アリス・イン・チェインズ／Alice In Chains
1987年、グランジ爆発前夜のシアトルでギタリスト兼ボーカルのジェリー・カントレルとドラマーのショーン・キニーを中心に、ボーカルのレイン・ステイリーとベースのマイク・スターが集まって結成されたアリス・イン・チェインズは、1990年代突入と同時にシアトルで爆発し、全米そして世界中に広がったグランジ・ロック・ムーヴメントの代表的バンドの一つ。他のグランジ・バンドに比してよりメタル寄りのハードでソリッドなサウンドと、ジェリーとレインのツイン・ボーカル（2006年以降はジェリーとウィリアム・デュヴァル）によるハーモニーを独得の持ち味とするそのサウンドで、パール・ジャム、サウンドガーデンそしてニルヴァーナといった、グランジを牽引した同じシアトル出身のバンドたちと一線を画す大きな人気を誇った。1993年には初来日、東京中野サンプラザ他大阪・名古屋で絶頂期のライブを披露して日本での人気も高まった。
1994年にはEP『アナザー・サイド・オブ・アリス（Jars Of Flies）』が全米アルバム・チャートで1位に初登場するなど、バンドとしての絶頂を極めていたが、当初より薬物依存が大きなバンドの課題だったアリス・イン・チェインズは、薬物常習のためボーカルのレインのパフォーマンスが困難となったことで同年活動休止を余儀なくされた。この間、1995年には3作目のアルバム『アリス・イン・チェインズ（Alice In Chains）』が2作目の全米アルバムチャート1位を記録、1996年にはMTVのアンプラグド・シリーズでのライブを収録した『アンプラグド（MTV Unplugged）』も全米3位を記録するなど、なおもその人気は高かったがオリジナル・メンバーで再びツアーに出ることはなかった。
2002年にはレインが薬物過剰摂取（OD）で亡くなり、バンドは事実上終焉したかと思われたが、2006年に新ボーカリスト、ウィリアム・デュヴァルを迎えて再結成。2009年には14年ぶりの新作となった『ブラック・トゥ・ブルー（Black Gives Way To Blue）』をリリース、亡きレインに捧げたタイトル曲（ピアノにレインが少年の頃ファンだったというエルトン・ジョンが参加）を含むこのアルバムは見事全米5位を記録し、新生アリス・イン・チェインズの復活を印象づけた。また1993年に脱退したベースのマイク・スターが2011年に処方薬過剰摂取で他界するなど、暗いニュースが届く中、その後も現在に至るまで、2013年リリースの5作目『ザ・デヴィル・プット・ダイナソーズ・ヒア（The Devil Put Dinosaurs Here）』、そして最新作『レーニア・フォグ（Rainier Fog）』(2018)とゆっくりとしたペースではあるが、力強いサウンドに満ちた作品を英米チャートの上位に送り込み、後者はグラミー賞最優秀ロック・アルバム部門にノミネートされるなどシーンからの評価も依然高く、シアトル・ロック・シーンの屋台骨としての活動を未だに継続している。
最近では2018年に「レーニア・フォグ」を題材にしたSF映画『Black Antenna』が話題になったり、2020年にはシアトルのポップ・カルチャー博物館から設立者特別賞を授与され、サウンドガーデンやパール・ジャム、コーンやメタリカ、ハートのアン・ウィルソンやスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンなど、彼らを敬愛するミュージシャンたちによるベネフィット・コンサートがストリーミングで配信されるなど、コロナ禍の昨今でもしっかりと存在感を示しているアリス・イン・チェインズ、今後の更なる活動が期待される。
2022年時点のバンド・メンバーは下記のとおり。
＊ ジェリー・カントレル（1987-現在）（リードボーカル、リードギター）
＊ ウィリアム・デュヴァル（2006-現在）（リードボーカル、リズムギター）
＊ マイク・アイネス（1993-現在）（ベース）
＊ ショーン・キニー（1987-現在）（ドラムス）
ディスコグラフィ（カッコ内は原盤レーベル、- 以降は英米のチャート実績）
１，アルバム
1990年 『We Die Young』（EP）（コロンビア）
1990年 『フェイスリフト（Facelift）』(コロンビア) – US 42位（2xプラチナ）
1992年 『サップ（Sap）』（EP）（コロンビア）- US 134位（2020年チャートイン、ゴールド）
