インフォメーション、ダウンロード、着うた(R)などはコチラ

フィリー・グルーヴィー PHILLY GROOVY

フィリー・メロウ PHILLY MELLOW

テディ・ペンダーグラス TEDDY PENDERGRASS

フィリー・メロウ PHILLY MELLOW

フィリー・メロウ PHILLY MELLOW

収録曲

01. ラヴ・ニード・アンド・ウォント・ユー / パティ・ラベル

LOVE, NEED AND WANT YOU / PATTI LABELLE [1983]

>> 楽曲解説を見る

フィリーのNo.1レディ・ソウルがPIRから放った珠玉のラヴ・バラード。83年のアルバム『I'm In Love Again』からは同タイプのバラード“If Only You Knew”の方がヒットしたが、現在はネリーfeat.ケリー・ローランド“Dilemma”(02年)にメロディが引用されたこちらの方が有名かもしれない。02年にはフィリーの後輩とでも言うべきジャグアー・ライトがカヴァーし、03年にはアウトキャスト“Ghettomusick”で本曲(主にパティの声)がサンプリングされて再評価された。

02. ラヴ・T.K.O. / テディ・ペンダーグラス

LOVE T.K.O. / TEDDY PENDERGRASS [1980]

>> 楽曲解説を見る

80年にR&Bチャート2位を記録したテディ・ペンダーグラスの代表曲。優しく、熱く歌い込むバラードで、作者のひとりは後に夫婦デュオのウーマック&ウーマックとして本曲をセルフ・カヴァーするセシル・ウーマックだ。カヴァーやサンプリング例は枚挙にいとまがなく、カヴァーだけでもレジーナ・ベル、ホール&オーツ、ベット・ミドラー、マイケル・マクドナルド、ボス・スキャッグス、ジャックソウル、山下達郎など多くのアーティストが取り上げている。最近では晩年のテディと付き合いのあったフィリー出身のラティーフによるカヴァーも話題になった。

03. ハリー・アップ・ディス・ウェイ・アゲイン / スタイリスティックス

HURRY UP THIS WAY AGAIN / THE STYLISTICS [1980]

>> 楽曲解説を見る

フィリー・スウィートの雄、スタイリスティックス。デクスター・ウォンゼルとシンシア・ビッグスがペンを執ったこれは、80年に契約したTSOPからの初ヒット。ラッセル・トンプキンスJr.のファルセットが冴えわたる傑作メロウ・バラードだ。レジーナ・ベル、フィリス・ハイマン、パトリース・ラッシェンらにカヴァーされ、サンプリング・ネタとしてもジェイ・Z “Politics As Usual”(96年)やJ・ホリデイfeat.リック・ロス“Wrong Lover”(09年)に引用(後者は弾き直し)されるなど、これも人気が高い。

04. フー・キャン・アイ・ラン・トゥ / ジョーンズ・ガールズ

WHO CAN I RUN TO / THE JONES GIRLS [1979]

>> 楽曲解説を見る

デトロイト出身で、PIR契約後に花開いたジョーンズ三姉妹にも人気のメロウ・グルーヴ曲が多い。“This Feeling's Killing Me”(79年)や“Nights Over Egypt”(81年)などがそれだが、〈GROOVY〉編に収録した“You Gonna Make Me Love Somebody Else”(79年)のシングルB面だったこの曲もお馴染みだろう。シャーリー・ジョーンズを中心とした姉妹の美声と泣きのメロディが胸を締め付けるバラード。95年にはエクスケイプが原曲に忠実なカヴァーを披露し、R&Bチャート首位の座を射止めた。

05. テル・ミー・ホワイ / MFSB feat. カーラ・ベンソン

TELL ME WHY / MFSB FEATURING CARLA BENSON [1979]

>> 楽曲解説を見る

リズム隊の中核メンバーがサルソウル・オーケストラに移動してからは、デクスター・ウォンゼルらを中心にしたフュージョン色の強いバンドへと変貌していったMFSB。80年のアルバム『Mysteries Of The World』に収録されたこのスウィートなミディアム・フローターは、そんなMFSBを象徴する曲だろう。制作はデクスター・ウォンゼル。リードはスウィートハーツ・オブ・シグマ(シグマ・スタジオの女性コーラス隊)のカーラ・ベンソンで、この涼やかな美声にはただただ酔いしれるのみ。

