「ライオット・アクト」に伴うオフィシャル・インタビュー一挙公開!!
2002年9月9日、パール・ジャムの拠点シアトルにて収録されたアルバム「ライオット・アクト」に伴うオフィシャル・インタビューを全て公開!

 ●エディ・ヴェダー(インタビュアー:新谷洋子氏)
 ●マイク・マクレディ&ストーン・ゴッサード(インタビュアー:新谷洋子氏)
 ●ジェフ・アメン&マット・キャメロン(インタビュアー:新谷洋子氏)
 ●エディ・ヴェダー(インタビュアー:染野芳輝氏)
 ●マイク・マクレディ&ストーン・ゴッサード(インタビュアー:染野芳輝氏)
 ●ジェフ・アメン&マット・キャメロン(インタビュアー:染野芳輝氏)



ジェフ・アメン&マット・キャメロン(インタビュアー:新谷洋子氏)

Q:2年前に初ライヴからの10周年を祝ってますよね。10年が過ぎて一区切りつけたことで、今回から新しいスタートを切るような気分はあるんでしょうか?
ジェフ(以下J):そうだなあ、10年目を迎えたことで、少しばかり安堵の息をついたようなところはあるよね。一番難しい部分は乗り越えたかのような。もちろんこの先も難関に出くわさないとは限らない。でも今の僕たちは山のような自由を手にしているんだ。好きなように音楽を作り、好きな時にレコーディングしてアルバムをリリースし、好きなだけツアーをする。……それが許される、素晴らしいポジションを確立できたと思うよ。
Q:では今年始めに5人が再会した時は、バンドとして何か意思統一はできていたんですか?
マット(以下M):特にそういうものはなかったんじゃないかな。ただ集まって……のちにアルバムを形成することになる幾つかの曲のレコーディングに取り組んだ、というだけだよ。それは、いろんなアイデアの中から不要なものを取り除いて、一番強いもの、もしくは一番強いと僕たちが感じたものだけに絞ってゆくというプロセスなんだ。で、一旦曲のアイデアを絞って仕上げを施し、ミックスなんかを進めた時点で、ようやく立ち止まって振り返り、自分たちが作り上げたものが何なのか検証を始めるわけさ。エモーショナルな面で言えば、僕たちは全員、このアルバムに意気揚々と取り掛かったと言えるね。いい気分だったし、意欲たっぷりで。そして最終的に非常に力強い作品が出来上がったと思うよ。
Q:音楽作りのプロセスの中では様々な局面で決断を要するだろうと思いますが、どんな判断基準を設けているんですか? 全員が納得する、ということに尽きるのでしょうか?
J:そんなところだね。僕たちはそれほど、わざわざ膝をつき合わせて方向性を話し合うってことはしないから。……それぞれが自分が書いてきた曲を聴かせて、リフをプレイし合って……そんな中から何かが形になってゆくんだ。アイデアのひとつを誰かが気に入って、“なあ、これをトライしようよ”と提案する。そういうアイデアが20個くらい集まった頃に、だいたい全体像が見えてきて上限に達するわけさ。さらにその中でも幾つかの曲がいい感じにリンクしていって……それらが最終的にアルバムを構成するんだよ。
Q:それまでは、いちいち自分たちがやっていることに意図を探したりはしないってことですね。
M:うん、こうして取材を受けている今、まさにそれをやろうとしてるんだよ(笑)。僕個人としては……音楽的に非常に完成されたアルバムができたと感じてるけどね。
Q:アルバムを聴いていて、リズムの面で非常にヴァラエティが広がったようにも感じました。例えばシングルの『I Am Mine』はワルツだったり、『You Are』ではエレクトロニカ風のビートを使っていたり。そういったヴァリエーションも意図したものではなく、自然に導き出されたものなんですね。
J:ああ。みんな種々雑多な音楽を聴くから、様々なサウンドの影響が自然に表面に出てくるんだ。……少なくとも僕の立場から言えることは、メンバーそれぞれが曲を作って持ち寄るわけだけど、やっぱり自分の曲に対してはみんなそれなりにこだわりや思い入れがあるんだよ。でもその曲を一旦バンドに提供してしまった後は、全員が共有する。そこから曲が進化してゆくのさ、かなり速いスピードで。そこが面白いんだよ。誰ひとりとして実験を恐れていないから、勝手におかしなことを試したりする。例えば……ドラムマシンを持ち出してみたり、もしくはヴォコーダーをかけて歌ってみたり、なんでも思いついたらやってみる。そうすることによって曲が違う方向へ発展したりする。僕自身はそういう、少しばかり風変わりな要素を含んだ曲に惹かれるタイプなんだ。
M:だから手法は様々なんだけど、究極的にはパール・ジャム特有のサウンドになるのさ。このアルバムで僕たちが成し遂げたのは、そういうことなんだ。
Q:プロデューサーのアダム・キャスパーはマットの推薦で選ばれたと聞きましが、彼を薦めた理由は?
