1970年1月に発売されたサイモン&ガーファンクルの5枚目になる作品で、最後のスタジオ・アルバム。この頃のアメリカ社会は、長期化する戦争や公民権運動で揺れ動き徐々に不安が覆ってゆくようになり、そのような空気が漂う中、雄大で美しい希望のメッセージを内包するこの作品は、その雄弁さゆえ幅広く受け入れられた。しかし同作は、高校在学中の「トム&ジェリー」時代(1957年頃)以来レコーディング活動をともにしてきたこのデュオの終焉(少なくともその後数年間にわたる)を告げる作品ともなってしまった。サイモン&ガーファンクルは流行から外れてしまったが、「明日に架ける橋」はその後1960年から70年にかけて4つのヒット・シングルを輩出することになる。(「ボクサー」(全米最高位7位)『明日に架ける橋』(全米最高位1位)、「いとしのセシリア」(全米最高位4位)、「コンドルは飛んで行く」(全米最高位18位))
1970年1月26日に発売されたアルバム「明日に架ける橋」は、「ビルボード」3月7日号で1位を獲得。その後10週連続1位を記録し、85週間チャート・インし、RIAAからプラチナ・ディスク8枚分の売り上げを認定された。同作とタイトル曲は3月7日から5週間にわたり同時に1位を記録しているが、これは後にも先にも非常に珍しい快挙である。
イギリスではアルバムとタイトル曲が2月21日の同日発売となり、その後同時に1位を獲得した。アルバムは41週間1位を記録し、史上最長1位獲得ランキングのトップ5入りを果たしたほか、全英チャートでは通算307週間チャート・インを記録し、史上最長チャート・イン週数ランキングのトップ10に数えられている。1977年のブリット・アワードでは、「明日に架ける橋」が過去25年間の最優秀インターナショナル・アルバム賞に選ばれている。
*シングル(楽曲)として5部門(レコード・オブ・ザ・イヤー、ソング・オブ・ザ・イヤー、最優秀コンテンポラリー楽曲賞、最優秀ヴォーカル入り編曲賞、最優秀エンジニア作品賞)
*アルバムで1部門(アルバム・オブ・ザ・イヤー獲得)
傑作『明日に架ける橋』に続くアルバムとして期待されたライヴ盤(2009年来日に合わせてリリース)。録音されたのは、『明日に架ける橋』録音直後に行われたラストツアーで、40年前の10月と11月に廻った6都市——デトロイト、オハイオ州トレド、イリノイ州カーボンデール、セント・ルイス、ロング・ビーチ、ニューヨーク——でのステージから選曲。厳選された17曲の中には、レコーディングを終了したばかりの「明日に架ける橋」が含まれており、この曲を二人が歌い始めても客席からは拍手が起こらないという珍しい場面も収録。彼等の代表曲、ヒット曲がアコースティックもしくはエレクトリック・セットで演奏されており、彼等の全盛期に相応しい内容に仕上がっている。
本人達を含むキープレイヤーのインタビューとレア映像で綴られる。40年前の名盤を紐解いていきます。
プラス、1969年11月30日アメリカCBS TVで放送されたTVスペシャル番組「SONG OF AMERICA」を収録。かつて日本ではNHKで「サイモンとガーファンクル アメリカを歌う」というタイトルで放映されたこともある、秀逸なライヴ&ドキュメンタリー番組。
DVDには「ソングズ・オブ・アメリカ」以外にも新録ドキュメンタリー「ザ・ハーモニー・ゲーム:ザ・メイキング・オブ『明日に架ける橋』」が収録される。この洞察に優れた映像は、サイモン&ガーファンクルの最後のスタジオ・アルバム「明日に架ける橋」の舞台裏にスポットを当てている。同作はインスピレーション、革新、別離の伝説を数々残した、ロックンロールの神話に覆い隠された作品である。ポール・サイモンとアート・ガーファンクルは自分たちの言葉でその軌跡を語り、同作が40年間与え続けている影響を振り返っている。また、同ドキュメンタリーには、ロイ・ヘイリー(共同プロデューサー/エンジニア)、ハル・ブレイン(ドラムス)、ジョー・オズボーン(ベース)、ジミー・ハスケル(アレンジャー)、モート・ルイス(マネージャー)、チャールズ・グローディン(ドキュメンタリー「ソングズ・オブ・アメリカ」監督)という当時このデュオのコラボレーターを務めた者たちや、未発表の映像・写真・記念品などもフィーチャーされている。
などなど初めて聴く話ばかり(日本版DVDはしっかり字幕入ってます!)
「ソングズ・オブ・アメリカ」(約60分)は1969年11月30日にのみCBS系で放映された美しい映像の記録である。この特番にはサイモン&ガーファンクルのステージ、レコーディング・スタジオ、ツアー中の映像がフィーチャーされている。インタビューやパフォーマンスの映像は当時のニュース映像と絡めて用いられており、中には当時のスポンサー、ベル・アトランティック(AT&Tの子会社)から最終的に放映を拒否された問題の映像も。当時の映像としてはマーティン・ルーサー・キング、ロバート・ケネディ、活動家のセサール・チャベス、ワシントンへの「貧者の行進」などが収録されている。2人のアーティストが、分裂してゆく社会の中で自らの役割を見いだすために奮闘する姿が描かれた傑作である。
当時のアメリカの社会的背景、60年代末期アメリカの象徴的なイメージを織り込んだ映像と”アメリカ””明日に架ける橋””スカボロー・フェア”などの名曲を合わせてビデオクリップのように作ったものや、ツアーリハーサル、インタビュー、そして”ミセス・ロビンソン””ボクサー””サウンド・オブ・サイレンス”などの貴重なライヴ映像も収録。『オールド・フレンズ』DVDに一部がダイジェスト収録されたことがありましたが、その全貌が初めて正式DVD化となります。未発表曲"Cuba Si - Nixon No"のレコーディング・シーンや"明日に架ける橋"のリハシーンなどS&G絶頂期の貴重な映像の数々がここに。
1969年。アメリカの大統領は、民主党のリンドン・ジョンソンから、共和党のリチャード・ニクソンに交代。混迷化するベトナム戦争、社会的不安を背景にして全編通じて漂う反戦のメッセージを感じられます。
* "Cuba Si - Nixon No"について:
アルバム「明日に架ける橋」に収録されなかった幻の曲で、キューバ危機以降、険悪な関係が続いていたキューバとアメリカを風刺した未発表曲。タイトルは「キューバは Yes ! ニクソンは No ! 」「キューバ万歳!ニクソン反対!」という意味。あまりに政治色が強いためアートが嫌がった。そのいきさつは以下のハーモニー・ゲームでも語られている
* 日本でもNHKで「サイモン&ガーファンクル・アメリカを歌う」というタイトルで放映された。
(その時の想い出を柴門ふみさんが今回特別寄稿に寄せています)