06. アイ・キャント・ストップ(ターニング・ユー・オン) / シルク

I CAN'T STOP (TURNING YOU ON) / SILK [1980]

>> 楽曲解説を見る

PIRに一枚のアルバムを残すこのシルクは、ウジマ〜アングロ・サクソン・ブラウン(76年にシグマ録音の傑作アルバムあり)というヴォーカル&インスト・グループを前身とするバンド。これまた女声リードが活躍するスロウ・ミディアムで、歌うのはデブラ・ヘンリーという女性だ。真っ直ぐで情熱的な歌いっぷりがいい。プロデュースはスピナーズ作品でお馴染みのジョセフ・ジェファーソンとチャールズ・シモンズ。本曲を含むアルバム『Midnight Dancer』(79年)のCD化にも期待したい。

07. クライ・トゥゲザー / オージェイズ

CRY TOGETHER / THE O'JAYS [1979]

>> 楽曲解説を見る

熱く激しいフィリー・ダンサーのイメージが強いオージェイズだが、70年代後半あたりになるとメロウでスウィートな曲が増えてくる。特に78年のアルバム『So Full Of Love』はメロウ・ナンバーの宝庫。その中から、ここではサンプリング使用頻度の高いこのバラードを選んだ。2パックがいたサグ・ライフ“Pour Out A Little Liquor”(94年)も本曲をベースにしていたし、ジョニー・ギル“Touch”(96年)、アルーア“Anything You Want”(97年)、ジャ・ルールfeat.リル・モー“I Cry”(00年)など、この曲のネタ使いは本当に多い。

08. スウィーテスト・ペイン / デクスター・ワンゼル

THE SWEETEST PAIN / DEXTER WANSEL [1979]

>> 楽曲解説を見る

79年に登場したこれは後期PIRの傑作のひとつと言っていいメロウなミッド・ダンサー。リードを取る女性は、TSOPにアルバム『Circles』(75年)を残しているシティ・リミッツの元メンバーで、84年にニック・マルティネリのプロデュースでフィリー・ワールドからソロ・アルバムを出すテリー・ウェルズだ。パンチのある美声が響き渡る。86年にはニック・マルティネリが手掛けたルース・エンズの素晴らしいカヴァーも登場。DJカムpresentsインラヴ『Stories』(09年)でも歌われていた。

09. 恋のつぶやき / ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ feat. シャロン・ペイジ

YOU KNOW HOW TO MAKE ME FEEL SO GOOD / HAROLD MELVIN & THE BLUE NOTES FEATURING SHARON PAIGE [1975]

>> 楽曲解説を見る

レア・グルーヴ文脈で支持され、USではステッパーズ・アンセムにもなっているハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツの優雅でスムーズなスロウ・ミディアム(75年)。当時サブ・メンバーだった女性シンガー、シャロン・ペイジをフィーチャーした曲で、テディ・ペンダーグラスは途中から登場して熱い歌声を放つ。80年にはフィリー出身の兄妹(or弟姉)デュオがカヴァーし、これもレア・グルーヴ・シーンで人気を集めた。レイクォンfeat.ゴーストフェイス・キラー“Rainy Dayz”のリミックス(96年)におけるネタ使いも忘れ難い。

10. サンニン・アンド・ファンニン / MFSB

SUNNIN' AND FUNNIN' / MFSB [1976]

>> 楽曲解説を見る

5曲目に続き、再びMFSBが登場。こちらは76年のアルバム『Summertime』に収録されていた、マクファーデン&ホワイトヘッド及びヴィクター・カースターフェン制作のナンバー。トゥー・ステップ・ソウルと称されるようなスムーズ&メロウなミディアムで、いつまでも浸っていたくなるような曲だ。コーラスはスウィートハーツ・オブ・シグマの面々と作者のマクファーデン&ホワイトヘッド。ギャング・スター“She Knowz What She Wantz”(98年)のネタとしても気持ち良く使われていた。

