Q:『THE ULTRA ZONE』を取り掛かる時のヴィジョンは?
A:このアルバムに取りかかる前に思ったのは、ストレートなギター主体のアルバムにしようということだった。ライヴでプレイしやすい曲にしてさ。(笑)でも、実は心にひっかかっていた曲の数々が他にもあったんだ。すごくきれいな曲で、このアルバム用に元々考=えていたものとは違っていたけど、そっちの方も採用して良かったと思っている。それを=入れた方が、俺というミュージシャンをより総合的に表現できると思ったからだ。
それで何故『THE ULTRA ZONE』かというと、俺は、音楽を聴いている時は人と話ができないんだ。バックに音楽がかかっていると、耳がいつも音楽の方へ行ってしまうんで、会話に集中することができないからだよ。今こうして話している間ももし音楽がかかっていたら、話ができないだろう。それは、俺が音楽をすごくパワフルなものとして感じたいからなんだ。音楽を聴いて感動したいからだ。いわゆるBGMと呼ばれているものはかかっててもいいんだけど、俺が聴きたいと思うような音楽は俺を別世界へと誘ってくれる。俺の心を捕らえるような音楽、人間としての俺を感動させられるような音楽を俺自身作りたいわけだけど、曲作りの際にそういう精神状態でいられる時、あるいはとてもエクストリームな音楽を聴いている時の精神状態、それを『THE ULTRA ZONE』と呼んでいるんだ。
Q:日本の音楽ファンとしては、B'zとのコラボレーションの話題は避けられないところですが、彼らと意気投合することになった経緯を教えてください。取材のたびに聞かれてウンザリしているかもしれませんが。
A:TAK(松本)が優れた日本のギタリストであることは知っていたんで、俺が編集したアルバム『MERRY AXEMAS』に参加してもらおうと思っていたんだけど、スケジュールの都合でそれは 実現しなかった。彼とは何度か会ったこともあったけど、B'zがどれだけ人気のあるグループかってことは知らなかった。でも今回のアルバムをやることになった時、彼らとコラボレーションしようかというアイディアが持ち上がったんだ。俺には日本に忠実なファンがいるから、日本のアーティストと共演するのもいいかなと思った時に、B'zの名前が挙がったんだ。そして彼らの音楽を聴いてみたところ、すごく驚いた。とってもよく出来ていたし、とってもパワフルだった。B'zの曲はポップなのに、TAKのギターの弾き方はとってもエキサイティングだ。こういうのはアメリカにはないね。アメリカのポップ・ミュージックのギター・ソロは結構退屈でイマジネーションに欠けるところがあるのに、彼のギターの使い方や曲作りの仕方には興味をそそられたよ。それにプロダクションもとても良かったし、当然ながら俺としては歌える人間と一緒にやりたかった。(笑)だから、KOSHIと一緒にやっと一緒にやれたよ。
俺としては、最初は何を期待していいのかわからなかったけど、二人とも素晴らしい人達だった。すごく楽しかったよ。うちの裏庭にあるハチの巣(BEES、B'sとかけている)も見せたし、KOSHIには蜂蜜もあげたんだよ。インド料理も食べて、素晴らしい曲を書いた。TAKにはアンプをあげた。とっても満足してるよ。
Q:では、B'zとのレコーディングは十分に楽しめたんですね?
A:そうだよ。プレッシャーなんかまるでなかった。俺が他人とあんまり一緒にやらないのは、俺の音楽を本当に楽しんでくれる人達以外とはやりたくないからなんだ。その方が相手にとっても俺にとってもやりやすいだろうしね。俺と一緒にやるといい宣伝になるからってやりたがる人達もいるけど、B'zの場合はそんなんじゃなかった。彼らは既に人気があるんだからね。でも俺の音楽を気に入ってくれたから良かったんだよ。人間的にも素晴らしかった。KOSHI(稲葉)とはいまだにEメールのやりとりをしているし、俺のニュー・アル バムを送って日本で一番最初に聞いたのも彼なんだ。
Q:あなたのアルバムで他のギタリストがギターを弾いているという事実だけでもある意味オドロキなんですが・・・こういうことは初めてですよね?
A:そうだよ。俺のやっていることに合わせられる他のギタリストを見つけるのは、みんなが思ってるよりも難しいと思うんだ。音楽的にある程度のレベルに達していないといけないけど、彼のプレイを聞いた時は大丈夫だと思ったね。
Q:アルバムは「THE BLOOD AND TEARS」でインドの匂いを漂わせながら始まり、「ASIAN SKY」でアジアの空の広がりをもって幕を閉じるわけですが、あなたの中でアジアというのは依然として神秘的な場所なのでしょうか?