M:なぜって、僕のダチなんだよ。ヤツが好きだから(笑)。
J:それに前回僕たちはマットをチャド・ブレイクと組ませちゃったから、今回は彼に選択権を与えるべきだと思ったんだ(笑)。
M:(爆笑)
Q:ってことは、チャドとうまくいかなかったんですか?
M:まあそんなところだね。アダムとは以前にも一緒にレコーディングした経験があるんだよ。で、彼ならこのバンドに、これまでとは違う新しい種類の音質的アプローチをもたらすことができるんじゃないかと思ってね。かねてから僕は、パール・ジャムのギターの重なり合いが素晴らしいと感じていたんだ。その、左右に振り幅のあるクールな重なり合いがね。アダムはそれを前面に押し出してくれるような気がしたのさ。それに低音部のトーンを強調してくれたところも気に入ってる。だからアダムとの相性はすごく良かったと思うよ。エディも彼を気に入っていたしね。結局のところ、シンガーとプロデューサーが意気投合するってことが、レコーディングにおいては非常に重要なんだ。たいていの場合、彼らが一番多くの時間を一緒にスタジオで過ごすことになるから。でもとにかく、いい結果が得られたよ。アダムはすごく気さくでイージーゴーイングなヤツなんだ。
Q:今回の詞は一言で言うと、大きく動いている今の時代をそのまま映しているような感じです。ここで扱っているテーマや表現されている想いというのは、全員が分かち合っているんですよね。
J:そうだね。いろんな候補があった中でこれらの曲に僕たちが惹かれたのは……多分みんなが似通ったものに関心を抱いていて、多くの経験を共にしているからだと思うよ。だから僕たち全員の想いが絡み合っているような趣があるんじゃないかな。みんなが持ち寄った詞に親近感を覚えたからね。僕自身もエディが書く詞には常に親近感を覚えてきた。なんらかの形で僕自身の感情を代弁していると感じなかったケースは、ごく僅かだよ。だからこそ僕たちは……今も一緒にいるんじゃないかな。そして一緒に音楽作りをしたいと望んでいるんだよ。
M:エディは何も隠さないからね。開けっぴろげにして提示するんだ。それは非常に健全なことだよ。
Q:でもおふたりも詞を提供してますよね。
M:ああ、ふたりともね。
Q:どの曲ですか?
M:僕は『Get Right』の詞と『You Are』の一部分。
J:僕は……『Help Help』と『Ghost』だ。
Q:表現がストレートなのも今回の詞の特徴ですよね。
J:それはエディの意思による部分が大きいと思う。僕の場合はそれほど有能なリリシストではないから、ダイレクトとか非ダイレクトな表現に意図的に操作することなどできないよ。だいたい限られた語彙しか持っていないから、その範囲内で毎回書いてるからね。でもエディはそういったことに関しては名人なんだ。表現方法を選ぶことができるのさ。……実際には一人称ではないシチュエイションでありながらも、一人称で成立させてしまうことも、彼になら可能なんだよ。
M:うん。
J:彼は本当に名人だ。だからそういう傾向に導いたのはエディなんだよ。
Q:で、タイトルがまだ決まってないというのは、単に完成して間もないからなんでしょうか? それともいつもより選ぶのに苦労しているのですか?
J:それもまた、全体的プロセスの一環なんだよ。全員がいろんなタイトル案を挙げて、しばらく時間をとってそれらをじっくり検討するのさ。例えば『Yield』の場合は、レコーディングが半分も終わらないうちにタイトルが決まっていた。で、そのタイトルをもとにアートワークをデザインしたのさ。でも今回は、アートワークというか、少なくとも基本になる写真は最初からあった。そしてその写真を眺めながら、アルバムに含まれたテーマをいろいろ思い浮かべて様々な意見をやりとりしてるんだけど、いまだにこれというタイトルが出てこないんだよ。
Q:もちろん我々はまだアートワークを見てはいないんですが、バンドのアート・ディレクターの立場からそのコンセプトを説明してもらえますか?
J:う〜ん……それが結構難しいんだよね(笑)。実は僕がバンドの中で一番、タイトルになる言葉選びに苦労したんだ。多分それは、いや、本当の理由は分からないけれど……僕が今回のレコーディングを通じて、ある特定のイメージを心に抱いていたからなんだと思う。だからそれが引っかかっていて言葉に辿り着けないんだろうな。……その、僕の心にずっとあるイメージというのは……人々が大勢集まり、様々なものに囲まれていて、外から観察していると人間は仲間や愛情に包まれているように見えるんだけど、実際にはその人間は孤独極まりない気分だったりもする――。そんなことを始終考えながらアルバムを作っていたんだよ。歌詞を読んでの印象や曲のテーマや全体的なフィーリングとか、いろんな要素に起因していると思うけど、それが僕なりの解釈ってことさ。多分……何よりも僕自身の人生で起こった事柄に大きく影響を受けているんだろうけどね。
Q:では、このアルバムはパール・ジャムというバンドが今いる場所についてどんなことを物語っていると思いますか?
