Shirley Manson(シャーリー・マンソン) Butch Vig(ブッチ・ヴィグ)

ーー今リハーサルをしていたと訊きましたが、ガービッジのリハーサルですか?

ああ。まだ始めてから6〜7日しか経っていなくて、ゆっくりとまとまりつつあるよ。

ーーそうなんですね。久々にドラマーに戻るのはどんな気分ですか?

そうだな、アルバム作りはすごく楽しくてエキサイティングだったよ。極めて自由な気分で始めたからね。大手レーベルとの契約が切れて、マネージャーも当時はいなかったから、誰にもあれこれ指図されなかったし、曲作りもレコーディングのプロセスも本当に楽しかった。ただライヴのリハーサルとなると話は違って……(笑)僕は7年間プレイしていないから、運動神経がゆっくりゆっくり復活してくる感じなんだよ。全部の指に水ぶくれができてしまって、とにかく曲を一生懸命思い出しているところさ。でも、時間はかかってはいるけれど、だんだん記憶が呼び覚まされて、最初の公演まであと3週間リハーサルできるから、きっとなんとか……。最初の公演では失敗もすると思うんだ。でも構わない。ライヴなわけだしね、どんどん良くなっていくよ。

ーー新作はものすごく若々しくて挑戦的な音でビックリしたんですが、7年ぶりのアルバムに取り掛かるにあたって、個人的に暖めていたアイデアはあったんですか?

僕個人にとってこのアルバムに大きな影響を及ぼした要素というのは、フー・ファイターズとのレコーディングなんだよ。彼らの最新作『ウェイスティング・ライト』を僕はプロデュースしたんだけれど、あのアルバムはアナログ・テープで録音したから、一切修正が効かなかった。プロ・トゥールズを使えば声をオート・チューンでいじったり、音をあちこちに動かしたりできる。でもアナログ方式だと、全てはパフォーマンスにかかってくる。そのことを、アルバムに着手した際に話したんだよ。あまり細かいことを気にしないってことが重要なんじゃないかってね。とにかくあれこれ考えずに音楽と正面から向き合って、ナマなパフォーマンスを重視しようーーと。シャーリーにしても、ソファに座って、マイクを手で握ってヴォーカルを録音した曲が幾つかある。そして僕のドラムも、曲によっては自宅のホームスタジオで録音したんだ。ホームスタジオというのは、要するにベッドルームであって(笑)、そこに4〜5本マイクをセットアップしただけ。ドラミング自体もすごくシンプルなアプローチで、『Blood for Poppies』や『Big Bright World』なんかは、最低限のテイク数に留めた。ミックスについても同じことが言える。何でも修正しようとしないで、ボードを満たそうとしたんだ。全ての音が……そう、コンソールから弾け出ているかのような感じにしたかったのさ。おかしな表現かもしれないけれどね。だから、“若々しい”っていうのは僕にとっては褒め言葉だよ。年寄り集団が鳴らしてるようには聴こえない。なぜって僕ら自身、アルバムを作っている時、年齢を意識しなかった。みんなエネルギーに溢れていたし、本当にエキサイトしていて、そのことが曲から聴こえると思うんだ。

ーースタジオでの役割分担は以前と同じでした?それとも、バンド内の仕組みを再考するようなところもあったんでしょうか。

どちらも該当するな。前回のツアーが終わった時の僕らは、4枚のアルバムを続けざまに作って、4回のツアーを行ない、その間ずっと毎日のように一緒に過ごしていた。そのせいで、だんだん各人のパーソナルなことがお互いの気に障るようになってしまったんだ。本当に些細な、くだらいなことなんだけれどね。でも長い休みをとって、そんなことをすっかり忘れてしまったんだよ(笑)。活動を再開した時は全員、「さあ、みんなで曲を書いて、どうなるか様子を見ようじゃないか」ってこと以外、考えていなかった。そして、最初の2曲くらいをレコーディングし終えた時点でものすごく興奮してしまって、その後はどんどん曲が生まれていったんだ。2カ月間に曲のアイデアが24〜25個くらいできあがって、そのうち16〜17曲を最終的に完成させた。だからみんなインスパイアされていたし、前作までの僕らの姿が何らかの形で引き継がれたとしたら、それはスタジオで積極的に実験したいバンドだってこと。今回も、僕がギターを弾いたり、デュークがドラムを叩いたり、スティーヴがエフェクト機材を操作したり、それぞれが自由に振る舞っていた。唯一のルールは、シャーリーが今もシンガーだという点だね(笑)。ほかの3人は歌えないし、それはいいことなんだと思う。

