収録曲

1. 心のゆくえ
2. フォーギヴン(赦し)
3. そばにいておくれ
4. お前に一途さ
5. アイム・ア・マン

6. メイク・イット・ベター
7. 愛よ、どこへ
8. 薄情女
9. 救い
10. スーパーマン

11. アナザー・ブロークン・ハート
12. 俺は俺
13. 醜い争い *
14. 俺はグエロ *
* ボーナストラック

プロフィール

テキサス西部出身のロス・ロンリー・ボーイズは、ギターのヘンリー、ベースのジョジョ、そしてドラムのリンゴの3兄弟からなります。彼らは子供の頃より親しんだテックス・メックス、カントリー、ブルース、ロック、ポップなどから基本を学び、父親のバンドをサポートしながら成長します。そして強力なギター・プレイと活力あるロックとラテンのリズム、ダイナミックな演奏の絡み合い、兄弟そろっての瑞々しいヴォーカル・ハーモニーを大きな特徴とし、フックと表現力に富んだ歌詞、そして豊かなメロディに満ちた曲を作り出しています。
全米で04年にリリースされたデビュー・アルバムは、たった3人で作り出したとは思えない程の濃い内容で、瞬く間にミリオンセラーとなり、05年のグラミー賞で最優秀ポップデュオに輝きました。サンタナやスティーヴー・レイ・ヴォーンと比較されるファンキーなブルース・サウンドは伸びやかで強力、ライヴ・バンドとしての素晴らしさも兼ね備えています。今作は、新鮮さをまといつつ生まれながらにしてクラシックの輝きを放つ多面的な魅力溢れる音楽性を持ったバンドの証のような作品です。

ライナーノーツより(一部抜粋)

 前2作を手がけたジョン・ポーターに代わって、今回はスティーヴ・ジョーダンがプロデューサーとして抜擢された。凄腕ドラマーとして、ボブ・ディラン、キース・リチャーズ、チャック・ベリー、ブルース・スプリングスティーン、ジョン・メレンキャンプ、シェリル・クロウ、B・B・キング、ジェームス・テイラーら無数のアーティストをバックアップしてきたほか、プロデューサーとしてもジョン・メイヤー、ハービー・ハンコック、ジョン・スコフィールド、ヴァーブズなど多くのアーティストに名盤を提供している。エンジニアには、ニール・ヤング、メリサ・エスリッジ、ジェームス・テイラー、ビリー・ジョエルらを手がける名手、ニコ・ボラスを起用。ジョーダンとボラスは今回のロス・ロンリー・ボーイズのレコーディング・プロジェクトを開始するにあたって、まず通常のレコーディング・スタジオではなく、バンドが普通にライヴ生演奏できる撮影用のスタジオを用意した。

 スティーヴ・ジョーダンは今回のアルバムに関して、「去年、フィルモアでロス・ロンリー・ボーイズのライヴを見たんだ。3人で歌う瞬間の見事な化学変化に圧倒されたよ。素晴らしかった。これまでの2枚のアルバムからは感じられなかった躍動感が彼らのライヴにはあった。だから、ぼくは彼らの良さを最大限に引き出すことができる最良の方法をあれこれ考えたんだ。楽しみながらレコーディングの作業ができる環境をね。おかげで彼らが生演奏するときのエネルギーとグルーヴをきっちり記録することができたと思う」と語っている。

 メンバーもジョーダンを絶賛している。ジョジョによれば「スティーヴは場の雰囲気をとらえるのがすごく上手なプロデューサーだったよ。彼はいつもぼくたちと一緒だった。スタジオのコントロール・ルームではなく、演奏するところにいつもいて、自作のパーカッションを持ち出してジャムっていた。フットボールも一緒にやった。何もかも一緒にやった。仲間だった。ぼくたちといるとき、彼の名前は“ジョーダン”じゃなかった。スティーヴ・ガルサだった」とのこと。

 そんなリラックスした環境のもと、3週間のセッションで『フォーギヴン〜赦し』は完成した。大きく括れば、前2作と基本的な方向性や手触りは変わっていないのだが、初心を取り戻したかのような新鮮で無垢なエネルギーが全編に充満している。ライヴと同じアプローチでレコーディングすることができたことで、メンバーどうしのグルーヴの一体感もさらに増した。兄弟であることがこれまで以上に活かされた仕上がりだ。まさに“絆”の1枚。強い兄弟愛に貫かれたテキサス魂/アメリカ魂を思い知る。

 アルバムのオープニング曲「心のゆくえ」のブルージーかつファンキーなグルーヴ。神に赦しを乞うことを切々と綴るアルバム・タイトル曲「フォーギヴン」の愛と祈りに満ちた手触り、ファースト・シングルとして先行リリースされた「そばにいておくれ」の極上ポップ・ソウル風味、兄弟ならではのハーモニーが活かされた「お前に一途さ」のアコースティック・グルーヴ、ビートルズとテキサス・ブルースの融合とでも言うべき「メイク・イット・ベター」のアレンジの妙、洗練されたコード進行を伴った「愛よ、どこへ」や「俺は俺」のブルー・アイド・ソウル感覚、ボーナス追加された「醜い争い」のソウルフルな手触り、「俺はグエロ」のルーズなラティーノ・ロック味……など、聞き所はたっぷりだが。何と言っても、今回リンゴ・ジュニアが初めてリード・ヴォーカルをとった「スーパーマン」がファンにとってはうれしい贈りものだろう。これまではヘンリーとジョジョが代わる代わるリード・ヴォーカルを担当してきたロス・ロンリー・ボーイズだが。この曲を聞くと、なぜリンゴがリードをとらなかったのか不思議だ。今後リンゴのヴォーカル曲も増えていくことだろう。さらに、スティーヴ・ウィンウッド/スペンサー・デイヴィス・グループのレパートリーを堂々とカヴァーした「アイム・ア・マン」の男気溢れる演奏っぷりも印象的だ。スティーヴ・ジョーダン経由でゲスト参加が実現したというドクター・ジョンのB3オルガンがごきげんな「救い」もいい。

 ロス・ロンリー・ボーイズは06年、ダルフール救済を目的としたジョン・レノンへのトリビュート盤『Instant Karma: The Amnesty International Campaign to Save Darfur』で、ジョンのソロ・ヒット「Whatever Gets You Through the Night」を実にかっこよくカヴァーしていたが。そこで聞かれた、ちょっと力の抜けた豊潤なスウィング感が本盤にも引き続き持ち込まれているようだ。

 ファースト・アルバムの生みの親のひとりでもあるウィリー・ネルソン。ツアーをともにし、05年のアルバム『All That I Am』でも夢の共演を果たしたカルロス・サンタナ、そして08年、ジョイントでツアーを行っているロス・ロボス、そして父親。素晴らしい先達の熱いサポートを受けながら、ロス・ロンリー・ボーイズは順調に成長を続けている。彼らの充実した現在を思い知らせてくれる名盤の誕生だ。