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フィリー・グルーヴィー PHILLY GROOVY

フィリー・メロウ PHILLY MELLOW

テディ・ペンダーグラス TEDDY PENDERGRASS

フィリー・グルーヴィー PHILLY GROOVY

フィリー・グルーヴィー PHILLY GROOVY

収録曲

01. 愛はメッセージ / MFSB feat. スリー・ディグリーズ

LOVE IS THE MESSAGE (Single Ver.) / MFSB feat. THE THREE DEGREES [1973]

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フィリー・ソウルの屋台骨を支えたMFSBがスリー・ディグリーズをフィーチャーして放った、華麗さと泥臭さを併せ持つ73年のダンス・ナンバー。邦題は「愛はメッセージ」で、まさに人類愛を謳ったギャンブル&ハフの思いが集約された曲と言っていい。ガラージの定番中の定番で、ハウスの礎を築いたとも言われる。ネタ使用例としては、本ヴァージョンではオミットされた間奏部分をループしたEPMD “It's Time To Party”(89年)のほか、ノーマン・ジェイがキング牧師の演説をブレンドした“Message In A Dream”(96年)などがある。

02. 恋はノン・ストップ / マクファデン&ホワイトヘッド

AIN'T NO STOPPING US NOW (Single Ver.) / McFADDEN & WHITEHEAD [1979]

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PIRの作家チームとしても活躍した男性デュオが79年に放った傑作ダンス・ナンバー。地元フィリーのNFLチーム「イーグルス」の応援歌ヴァージョンや、DJのジョッコ・ヘンダーソンがお喋りを乗せた“Rhythm Talk”という替え歌も登場している。ネタとしては、ビズ・マーキー“Let Me Turn You On”(93年)が一番有名か。カヴァーもルーサー・ヴァンドロスほか多数。本曲にストリングス隊の一員として参加していたラリー・ゴールドは03年のリーダー作で本人たちとザ・ルーツのMCであるブラックソートを招いたリメイクを発表し、これも話題を呼んだ。

03. ドント・レット・ラヴ・ゲット・ユー・ダウン / アーチー・ベル&ザ・ドレルズ

DON'T LET LOVE GET YOU DOWN / ARCHIE BELL & THE DRELLS [1976]

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アトランティックから出した“Tighten Up”が68年に全米No.1に輝いたヒューストン出身のヴォーカル・グループ。70年代後期にはTSOP〜PIRに籍を置き、フィリー・ソウル・アクトとして活躍した。これはマクファデン&ホワイトヘッド及びヴィクター・カースターフェンが制作した流麗なミディアム・ダンス・チューン(76年)。力強くソウルフルなリードが最高だ。レア・グルーヴ文脈でも人気が高く、また、冒頭のブレイクがビッグ・ダディ・ケイン“DJ’s Get No Credit”(91年)などで使われたことでもお馴染み。

04. モア・アイ・ゲット、モア・アイ・ウォント / テディ・ペンダーグラス

THE MORE I GET, THE MORE I WANT / TEDDY PENDERGRASS [1977]

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THE MORE I GET, THE MORE I WANT / TEDDY PENDERGRASS [1977]
続いてもマクファーデン&ホワイトヘッドとヴィクター・カースターフェンの制作で、テディ・ペンダーグラスの力強いバリトンが炸裂するフィリー・ダンサー。テディのソロ・デビュー・アルバム(77年)のラストを飾っていた曲で、これもフィリー・ガラージの名曲として親しまれている。同じ年には、南部の女性シンガー、ロレイン・ジョンソンが歌ったヴァージョンもプレリュードから登場し、こちらもガラージの定番として知られている。

05. ユー・ゴナ・メイク・ミー・ラヴ・サムバディ・エルス / ジョーンズ・ガールズ

YOU GONNA MAKE ME LOVE SOMEBODY ELSE / THE JONES GIRLS [1979]

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デトロイト出身のジョーンズ三姉妹が、79年、PIRから放った最初のシングル。姉妹のキリッとした美声が響き渡るシャープでタイトなダンス・チューンで、制作はギャンブル&ハフだ。ネタ使用例では、ジェイ・Z feat.ブラックストリート“The City Is Mine”(97年)における引用があまりにも有名だが、同年に、フォクシー・ブラウンがラップしたファーム“Fuck Somebody Else”で替え歌的に引用されてもいた。カヴァーではレディ・ソウルという女性3人組のヴァージョン(92年)が秀逸。