J:“第二章”の始まり? なんだろうな……まだ続きがあるような気がするよ。
M:ああ。とにかく……誠実であるよう努力するしかないんじゃないかな。自分たちが考えていることに対して可能な限り正直でいて、そして……それらを筋道立てて提示するしかない。特定の事柄に縛られないようにしながら。
Q:これまであなたたちはほとんどマスコミには登場せずに過ごしてきたわけですが、今回は積極的に取材をこなしてますよね。
M:うん、山ほどやってる!
Q:例えば去年も『SPIN』誌で10周年に際しての回顧的な特集があって、みんなが非常にオープンに話していてびっくりしたんですが、こういった最近の傾向はバンドの自信の表れなんでしょうか?
M:僕たちはただ、このアルバムについては自信を持っているってことさ。だから人々に聴いてもらいたいと望んでいるんだよ。
J:時によっては、別に何も話すことなどないと感じることもあるんだ。で、今回の場合は、このアルバムに僕たちがすごく興奮していて、そして……もしかしたら今の世界情勢を見渡した時に、人々は話し合う必要があると率直に感じずにはいられなかったんだよ。誰もが自分の考えをお互いに語って聞かせるべきだ、とね。いや、厳密な理由など分からないけど、とにかくコミュニケートすることが非常に重要な時期にあると感じるんだ。そんな想いが僕たちをよりオープンにし、メディアに参加することを自分たちの仕事の一部として容認することから抵抗を取り除いてくれたんだと思う。なにしろ7年前は、全く話をする気にはならなかったからね(笑)。最初の2枚のアルバムを作ったあたりで、散々取材を受けて、もうその必要を感じなくなったんだ。それからしばらくの間は黙りこくって……充電してたのさ。
Q:その世界情勢の話ですが、そういう話題はやっぱり5人の間でも頻繁に会話のトピックとして出てくるんですか?
J:ああ。顔を合わせる度にね。誰かが何かニュースを耳にしてきたり、何かを読んだりして得た情報をネタに、議論を交わすんだ。時には、そういうストーリーを苦心して探し出してくるから、なんだか他人に自分の秘密を明かしているような気分になるよ(笑)。それもまた幸運なことだけどね。そうやって何かを分かち合ってるわけだから。
Q:例えば、バンドがキャリアを重ねてヴェテランの域に達すると、音楽シーンとの接点や影響力みたいなものを自問し始めたりしますよね。自分たちは果たして世界に対してまだ意味を持っているのか、と。現時点のパール・ジャムはどうでしょう?
M:そうだな、僕たちには大勢のオーディエンスがいるから、そういう意味では今も意味を持つバンドだよ。それに、僕たちにはオーディエンスと心を通わせるよう努力することしかできないんだ。全ての人を満足させることはできないからね。実際、世界中を味方にすることはできないし、バンドとして自らに正直でいて、ファンがついてきてくれることを願うだけさ。でも世界における存在意義というのは、僕にはどう捉えて分からない。自分を偽ったり、音楽が本来あるべき姿に正直でなくなった時に、存在意義を失ってしまうんじゃないかな。このバンドは、自らに厳しくあることを心がけていると思うよ。
Q:最近、“90年代のバンドはどこへ行った?”というテーマが雑誌なんかでよく取り上げられてますよね。実際マットのバンドも今は無くなってしまったわけですし……
M:(泣きまねをする)
Q:サウンドガーデンのケースはどのように捉えているんですか?
M:バンドの寿命っていうのは、だいたい5年もてば十分だと思うんだ。だから……結成10年目とか10年を過ぎたあたりで解散してしまうのは、ごく自然なんだよ。で、サウンドガーデンの場合は、エネルギーを使い果たしたという感じだった。あの時点ではもはやバンドとして正常に機能していなかったんだよ。だから寿命を全うし、ありがたいことに解散の道を選んだ。でも……それが物事の摂理なんだ。
J:そうそう、最近気づいたんだけど、パール・ジャムのドラマーとしてマットは最長在籍期間を更新したんだよ。これまで5,6人交代してるんだよね。だから、それも今の場所に辿り着くために必要なプロセスの一環で……
M:バンドの完成に必要な最後の一コマが僕だったんだよ(笑)。
Q:では、同世代のバンドが淘汰されてゆく中で生き残れた理由はなんだと思いますか?
J:そうだな、もちろんこれまでに、もうだめかなと思った時期もあったよ。でもそういう辛い時期には、いつもどうにか同じ部屋に全員が集まり、話し合うことで解決できたんだ。でも……僕はずっと、このバンドについて確信を持っていた。僕たちは一緒に音楽を作り続ける運命にある、とね。それに、例えば1年とか9カ月とかオフをとる必要があるなら、それも結構。そうするとなんだかんだ言って、次に会う時が待ちきれなくなるんだよ(笑)。それもクールなことだよね。しばらくの間、お互いに距離を置くのも重要だと悟ったのさ。



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