1992年 『ダート（Dirt）』(コロンビア) – US 6位（4x プラチナ）、UK 42位 （ゴールド）
1994年 『アナザー・サイド・オブ・アリス（Jar Of Flies）』（EP）（コロンビア）- US 1位（1週、3x プラチナ）、UK 4位（シルバー）
1995年 『アリス・イン・チェインズ（Alice In Chains）』（コロンビア）- US 1位（1週、2xプラチナ）、UK 37位（シルバー）
1996年 『アンプラグド（MTV Unplugged）』（ライブ盤）（コロンビア）- US 3位（プラチナ）、UK 20位
1999年 『ナッシング・セーフ〜ベスト〜（Nothing Safe: Best Of The Box）』（ベスト盤）（コロンビア）- US 20位（プラチナ）
『Music Bank』（ベスト盤）（コロンビア）- US 123位
2000年 『LIVE（Live）』（ライブ盤）（コロンビア）- US 142位
2001年 『グレイテスト。ヒッツ（Greatest Hits）』（ベスト盤）（コロンビア）- US 112位（ゴールド）
2006年 『エッセンシャル・アリス・イン・チェインズ（The Essential Alice In Chains）』（ベスト盤）(コロンビア) – US 139位
2009年 『ブラック・トゥ・ブルー（Black Gives Way To Blue）』（ヴァージン／EMI）- US 5位（ゴールド）、UK 19位
2013年 『ザ・デヴィル・プット・ダイナソーズ・ヒア（The Devil Put Dinosaurs Here）』（キャピトル）- US 2位、UK 22位
2016年 『Live Facelift』（ライブ盤）(ソニー・レガシー)
2018年 『レーニア・フォグ（Rainier Fog）』（BMG）- US 12位、UK 9位
２，シングル（英米チャートインしたもののみ）
1991年 「Man In The Box」- USロック 18位
1992年 「Sea Of Sorrow」- USロック 27位
「Would?」- USロック31位、UK 19位
「Them Bones」- USロック24位、UK 26位
「Angry Chair」- USロック34位、UK 33位
1993年 「Rooster」- USロック 7位
「Down In A Hole」- USロック 10位、UK 36位
「What The Hell Have I」- USロック 19位（映画『ラスト・アクション・ヒーロー』サウンドトラック盤より）
1994年 「No Excuses」- USロック 1位
「I Stay Away」- USロック 10位
「Don’t Follow」- USロック 25位
「Got Me Wrong」- USロック 7位
1995年 「Grind」- USロック 7位、UK 23位
1996年 「Heaven Beside You」- US ロック3位、UK 35位
「Again」- US ロック8位
「Over Now」- US ロック4位
「Would? (Unplugged)」- US ロック19位
1999年 「Get Born Again」- US ロック4位
「Fear The Voices」- US ロック11位
2000年 「Man In The Box (live)」- US ロック39位
2009年 「A Looking In View」- USロック12位
「Check My Brain」- US 92位、USロック 1位
「Your Decision」- USロック1位
2010年 「Lesson Learned」- USロック4位
2012年 「Hollow」- USロック1位
2013年 「Stone」- USロック1位
「Voices」- USロック3位
2018年 「The One You Know」- USロック9位
「Never Fade」- USロック10位
2019年 「Ranier Fog」- USロック20位
* USでは、アルバム・シングル共にゴールド＝50万枚、プラチナ＝100万枚（２ｘ＝200万枚）の売上によりRIAA（アメリカレコード協会）が認定。UKでは、アルバムはゴールド＝10万枚、プラチナ＝30万枚、シングルはシルバー＝20万枚、ゴールド＝40万枚、プラチナ＝60万枚の売上によりBPI（英国レコード産業協会）が認定。いずれも2022年