11. ドント・レット・イット・ゴー・トゥ・ユア・ヘッド / ジーン・カーン

DON'T LET IT GO TO YOUR HEAD / JEAN CARN [1978]

>> 楽曲解説を見る

〈GROOVY〉編にはアッパーな“Free Love”を収録したが、ジーン・カーンといえば、78年のアルバム『Happy To Be With You』に収録されていたこれも人気だろう。ギャンブル&ハフのプロデュースによるスムーズ&メロウなミッド・ダンサー。特にUKで人気が高く、92年にはブラン・ニュー・ヘヴィーズによる素晴らしいカヴァーが登場している。本曲と同じタイトルを冠したブランド・ヌビアン曲(98年)における大ネタ使いも印象深い。

12. ショウ・ユー・ザ・ウェイ・トゥ・ゴー / ジャクソンズ

SHOW YOU THE WAY TO GO / THE JACKSONS [1976]

>> 楽曲解説を見る

続いてもスムーズなナンバー。流麗なフィリー・サウンドに乗って、当時18歳のマイケル・ジャクソンが優しく、かつエモーショナルに歌い上げるジャクソンズ屈指の名曲だ。プロデュースはギャンブル&ハフ。〈GROOVY〉編に収録の“Enjoy Yourself”に続くエピック / PIRからの第2弾シングルで、77年にR&Bチャート6位をマークした。90年代前半にダニー・ミノーグがカヴァーしていたが、R&Bファン的にはテディ・ライリーがプロデュースしたメン・オブ・ヴィジョンのカヴァー(95年)が馴染み深いだろう。

13. アイム・ノット・イン・ラヴ / ディー・ディー・シャープ

I'M NOT IN LOVE / DEE DEE SHARP [1975]

>> 楽曲解説を見る

60年代フィリーの名門レーベル=カメオ / パークウェイから“Mashed Potato Time”(62年)のヒットで人気を博したフィリーの歌姫。67年にケニー・ギャンブルと結婚し、アトコやギャンブルにも録音を残したが、75年にPIR(傘下のTSOP)入りして放ったヒットが10ccのバラードをカヴァーしたこの曲だった。10ccのオリジナルを見事なフィリー・バラードに仕立て、ディー・ディーは力強い美声でエレガントかつディープに歌い上げていく。

14. エイント・ノー・タイム・ファ・ナッシング / フューチャーズ

AIN'T NO TIME FA NOTHING / THE FUTRES [1979]

>> 楽曲解説を見る

ヴォーカル・グループ・ファンに人気の高いフィリー出身の5人組。ギャンブル&ハフとは一度72年の“Love Is Here”で組み、一旦別れてブッダからデトロイト録音のアルバム(75年)を出した後、77年に再会したという経緯がある。これは再会後にPIRから出した78年のアルバム『Past, Present & The Futures』に収録され、シングル発売もされたメロウなミディアム。フィリーの都会的な雰囲気がよく出た曲で、スキャットっぽいコーラスも印象的だ。レア・グルーヴ・シーンでも昔から人気が高い。

15. ウェイク・アップ・エヴリバディ / ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツ

WAKE UP EVERYBODY (SINGLE VERSION) / HAROLD MELVIN & THE BLUE NOTES [1975]

>> 楽曲解説を見る

プロデュースを手掛けたギャンブル&ハフがPIR屈指の名曲と語っていたブルー・ノーツの75年ヒット。テディ・ペンダーグラスの熱いリードを中心に「みんな、目を覚ませ」と同胞たちに呼びかけたメッセージ・ソングだ。04年の米国大統領選の際には、民主党支援のチャリティ・ソングとして、ベイビーフェイス指揮のもと現代R&B / ヒップホップのスターたちが歌声を揃えたカヴァーも登場した。テディ・フォロワーを自認するジャヒームは、本曲を引用した“Fabulous”(02年)という曲を歌っていた。

16. マイ・レイテスト、マイ・グレイテスト・インスピレーション / テディ・ペンダーグラス

YOU'RE MY LATEST, MY GREATEST INSPIRATION / TEDDY PENDERGRASS [1981]