ーーじゃあ、今回は全てが順調に進んだということですね。

ああ、すごくイージーだった。去年の11月、12月くらいになると、夏にツアーをするにはそろそろアルバムを仕上げなくちゃ間に合わないってことで、かなり長い時間をスタジオで過ごしていたけれど、さっきも言ったように、余計な口出しをする人が全くいなかったからね。僕らはただアルバムを完成させて、色んな人に聴かせ、そうしたら、みんなすごく面白がってくれたんだ。

ーーあなたは確か本作を“楽観的なアルバム”とも評していましたよね。必ずしも全てがハッピーな曲ではないですし、あなたたち特有のメランコリーもたっぷり含んでいるんですが、どういうニュアンスで“楽観的”なんでしょう?

このアルバムは『Not Your Kind Of People』と題されていて、表題曲は“はみ出し者”について歌っている。「自分はどこにも属さない」と受け入れることを歌っていて、そこには一種のパワーがあると思うんだよね。バンドとしての僕らも、シーンに属していると感じたことがなかった。一般的に“オルタナティヴ・バンド”と呼ばれていたけれど、それが具体的に何を意味するのか良く分からないし、何たって僕らは『Queer』でヒップホップのループを使ったり、しばしばエレクトロニカの要素を取り入れたり、かと思えばポップなメロディもノイジーなギター・サウンドも好きだった。そしてシャーリーは英国の再従兄弟みたいな場所の出身だし、残りの3人の故郷はウィスコンシン州マディソンで、僕は今はLAに住んでるけれど、東海岸や西海岸の人たちみたいにクールじゃないからね。そういうことを歌っている曲が、今回は多いんだ。『Beloved Freak』もそうだし、『Battle in Me』も然り。これらの曲はどれも、ある意味で力を与えてくれる曲であり、「はみ出し者で構わない」と受け入れることを歌っていて、だからこそ、そこには楽観的な感情が含まれていると思う。だって僕らを見てごらんよ! 見た目からして、本当に奇妙なバンドだと思うんだ。メンバーは40〜 50代で、こんなに年をとってまだロックしようなんて、みっともないって言う人たちもいるだろう。でも、だからどうしたっていうのさ? 僕の気分は至って良好だよ。だからこのアルバムは、僕らはどこにも属していないって容認すること、それでも構わないんだって想いが込められているのさ。

ーーそういう話をレコーディング中に実際4人でしていたんですか?

ああ。以前よりもそういう想いが強くなっていた。それに、そもそも今回は全体的に、みんなでたくさん話をしながらアルバムを作ったんだよ。どんな曲にしたいかってことをね。『ブリード・ライク・ミー』を作った時は、何日も会話をせずに過ぎることがあった。曲を作っていても、誰も何も言わない。誰も意見を口にしない。ほかの人を怒らせたり、或いは自分が傷つくのがイヤだからって。でも今回は何でも話し合った。誰かが曲のアイデアを思いついて、みんな気に入らなかったら、さらっと受け流して次のアイデアに取り組んだ。それが良かったんだと思う。細かい決断に気を揉まなかったんだよ。こだわり過ぎずに、うまく行かなかったら、さっさと次にーーという感じで。

ーーじゃあ、これだけ長い休暇をとって、いい結果になったんですね。

そう思うよ。っていうか、こうして戻ってきてみて、どういう結果になるのか自分たちにも見当がつかなかった。それに今回は自分たちのレーベルからアルバムをリリースして、海外ではエリアごとに異なるレーベルにライセンスする形をとる。いったい何人の人がアルバムを気に入ってくれて、そして買ってくれるのか分からないし、ライヴをやっても5百人来てくれるのか、5千人来てくれるのか分からない。でも究極的には、どうなっても構わないってことさ。僕らはやりたいことをやるだけ。

