにも見える。ヘヴィーに飛び跳ねるブルースから一転、ハーモニカのイントロで「フォーゲットフル・ハート」がはじまる。アップシングを取り入れながら、優しさ、悲しさ、いらだち、裏切り、許し、ののしりなど、男のさまざまな葛藤や心情がこの切ないラヴソングにこめられる。ていねいに演奏されるハーモニカをふくめ、最高だ!
つづく「スピリット・オン・ザ・ウォーター」は軽妙なジャズの雰囲気。ボブが「歳を取り過ぎてるってあなたは思っているんだね、盛りの時を過ぎてしまったと考えているんだね」と問いかける。ぼくたちは「ノー」と答える。だから「とんでもなくすばらしい時をいっしょに過ごせる」んだ。ここでハイライトのひとつ「スカーレット・タウン」が登場する。ボブが魅力あふれる、なつかしいやや鼻にかかった低音を聞かせてくれた。3番と4番の歌詞が入れ替わっていたように聞こえたが、ぼくの記憶ちがいかな。あとで調べてみよう。「スーン・アフター・ミッドナイト」はステージ背景の黒幕に星空模様が投影され、ペダルスティールがストリングスのような調べを奏で、ボブも甘いポップスのようにやさしく歌う。そして最後の「ロング・アンド・ウェイステッド・イヤーズ」。3コード、9小節の短いコード進行に乗せてボブは歌うというよりも、叫ぶようにことばを吐き出すようにくりかえす。ボブの口から「シェイキンアップ・ベイビー、ツイスト・アンド・シャウト」が吐き出されるなんて、想像しなかっただろう。歌い終わると、ステージの照明が落とされ、ボブとバンドメンバーが消えた。昨年までは、ここで一度横一列に並んで、2部の終了を観客に伝えていたが、日本ツアーではそれもしなくなった。
アンコールを求める拍手や声援がしばら続いたあと、ボブとバンドメンバーがステージに戻り、定番の「見張り塔からずっと」、そして最後は「風に吹かれて」でコンサートは終了した。アンコールの時、ボブのヴォーカルがすこし弱く感じたのは、ぼくだけだっただろうか。疲れたのか? いや、心配することはない。最後はステージ前方に横一列に並んで、ボブだけが観客の反応を確かめるように視線を送る。観客のなかで際立つ反応を送る一団に対して、うなずいて応える。ことばはない。ボブの精一杯のサービスだろう。ほかのバンドメンバーは不動で立ち尽くすだけだ。東京9公演のうちすでに3公演が終わった。残りの公演はどうなのか? 楽しみだけが増幅していく。(菅野ヘッケル)
ボブ・ディラン日本公演4月3日Zepp DiverCityセット リスト
1.Things Have Changed シン グス・ハヴ・チェンジド
(『Wonder Boys"(OST)』 2001/『DYLAN(2007)』他)
2.She Belongs to Me シー・ ビロングズ・トゥ・ミー
(『ブリンギング・イット・ オール・バック・ホーム/Bringing It All Back Home』 1965)
3.Beyond Here Lies Nothin' ビヨンド・ヒア・ライズ・ ナッシング
(『トゥゲザー・ スルー・ライフ/Together Through Life』2009)
4.What Good Am I? ホワッ ト・グッド・アム・アイ?
(『オー・マーシー/Oh Mercy』1989)
5.Waiting for you
(『ヤァヤァ・シスターズの聖 なる秘密 Divine Secrets of the Ya-Ya Sisterhood)
6.Duquesne Whistle デューケ イン・ホイッスル
(『テンペスト/Tempest』 2012)
7.Pay in Blood ペイ・イン・ ブラッド
(『テンペスト/Tempest』 2012)
8.Tangled Up in Blue ブルー にこんがらがって
(『血の轍/Blood on the Tracks』1975)
9.Love Sick ラヴ・シック
(『タイム・アウト・オブ・ マインド/Time Out of Mind』 1997)
休憩(約20分)
10.High Water (For Charley Patton) ハイ・ウォーター (フォー・チャーリー・パッ トン) (『ラヴ・アンド・セフト/Love and Theft』2001)
11.Simple Twist of Fate 運命 のひとひねり
(『血の轍/Blood on the Tracks』1975)
12.Early Roman Kings アー リー・ローマン・キングズ
(『テンペスト/Tempest』 2012)
13.Forgetful Heart フォゲッ トフル・ハート
(『トゥゲザー・スルー・ラ イフ/Together Through Life』2009)
14.Spirit on the Water スピ リット・オン・ザ・ウォー ター
(『モダン・タイムス/Modern Times』2006)
15.Scarlet Town スカーレッ ト・タウン
(『テンペスト/Tempest』 2012)
16.Soon after Midnight スー ン・アフター・ミッドナイト
(『テンペスト/Tempest』 2012)
17.Long and Wasted Years ロ ング・アンド・ウェイステッ ド・イヤーズ
(『テンペスト/Tempest』 2012)
Encore:
18.All Along the Watchtower 見張塔からずっと
(『ジョン・ウェズリー・ ハーディング/John Wesley Harding』1967年)
19.Blowin in the wind/風に吹 かれて
(『フリーホイーリン・ボ ブ・ディラン)
ボブ・ディラン (Bob Dylan) :Vocal, Harmonica,Piano
トニー・ガーニエ (Tony Garnier) :Bass
スチュ・キンボール (Stu Kimball) :Guitar
ドニー・ヘロン (Donnie Herron) :Pedal Steel,Banjo, Violin, Mandolin
ジョージ・リセリ (George Recile) :Drums
チャーリー・セクストン (Charlie Sexton) :Lead Guitar
【ディラン祭り!】
■ボブ・ディラン・スペシャル・サイト:https://www.sonymusic.co.jp/artist/BobDylan/
■来日期間限定ソニー・ミュージックLegacy Recordings JPの Facebookページが【ディラン祭!】一色に! :https://www.facebook.com/legacyjp
来日期間中限定:追っかけレポートを、Facebookページで実施。セットリストやライヴ情報他、小ネタも含めて、様々なディラン情報をタイムリーにアップ予定。今後ボブ・ディランのレアなグッズのプレゼント・キャンペーンの実施も予定。
【ボブ・ディラン来日公演】
東京
3/31(月) Zepp DiverCity
4/1(火) Zepp DiverCity
4/3(木) Zepp DiverCity
4/4(金) Zepp DiverCity
4/5(土) Zepp DiverCity
4/7(月) Zepp DiverCity
4/8(火) Zepp DiverCity
4/9(水) Zepp DiverCity
4/10(木) Zepp DiverCity
札幌
4/13(日) Zepp Sapporo
4/14(月) Zepp Sapporo
名古屋
4/17(木) Zepp Nagoya
4/18(金) Zepp Nagoya
福岡
4/19(土) Zepp Fukuoka
大阪
4/21(月) Zepp Namba
4/22(火) Zepp Namba
4/23(水) Zepp Namba
■INFO:ウドー音楽事務所 03-3402-5999 udo.jp