>> 楽曲解説を見る

最後はテディ・ペンダーグラスのソロ曲で締め括ろう。81年のアルバム『It's Time For Love』からシングル・カットされたギャンブル&ハフ制作のメロウでスピリチュアルなバラード。テディの優しい歌声、そして、曲の中盤から登場する「ハ〜イヤ〜」というクワイア風のコーラスが胸を打つ。サンプリングでは、シカゴのヒップホップ・グループ、ドゥ・オア・ダイがカニエ・ウェストと組んで仕上げた“Higher”(05年)における引用(速回し)が話題を呼んだ。改めてテディの死を悼みたい。

2010年、なぜフィリー・ソウルなのか!?(選曲監修:音楽ライター 林剛)

フィラデルフィア・ソウル。それは70年代のソウル・ミュージックの象徴だった。ケニー・ギャンブルとレオン・ハフが設立したフィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ(PIR)を中心に展開されたその流麗で躍動感溢れるソウル・ミュージックは、60年代のモータウン・サウンドにとって代わるようにUSシーンを席巻し、ここ日本でもフィリー・ソウルという愛称で親しまれ、今も根強い人気を誇っている。ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツの“If You Don't Know Me By Now”、ビリー・ポールの“Me And Mrs. Jones”、スリー・ディグリーズの“When Will I See You Again”といったポップでキャッチーな名曲の数々。だた、フィリー・ソウルと言うと、どうしてもそれら70年代前半のヒット曲ばかりが懐メロ的なノリでコンピレーションなどに収録され、「華麗なストリングスが響き渡る洗練されたソウル」と紋切り型の紹介をされるだけで終わっていたように思う。実際にはもっと様々なスタイルの曲があったのに。

もっとも、この20年ぐらい、日本では76年以降のPIR音源(“後期PIR”と呼ぼう)の発売権がなかったため、フィリー・ソウルの魅力が広く伝わらなかったということもあるのだろう。だが、後期PIRの発売権を有した現在なら、その魅力をトータルで伝えることができる。そこで今回は、これまで親しまれてきた名曲は名曲として評価しつつ、現代的な感覚で評価されているフィリー・ソウルの曲にも光を当てて新たなスタンダードを提示しようではないかということになった。その手始めとして、「GROOVY」「MELLOW」という分かりやすいキーワードを使った2種類のコンピレーションを用意したわけだ。

フィリー・ソウル・ファンならご存知のように、75〜76年頃のPIRはレーベルの転換期にあった。詳しく述べるスペースはないが、ひとつ言うなら、70年代中盤以降はシグマ・サウンド・スタジオの常駐音楽集団であるMFSBの陣容が変わり、PIRの作家陣もデクスター・ウォンゼルやシンシア・ビッグスらが幅を利かせ始め、シカゴ・ソウルのクイントン・ジョセフ(ドラムス)がセッションに参加するなどしてサウンドが変化。結果、00年代のネオ・フィリー・サウンドにも繋がるようなモダンでメロウな曲が増え、いわゆるディスコ・ブギー的なダンス・チューンも登場し始めた。そんな後期PIRの看板アーティストとして(ソロで)活躍したのが、過日他界したテディ・ペンダーグラスだった。

「今でもラジオをひねれば僕たちが昔作った曲の断片がどこからか聞こえてくる」と得意げに話していたのはギャンブル&ハフ。そう、PIRの曲はR&B / ヒップホップをはじめとする数多くのアーティストにカヴァー / サンプリングされてきた。特にサンプリング・ソースということで言えば、使用頻度の高い楽曲は後期PIRのものが多く、それらはロイ・エアーズなどが再評価されたのとよく似た感覚でレア・グルーヴ文脈でも人気を得ている。後期PIR音源のリイシューが進んでいたUKではDJのノーマン・ジェイらがそうした視点からコンピレーションを編纂するなどしていたけれど、ようやく日本でもそれに近いものが組めるようになったわけだ。もっとも、それでもリリースの許諾が下りない曲があり、収録出来なかったものも少なくない。が、そんな裏事情はさておき、まずはここに収録された名曲たちの粋なフィリー・グルーヴを楽しんでもらいたい。