06. タイト・マネー / レオン・ハフ

TIGHT MONEY / LEON HUFF [1980]

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PIRのボスにして鍵盤奏者のリオン・ハフが80年に発表したリーダー・アルバム『Here To Create Music』からのリード・シングル。ビリー・プレストンあたりに通じる粋で軽快なジャズ・ファンク・ダンサーで、シンセの使い方が独創的な、いかにも“レア・グルーヴ”といった感じの曲だ。女声コーラスも印象的。なお、この曲のシングルのB面は女声コーラスを除いた同曲の別ヴァージョンで、タイトルが“Money's Tight”となっていた。

07. ソウル・パワーのテーマ / オージェイズ

GIVE THE PEOPLE WHAT THEY WANT / THE O'JAYS [1975]

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75年にR&Bチャート首位を獲得したオージェイズの鋭くタイトなファンク・チューン。男臭いヴォーカルはもちろん、6弦ベースの名手として知られるアンソニー・ジャクソンのフテブテしいベース・プレイも印象的で、「ソウル・パワーのテーマ」という邦題通りパワフルな曲だ。サンプリング使用頻度も高く、特にギャング・スター“Premier & The Guru”(89年)ネタとして親しみ深い。

08. イエロー・サンシャイン / イエロー・サンシャイン

YELLOW SUNSHINE / YELLOW SUNSHINE [1973]

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MFSBに籍を置くことになるローランド・チェンバースやデクスター・ウォンゼルが在籍していたPIR初期のヴォーカル&インスト・グループ。彼らは73年にギャンブルから一枚アルバムを出していて、これは同アルバムに収録されていた、グループ名と同じタイトルを冠した傑作ファンク・チューンだ。イナタくも、スマートなジャズ・ファンクのりの曲で、感覚としてはロイ・エアーズに近い。ブレイクビーツ古典としてもお馴染み。

09. エンジョイ・ユアセルフ / ジャクソンズ

ENJOY YOURSELF / THE JACKSONS [1976]

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言うまでもなくマイケル・ジャクソンがいた兄弟グループだ。ジャクソンズとしてエピック / PIRから初めて出した76年のシングルで、プロデュースはギャンブル&ハフ。「僕はゴキゲン」という邦題通りポップでダンサブルなウキウキするようなナンバーだ。バックストリート・ボーイズのデビュー・アルバム(96年)では、この曲のリズムを引用した“Let's Have A Party”というポップ・チューンが披露されていた。

10. フリー・ラヴ / ジーン・カーン

FREE LOVE / JEAN CARN [1976]

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夫だった前衛ジャズ・ピアニストのダグ・カーンのもとで歌い、ノーマン・コナーズのフィーチャリング・シンガーとしても活躍した歌姫。そんな彼女が76年に契約したPIRから第一弾シングルとして放ったのが、この開放感溢れるアップ・テンポのナンバー。明るい曲調のわりに歌詞の内容は切なかったりするのだけど、とにかくジーンの情熱的な、思い切った歌いっぷりに圧倒される。制作はギャンブル&ハフ。

11. ジャム・ジャム・ジャム(オール・ナイト・ロング) / ピープルズ・チョイス

JAM JAM JAM (ALL NIGHT LONG) / PEOPLE'S CHOICE [1976]

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50年代から鍵盤奏者として活躍していたフランク・ブランソンが立ち上げたファンク・バンド。PIR傘下のTSOPに迎え入れられ、75年に“Do It Any Way You Wanna”がR&Bチャート1位を獲得しているが、ここでは76年リリースのこちらをお聴きいただく。フランクが野太くディープなヴォーカルでゴリゴリと歌い倒す迫力満点のパーティー・ファンク・ジャム。思わず踊りだしたくなる。

12. レット・ザ・ダラー・サーキュレイト / ビリー・ポール

LET THE DOLLAR CIRCULATE / BILLY PAUL [1975]