A:昔からそうだったよ。まだ学校に通っていた子供の頃、壁に大きな地図が貼ってあったんだ。「ここがアメリカで、ここが君の住んでいるところ、そしてここがカナダで、他にもいろいろな国がある」、なんて先生に言われていたけど、それよりず〜っと遠いところにアジアがあったんだ。アジアがアメリカとどう違うかってことを先生はいろいろと説明してくれたけど、いつもそこは遠くて興味深い場所に見えた。でも行きたいけど一生行くことはないだろうなとも思っていたよ。だから俺はすごくラッキーなわけだ。アジア中を探索することができたし、異文化に接することもできたし、様々な人々に会うこともできた。素晴らしい経験だったよ。でも世界は見て歩かないとね。そうすれば、文化によって音楽やメディアや本や食物に対する反応の仕方が違ったりするのがわかって、自分の人生もすごく豊かになる。もしも俺がミュージシャンでなくてエキゾチックな場所を訪れることもなかったら、他の国々が何をしているのかわからないままでいただろう。
Q:日本のイメージは?
A:日本にもいろんなところがあって、都会もあれば地方もある。新幹線に乗って富士山を見ると、すべての神秘がそこにあるって感じがするね。でも何を期待していいのかわからなかったんで、とりあえず探索することにして、寺や博物館へ行って日本の文化に接したんだ。ショッキングな部分もあったし、予想通りのものもあったよ。 驚いたのはデパートのデカさかな。
アメリカにでかいのはあるけど、あんなのはないよ。7階全部が電化製品で埋め尽くされてるところなんかないさ。すごくたくさんの商品が所狭しと置いてあるしね。あと食物も違うし、町を歩いてるだけでもアメリカとは違うよ。ロサンゼルスとはまったく違う。メンタリティも違うしね。でも日本も年々変わって行ってるよね。
一つ気に入らないのは、町を歩いていると人に変なものを売り付けようとしたり、人をペテンにかけようとしたりするのがたいていは外人だってことなんだ。アメリカ人とかが多いけど、あれには耐えられないね。外人が詐欺を働いたり変なものを売り付けたりするのがさ。それって日本人に対してフェアじゃないから、排除すべきだと思うね。あるいは少なくとも取り締まるべきだよ。まあ、大都市はどこも同じようなものだけどね。人を食物にしようとする連中が多いけど、一生懸命働いてる人だっているわけだからね。
Q:あなたにとって、ギターとは?
A:ギターのことは今でもこよなく愛している。とてもいとしいものだし、信じられないほど表現力の豊かな楽器だと思う。自分を表現する手段としてギターを使うのは、俺にとってはとても心地よいことだ。ヴォーカルでいいこともあるけど、やっぱりギターが俺にとっての”声”なんだな。

Q:グローバルな音楽感性はどうやってみにつけたの?
A:子供の頃聴いていた音楽が、自分の興味の礎となるんだ。俺は若い頃すごく幸運でね、いろんな音楽から影響を受けた。ジミー・ペイジを含むレッド・ツェッペリンからはかなり影響されたし、ELPやジェスロ・タルといった70年代のプログレ・バンドも好きだったし、クイーンからも多大な影響を受けた。その後、ザッパやエドガー・ヴァレーズ、ストラヴィンスキー、レナード・バーンスタインも聴いたし、アンドリュー・ロイド・ウェバーやティム・ライスといったブロードウェイ音楽も好きだったし、学校の音楽の先生からはいろんなクラシック音楽も聴かせてもらった。ギターの先生からはロックやジャズを教えてもらったし、バークレーでは主にジャズを学んだ。俺が受けた教育の中で一番良かったのは、バークレーにあった音楽図書館だった。そこにはあらゆるタイプの音楽があったんで、アヴァンギャルドからクラシック、ジャズ、フュージョン、ロックまで、なんでも聴けた。もっとも、ヒップホップはまだ生まれてなかったからなかったけどね。(笑)だから、どんなジャンルだろうといい音楽はすべて好きだったけど、一番心を魅かれたのはやっぱりロックだったね。俺が一番感動したのがロックだったからだ。
Q:今後の予定は?
A:このアルバムのプロモーションをやって、9月にはリハーサルを始めて、10月から12月にかけてアメリカ・ツアーをしたい。2000年には、南米で世紀末記念ショウをやろうかと今企画しているところなんだ。あと、2週間インドへ行って、そのあとで日本へ行きたい。その後ヨーロッパ、南米、オーストラリアへもね。というわけで、来年はツアーの年になるだろう。
Q:ファンにメッセージを
A:君達が期待したものとは違うかもしれないけど、聴いたら楽しんでくれるはずだ。アルバムを何度か聴いてくれれば、君達の人生は豊かなものになるだろう。保障するよ。こういう音楽を聴けるのはここだけなんだからね。
Q:最後に。もしも今年、地球が滅亡するとしたら、残りの5ヵ月、あなたは何をして過ごしますか?
A:家族と一緒に過ごして、家族をいたわるよ。他の人間は地獄へ落ちても構わないけどさ。他にどうすればいいんだ?状況は変えられないんだろ?だったら外へ出て変えようとしても仕方がない。まずは、なぜ世界が滅亡しなければいけないのか、その原因を突き止めようとするだろうし、阻止しようともするだろうけど、手立ては何もないとわかったら、あとは愛するもの達と一緒にいるしかないじゃないか。レコードなんか作りやしないよ。そんなの無駄じゃないか。貸してる金を集金したって仕方がないし。ただ、瞑想して愛するもの達と一緒にいる、それだけだよ。



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