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ファントム・プラネットが驚くべき進化を遂げた。前作『ザ・ゲスト』からのヒット・シングル「カリフォルニア」 (「ビバヒル」×「フレンズ」と話題の米FOX大人気ドラマ『The O.C.』テーマ・ソングとしてO.A,中) に象徴されるメロディックなポップ・ロックから、まるでストロークスやフレンチ・キックスといったNY的なガレージ・ロック、そしてやはりNYのトレンドとなったエレクトロ・クラッシュのエッセンスを取り込んだアグレッシヴでタイトなサウンドを鳴らすバンドに生まれ変わったのだ。それと共にアレックス・グリーンワルドの、かつては繊細さを湛えていた低い歌声も、今ではクールで無愛想、冷笑的にすら響く。長いツアーの中で日々鍛えられていったバンドの結束力とパフォーマンスを最大限に発揮するために創りあげたのが本作『ファントム・プラネット』である。 | ||||
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ダフト・パンクの曲名でもある”Harder, Better, Faster,
Stronger(より激しく、より良く、より早く、より強く)”をモットーに、スタジオに籠もってレコーディングに入った彼らが今回プロデューサーに選んだのは、なんとデイヴ・フリッドマン。マーキュリー・レヴのメンバーでもあり、これまでフレイミング・リップス、モグワイ、ロングウェイヴといったアーティストを手掛け、緻密なスタジオ・ワークにより幻想的ともいえるサウンド作りで知られる彼が、一聴すると激しいギターリフに感情むき出しのストレート・アヘッドなこのファントム・プラネットの野心作に関わっているのは驚きである。が、セカンド以降その可能性を買い積極的にバンドにアプローチしてきたというデイヴの熱意は、バンドをも突き動かし、互いが新境地に踏み出していくという貴重な経験となったという。だが、これまでの作品でも実は無駄
な虚飾を排した美しいストイックなアレンジを聴かせてきたデイヴが、「余計なものを排除して、ハードでシンプルに表現することがロックンロールでいられる唯一の道なんだ」と語るアレックスらファントム・プラネットと共鳴したのは、必然だったのかも知れない。 勿論、今作で彼らが創りあげたサウンドは、ストゥージズやギャング・オブ・フォー、所謂ガレージ・リヴァイバルの単なる焼き直しではない。その研ぎ澄まされたエッジの奥には、これまで彼らの音楽のキーであったメロディが高らかに鳴っている(コステロ、B.スプリングスティーンらもお気に入りとか)。そして、まだ25,6才というメンバーのモダンな感性によるダブ/エレクトロニカの影響も色濃く、それら全てを貪欲に、しかも非常にタイトに織り上げたサウンドが、ただ勢いだけで走り抜ける凡百のガレージ・バンドとは全く違う次元に高めている。ちなみに本作制作中に、オリジナル・メンバーで俳優として活躍するジェイソン・シュワルツマンが脱退。そしてアレックスは音楽活動に専念するという決断をした。 LAのサバービアに生まれ、何不自由なく育ってきた“ブラット・パック”がB級SFから名を取ってバンドを結成。しかし成長するにつれその情熱はより真剣なものとなり、数々のロード、いくつもの試練を経て、遂に内なるロックン・ロールに目覚める。ある者は違う道を選び、ある者は音楽に全てをかける選択をした。こうして真のアーティスト・マインドに目覚めて創りあげたのがニュー・アルバム『ファントム・プラネット』。そう、本作が堂々セルフ・タイトルを冠しているのには、彼らの揺るぎない自信と野望が込められているからなのだ。もう誰もファントムを無視できない! |
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