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72年の大ヒット“Me And Mrs. Jones”ばかりが語られるビリー・ポールだが、この人は70年代中・後期にグルーヴィな名曲を数多く出している。今回は、故J・ディラ制作のスティーヴ・スペイセック“Dollar”(05年)でネタ使いされてから人気が上昇しているこれを。最近はヤング・ジージィ“Circulate”(08年)やメアリー・J・ブライジ“I Love U(Yes I Du)”(09年)でもサンプリングされていた。勇ましくも哀愁が滲むナンバーだ。

13. ロリポップ / エドウィン・バードソング

LOLLIPOP / EDWIN BIRDSONG [1979]

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ロイ・エアーズのユビキティに参加し、自らもミクスチャーなファンク〜ディスコ作品を出していた鍵盤奏者 / ヴォーカリスト。79年にPIRから出したアルバム『Edwin Birdsong』にはダフト・パンクがネタ使いした“Cola Bottle Baby”などハウス〜エレクトロ系のクリエイター好みのナンバーが並ぶが、これもそのひとつ。コズミックなシンセが絡むディスコ・ブギーで、ダンス・フロアでの受けは抜群だと聞く。この後にサルソウルから出した“Rapper Dapper Snapper”(80年)も人気。

14. メッセージ・イン・アワー・ミュージック / オージェイズ

MESSAGE IN OUR MUSIC / THE O'JAYS [1976]

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ギャンブル&ハフのメッセージを力強いヴォーカルで歌い上げたオージェイズ。76年に放ったこの疾走感溢れるダンス・チューンも、そんな彼らを象徴するナンバーと言っていいだろう。足早なリズムと壮麗なストリングス。エディ・リヴァートとウォルター・ウィリアムズによる熱い掛け合いと洒落たコーラス。この昂揚感にはどんな曲も勝てないような気がする。

15. 慕情の街 / ルー・ロウルズ

SEE YOU WHEN I GIT THERE / LOU RAWLS [1977]

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芳醇なバリトン・ヴォイスを売りとしたルー・ロウルズ。77年にヒットしたこれはギャンブル&ハフ制作のスタイリッシュなアップで、ダンディな色香を振りまきながら疾走していくようなルーに惚れ惚れしてしまう。「すみません、電話をかけるので、お金を崩してくれませんか?どうも」という冒頭の語りからしてカッコよすぎるではないか。シグマ・スタジオの女性コーラス隊=スウィートハーツ・オブ・シグマの美声も曲を盛りたてる。

16. アイル・オールウェイズ・ラヴ・マイ・ママ / イントゥルーダーズ

I'LL ALWAYS LOVE MY MAMA / THE INTRUDERS [1973]

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ギャンブル&ハフとマクファデン&ホワイトヘッドの両チームが共作したイントゥルーダーズ屈指のフィリー・ダンサー。お母さん讃歌だ。73年のリリースということで、これはサルソウル・オーケストラに鞍替えする前のMFSBのリズム隊(アール・ヤングほか)がバックを務めている。99年のサントラ『The PJ’s』に収録されたラファエル・サディーク&Q・ティップの“Get Involved”では本曲の間奏部分がループされて注目を集めた。

17. ネヴァー・レット・ユー・ゲット・アウェイ・フロム・ミー / アンソニー・ホワイト

NEVER LET YOU GET AWAY FROM ME / ANTHONY WHITE [1976]

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76年に出したアルバム『Could It Be Magic』がPIR屈指のレア盤として知られる男性シンガー。これは同アルバムに収録されていたフィリー・ダンサーで、アンソニーの熱くディープな歌声が素晴らしい。作者には、この頃からサルソウル作品のスタッフとしても活躍し始めるノーマン・ハリス、アラン・フェルダー、バニー・シグラー、ロン・タイソンの4人が名を連ねている。この後アンソニーもサルソウルに移籍。89年にはポール・シンプソンのハウス・アルバム『One』で歌っていたこともファンにはお馴染みだろう。

18. アイル・ネヴァー・フォーゲット / デクスター・ウォンゼル

I'LL NEVER FORGET (MY FAVORITE DISCO) / DEXTER WANSEL [1979]