ーー活動を休止している間あなたはプロデューサー業に専念していましたよね。

ああ、そっちの仕事をやりたかったんだよね。長年ガービッジの活動に時間を費やしていて、プロデューサーのキャリアを諦めていたところがある。だからたくさんの素晴らしいプロジェクトに携わることができて、本当にラッキーだったと思う。グリーン・デイにミューズ、フー・ファイターズ、アゲインスト・ミー!……。何しろ僕はスタジオで暮らしてるような人間だからね。スタジオで過ごすのが好きなんだ。そういう生活を5年ほど続けてきた。でもガービッジの一員でいることの素晴らしさは、自分の能力の別の部分を活用できるってことなんだよ。ソングライターで、ミュージシャンである部分を。プロデューサーの部分ばかりではなく。そういうモードに戻るのは楽しかったよ。両方できるなんてラッキーだよね。バンドの一員であり、プロデューサーでもあるっていうのは。

ーーじゃあ、シャーリーがバンド再開のきっかけを作った時、準備ができていたんですね。

うん。絶妙なタイミングだったよ。前回のツアーが終わって、休みをとることにしたわけだけれど、それがどれくらい続くのが分からなかった。僕は2〜3年くらいかなあと思ってた。でもいつの間にか5年が経っていた(笑)。というのも、全員がそれぞれいろんなプロジェクトを抱えていたからなんだ。シャーリーはテレビ・ドラマにも出たし、演技のレッスンを受けたりして、ソロ・アルバムも作っていた。たくさんの曲を書いてレコーディングするつもりだったんだけれど、レーベルに断られちゃったんだよね。すごくダークで、メインストリームとは相容れないもので、レーベルは彼女にポップソングを書いて欲しがっていたのさ。それで、ビッグネームのプロデューサーたちとコラボさせようとしていた。ケイティ・ペリーやリアーナに曲を提供しているような人たちと。でもシャーリーはそんなことをしたがらなかった。あの時に彼女は気付いたんだと思う、自分が一緒に曲を書きたいのはガービッジのメンバーだってことにね。だからこそ、シャーリーが活動再開のきっかけを作って、去年僕らをスタジオで再会させたんじゃないかな。

ーーそれにしてもあなたはグリーン・デイの『21世紀のブレイクダウン』とフー・ファイターズの『ウェイスティング・ライト』という、ここ数年で最大のロック・アルバムに携わったわけですから、プロデューサーとしても充実した活動をして、いい状態でガービッジに帰ってきたことになりますよね。

そうだね。それと同時に、ガービッジの素晴らしさにも改めて気付いた。ほかのどのバンドとも違うんだよ。そして自分がやりたいことを全部実現できる。スタジオで実験して、エレクトロニカを取り入れて。ほら、フー・ファイターズにもグリーン・デイにもエレクトロニカを導入する余地はないからね(笑)。それにガービッジではギターもシンセもプレイできるし、エフェクト機材であれこれ音を加工することもできる。バンドとして僕らには一切ルールがないんだ。曲をどんな要素で構成するとか、曲をどうアレンジするとか。それでいて、必ず自分たちのサウンドに辿り着く。このアルバムでも、1曲目を聴き始めた瞬間にガービッジだって分かるよね。そのガービッジのサウンドを、僕自身もどう定義したらいいのか分からないんだけれど、それは僕ら4人が一緒に曲を書いてプレイすると、自然に生まれる。そして、シャーリーの声も重要だね。ほかに彼女みたいなシンガーはいないから!

ーーそのシャーリーが今回書いた詞については、どう感じましたか?

そうだな、相変わらずエッジーな部分がある。『Automatic Systematic Habit』なんかがそうで、誰か彼女を怒らせたヤツがいるらしい。と同時に、力を身につけることに関する曲でもあり、それは僕がさっきも触れた点で、世の中のイヤなことを乗り越えて、自分の人生の主導権を握るってことを歌っている曲がすごく多いんだ。つまりそれは自分に、「苦難は乗り越えられるから大丈夫」と納得させることでもある。ほかにも素晴らしい曲がたくさんあるよ。特に『Sugar』が好きだな。シャーリーの声は最高だね。表題曲も然りで、すごくサイケデリックでピンク・フロイドっぽくて……ガービッジが最もピンク・フロイドに近づいた瞬間だよ。ドリーミーだし、聴き手を旅に連れていってくれる。通常のヴァース〜コーラス〜ヴァースの構成じゃないし、彼女の声と歌詞の展開も面白い。究極的には最後の、“We are extraordinary people(私たちは普通じゃない人間)”と歌っている部分が、アルバム全体を総括している気がする。それが僕らのマントラなんだよ(笑)。

ーーあなたはガービッジでもプロダクションに関わっているわけですが、自分のバンドだと客観性を保つのは難しいですか?

ああ、そこがややこしい部分なんだよね。フー・ファイターズやグリーン・デイとレコーディングしている時なら、自分の曲じゃないから、曲を客観的に捉えて「ブリッジの部分はもっといいやり方があるんじゃないかな」とか「コーラスにもうちょっと高揚感が必要だ」とか「ここがイマイチだな」とか言いたいことが言える。ガービッジでは渦中にいて、自分で曲を書いてレコーディングしているから、他人の曲を手掛けている時ほど、全部がクリアに見えるとは言えない。でも、だからこそガービッジでは4人全員がプロデューサーとしてクレジットされているのさ。お互いが気付かない部分をチェックし合うんだよ。シャーリーが「そこはあまり好きじゃない」と言ったり、スティーヴが「グルーヴがしっくりこないな」と指摘したり、「固すぎる」とか「ゴチャゴチャしてる」とか……。みんなたくさん意見を持っているから、僕はそんなに心配しなくてもいいんだよ。ただ、僕がどうしてもこだわってしまう部分もあって、特にミックスの段階では「こういう音でなくちゃいけない」と、こだわりがちなんだ。例えば今回は、当初は全てをクリアな音にしたかった。でも作業を続けているうちに、今度はダーティーな音にしたいと思うようになって、そういう風に作りながら見極めてゆくのはいいことなんだと思う。最終的には、当初のミックスよりも少しラフな仕上がりに落ちついたよ。

ーーサウンド面ではこれまで同様、雑多な影響源が感じられますけれど、何か特にたくさん聴いていたものってあるんですか?

僕はいつもたくさんの、ものすごく雑多な種類の音楽を聴いているからね。クルマの中でいつもデジタル・ラジオを聴いていて、XMUというインディ・ロックの局を毎日聴いているんだ。この局には“ブログ・ステーション”という番組があって、それぞれ“Aquarium Drunkard”や“My Old Kentucky Blog”や“Gorilla vs.Bear”といった人気ブロガーたちが担当していて、ものすごくアンダーグラウンドな音楽をかける。リッキー・リーを初めて聴いたのもXMUだったし、フォスター・ザ・ピープルやスレイ・ベルズも然りで、オンにする度に誰だか分からない曲がかかっている可能性が高い。常に新人をピックアップしていて、インターネットでも検索できないくらいアンダーグラウンドなアーティストもいるし、彼らが初めて作った曲を聴けたりもする。そういう音楽にインスピレーションを見いだしているのさ。あまりにも未熟で若くて、アイデアは面白いのにうまく表現できていないケースもあるけれど、そこがまさにエキサイティングでもある。荒削りなところがね。僕のラップトップにはそういうブログ・ステーションで知ったアーティストの曲がたくさん入っているんだ。

ーーじゃあ、この7年間情報は常にアップデートしていたんですね。

ああ、努力はしていた。でもそれは、流行に遅れたくないからっていうわけじゃなくて、単に音楽が好きだからやってることなんだ。シーンで何が起きているか、いつも興味津々だからね。新しいアーティストたちがどんな音を鳴らしているのか。そして時々「うわ、今のドラム、カッコいいな。すごくたっぷりとしていて」とか、「面白いギター・サウンドだ。あの曲でちょっと試してみようか」と思ったりする。だから一石二鳥なんだよ。リサーチでもあるけれど、むしろ新しい音楽を純粋に聴きたいからやってることなのさ。

ーーそうやって音楽を聴いていて、ガービッジの影響を聴きとることはありますか?

シャーリーが面白いことを言っていて、レコーディングを始めた時にーーこれも僕らが今回のアルバムに着手するにあたって決めていたことなんだけれどーー「とにかく自分たちらしくあろう。バンドを刷新するとか余計なことは考えずに、アルバムを作って、自分たちがやりたいように、バンドとして自分たちが鳴らす音に忠実なものにしよう」って。それは、僕らには自分たちの感性に根差したスタイルがあって、僕らのようなサウンドを作れるバンドはほかにいないってことなんだ。僕らを模倣しているバンドに出会うことは時々あるけれど、それはそれで素晴らしいことだよね。僕は賛辞として受け止めている。でもシャーリーは、「私たちは王座を奪還するのよ!」って宣言したのさ(笑)。

ーーレーベルの名前“STUN VOLUME”の由来は?