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元イエロー・サンシャインのメンバーで、70年代中期からはジャズ・ファンク路線のリーダー作を出しつつ、シンシア・ビッグスとのコンビでPIR作品のブレーンとして活躍した鍵盤奏者。ジャミロクワイ選曲のコンピ『Late Night Tales』にも収録されたこの曲(79年)は、「思い出のディスコ」などと勝手に邦題をつけたくなるディスコ・フロア讃歌だ。弾むようなリズムと華麗なストリングス、女性ヴォーカルが一体となってたたみかけ、聴いているこちらも昂揚感で胸がいっぱいになる。

2010年、なぜフィリー・ソウルなのか!?(選曲監修:音楽ライター 林剛)

フィラデルフィア・ソウル。それは70年代のソウル・ミュージックの象徴だった。ケニー・ギャンブルとレオン・ハフが設立したフィラデルフィア・インターナショナル・レコーズ(PIR)を中心に展開されたその流麗で躍動感溢れるソウル・ミュージックは、60年代のモータウン・サウンドにとって代わるようにUSシーンを席巻し、ここ日本でもフィリー・ソウルという愛称で親しまれ、今も根強い人気を誇っている。ハロルド・メルヴィン&ザ・ブルー・ノーツの“If You Don't Know Me By Now”、ビリー・ポールの“Me And Mrs. Jones”、スリー・ディグリーズの“When Will I See You Again”といったポップでキャッチーな名曲の数々。だた、フィリー・ソウルと言うと、どうしてもそれら70年代前半のヒット曲ばかりが懐メロ的なノリでコンピレーションなどに収録され、「華麗なストリングスが響き渡る洗練されたソウル」と紋切り型の紹介をされるだけで終わっていたように思う。実際にはもっと様々なスタイルの曲があったのに。

もっとも、この20年ぐらい、日本では76年以降のPIR音源(“後期PIR”と呼ぼう)の発売権がなかったため、フィリー・ソウルの魅力が広く伝わらなかったということもあるのだろう。だが、後期PIRの発売権を有した現在なら、その魅力をトータルで伝えることができる。そこで今回は、これまで親しまれてきた名曲は名曲として評価しつつ、現代的な感覚で評価されているフィリー・ソウルの曲にも光を当てて新たなスタンダードを提示しようではないかということになった。その手始めとして、「GROOVY」「MELLOW」という分かりやすいキーワードを使った2種類のコンピレーションを用意したわけだ。

フィリー・ソウル・ファンならご存知のように、75〜76年頃のPIRはレーベルの転換期にあった。詳しく述べるスペースはないが、ひとつ言うなら、70年代中盤以降はシグマ・サウンド・スタジオの常駐音楽集団であるMFSBの陣容が変わり、PIRの作家陣もデクスター・ウォンゼルやシンシア・ビッグスらが幅を利かせ始め、シカゴ・ソウルのクイントン・ジョセフ(ドラムス)がセッションに参加するなどしてサウンドが変化。結果、00年代のネオ・フィリー・サウンドにも繋がるようなモダンでメロウな曲が増え、いわゆるディスコ・ブギー的なダンス・チューンも登場し始めた。そんな後期PIRの看板アーティストとして(ソロで)活躍したのが、過日他界したテディ・ペンダーグラスだった。

「今でもラジオをひねれば僕たちが昔作った曲の断片がどこからか聞こえてくる」と得意げに話していたのはギャンブル&ハフ。そう、PIRの曲はR&B / ヒップホップをはじめとする数多くのアーティストにカヴァー / サンプリングされてきた。特にサンプリング・ソースということで言えば、使用頻度の高い楽曲は後期PIRのものが多く、それらはロイ・エアーズなどが再評価されたのとよく似た感覚でレア・グルーヴ文脈でも人気を得ている。後期PIR音源のリイシューが進んでいたUKではDJのノーマン・ジェイらがそうした視点からコンピレーションを編纂するなどしていたけれど、ようやく日本でもそれに近いものが組めるようになったわけだ。もっとも、それでもリリースの許諾が下りない曲があり、収録出来なかったものも少なくない。が、そんな裏事情はさておき、まずはここに収録された名曲たちの粋なフィリー・グルーヴを楽しんでもらいたい。