それは、僕らがいつもスタジオで使ってる言葉なんだ。“ガービッジ・スラング”っていうのがたくさんあって、曲を聴き直す際に「スタン・ヴォリュームでプレイして」って言ったら、ボードのマスター・フェイダーを最大値まで上げるってことさ。つまり、めっちゃくちゃ、ファッキンにラウドなんだ(笑)。誰かがスタジオに遊びにきて、「新曲を聴く?」って訊いて「ぜひ」って返事が返ってきたら、「オーケー、スタン・ヴォリュームで行こう!」って言って、ヴォリュームを目一杯上げる。それが僕らのやり方なのさ。ヴォリュームを“11”まで上げるってこと。

ーー今後ほかのバンドを契約したりすることは考えているんですか?

ああ。そうするかもしれない。すでに何かコラボレーション的なことはやろうって話があるんだ。ほかのアーティストと組んで、リミックスになるのか、曲を一緒に作るのか、カヴァーをやるのか分からないけれど、デビューした頃からそういうような試みをしたかったんだ。でも当時の僕らは英国ではMushroomと契約していて、アメリカではユニバーサル傘下のレーベルと契約していて、ややこしい状況で、何か通常の活動とは違うことをしようとすると、ダメって言われ続けてきたんだよ。すごくフラストレーションを感じたものさ。今なら好きなことができるし、何か形にしたいと思ってる。ほかのアーティストとコラボしたり、新人バンドと契約したり……。何しろ僕は、安くアルバムを作る方法に精通しているからね。プロデュース業を始めた頃は、サブポップやタッチ&ゴーといったインディ・レーベルのために、5千ドルでアルバムを作ったものさ。それはそれで楽しかったし、またそういうことをやればいい。面白くて、楽しくて、チープなアルバムを作って、世の中に送り出すのさ。僕らみんなが気に入る、いいアーティストが見つかりさえすれば、ぜひやりたいと思ってるよ。

ーーアルバムの話に戻りますが、誰かゲストはいるんですか?

僕ら4人に加えて、ツアーにも同行してくれているエリック・エイヴァリーが2曲でベースを弾いていて、ベックのバンドのメンバーでもあるジャスティン・メルダル・ジョンセンも数曲でベースを弾いてる。あとは、『I Hate Love』にストリング奏者が、『Sugar』にミュージカル・ソーのプレイヤーが参加していて、あれはかなり興味深かったよ。実際に木を切る時に使う鋸を弾いて、奇妙なノイズを立てるんだ。『Sugar』の不気味な音は全部そうさ。

ーーそういえば、あの曲といい、今回のアルバムのよりムーディーな曲は、あなたがその昔「気が滅入るような作品を作りたい」と言っていたことを思い出させました。

そうそう、思い切り音を削ぎ落した、レナード・コーエンの曲みたいなのを作りたいんだよね。それを今回実行しようとも思ったんだけれど、曲を書き始めてみるとロックな曲ばかり生まれてしまったんだ。たくさんエネルギーがあったからなんだろう。でも次は実行できるかもしれない。そういうアルバムを作れたら素晴らしいと思うんだ。The XXみたいな感じなのかな。いつもレナード・コーエンの名前を挙げるんだけれど、シャーリーの声が主役で、アレンジはミニマリスティックで……。アルバムじゃなくても、アンプラグド的なツアーをすることも可能だよね。アコギ2本と、少々のパーカッションだけで。それも楽しいんじゃないかな。

ーーここにきてあなたたちは、アルバム〜長いツアー〜アルバムというサイクルを打破したわけですが、今後はよりフレキシブルに活動してゆくつもりですか?

1年半ツアーを続けるなんてことは、もうやらないと思う。現時点では8月までライヴ日程が決まっていて、もしかしたら秋にもプレイするかもしれない。本格的にツアーを始めた時点で、様子を見ようってことにしているんだ。かといって長く空白を開けるつもりもないし、来年もライヴができればと思ってる。とにかく、一旦始めたら何とかなるだろうし、自分たちがプレイしたい時にプレイできるんじゃないかな。でも、以前のように延々ツアーを続けたりはしないよ。僕には6歳になる娘がいるし、ずっと留守にはしたくない。ま、そんなこと言ってるけれど気が変わるかもしれないし、半年後にまた話をする機会があったら、同じ質問をしてくれよ(笑)。

(インタビュアー:新谷洋子 日時:13/03/2012)

Shirley Manson(シャーリー・マンソン) Butch Vig(ブッチ・ヴィグ)