ケント・モリ×西寺郷太 対談「マイケル一周忌によせて」

6月25日のマイケル・ジャクソン一周忌に合わせて様々なイヴェントが企画されているが、なかでも音楽ファンにとって嬉しいのが
マイケルのソロ6作品と長らく廃盤になっていたジャクソンズ時代の7作品の計13作品が、完全な形で一挙に再発されることだろう。
そこで、限りなくマイケルを愛し、リスペクトする二人によるスペシャルな対談が実現した。
ひとりは、今回の13作品に入魂の「マイケル・ジャクソン・ストーリー Vol.1〜Vol.13」を寄稿したノーナ・リーヴスの西寺郷太氏。
そしてもうひとりは、マイケル最後のツアーになるはずだった「THIS IS IT」のダンサーに難関を突破して選ばれた
若き世界的ダンサーのケント・モリ氏。この二人がマイケルへの思いを熱く語り合った約1時間半をまるごとお届けします。

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――今日はマイケルを愛するお二人に、マイケルへの思いを語り合っていただこうと思うのですが、まずはマイケル・ジャクソンとの最初の出会いから聞かせていただけますか?

  • ケント

    『ヒストリー』です。で、Disc 1の1曲目が「ビリー・ジーン」でしょ? それを聴いた瞬間、もう驚いたなんてもんじゃなくて、全身に稲妻が走り、血液が沸騰したような感じになって(笑)。血わき肉躍るというか、一瞬、時が止まったように感じたぐらいの衝撃を受けましたね。で、すぐに叫び出して、飛び上がっちゃった。

  • 西寺

    すごい。ダンサー、ケント・モリの誕生だ(笑)。

  • ケント

    それまでダンスを意識したことなんてなかったのに、思わず身体が動き出しましたからね。それで恋に落ちて、今に至るという(笑)。郷太さんは?

――そのオーディションの様子を聞かせてもらえますか?

  • 西寺

    ケント君は大変なオーディションをいろいろ受けてきてるだろうけど、マイケルのオーディションは他とは違ったと、話してくれたよね。ぜひ詳しく聞かせてほしいな。

  • ケント

    まず規模が違いますね。何万通という応募の中からLAのオーディションに行けたのが3000人だったらしいんですけど、人数だけでも凄い。しかも、普通、会場はダンス・スタジオなんだけど、マイケルのオーディションはNOKIAシアターっていう大きな劇場でやったんです。でも、何よりも凄かったのは参加者の熱気でしたね。みんな“これはマイケルのオーディションなんだ!”って興奮してるんです。僕もそのひとりだったわけですけど、そういうひとりひとりの思いが3000人分集まっているわけで、そのエネルギーの凄さは今まで経験したことのないものでした。でね、そこにいるみんなが、夢しか見てない感じなんですよ。これに受かればギャラはいくらだとか、この仕事がやれればオファーが殺到するぞとか、そんなことを考えてるヤツは、まずいなかったと思う。それくらい本気。だって、マイケル・ジャクソンに選ばれるということは、何物にも代えられないもの。ダンサーとしての夢がそこにあるんですから。

  • 西寺

    その体験は凄いなぁ。世界最高レヴェルの、みんなの夢が、まさにそこに「ある」んだもんね。

  • ケント

    はい。あのね、トップ・ダンサーになればなるほど、マイケル・ジャクソン・フリークなんですよ。トップに上がってきたダンサーは、みんなマイケルのエッセンスをもってる。身体の動きにしても何にしても、突き詰めていくとマイケル・ジャクソンに行き着くんです。アーティストもそうなんじゃないですか? ビヨンセ、アッシャー、クリス・ブラウン、みんなそうでしょう?

――それを、再発される13枚のCDで確かめてほしいですよね。

  • 西寺

    そうそう。この13枚は、永遠のクラシックスだから。今回、音楽評論家の出嶌孝次さん、高橋芳朗さんによる新しく詳細なアルバム解説と、僕が書いた「マイケル・ジャクソン・ストーリー」が入って、きっちりライナーとして世の中に出るっていうのは、意味のあることだと思ってるんだよね。デザインもスタッフの皆さんが色々と知恵を絞られた結果、13枚を並べると帯の背の部分がひとつの絵になってたりもして。もしマイケルがこのCD達が並んでいるのを見て、“ワオッ!”って喜んでくれたら嬉しいなぁと思ってました。

――最も思い入れのあるアルバム、或いは曲をそれぞれ挙げていただけますか?

  • 西寺

    わかる(笑)。でも、俺も1枚をあえて挙げるなら、ケント君と同じように初めて自分が買った作品になるかな。それが、ジャクソンズの『ヴィクトリー』。ミック・ジャガーとの「ステイト・オブ・ショック」とか、とにかく好きな曲だし、LPに入っていた吉岡正晴さんが書かれた『ヴィクトリー』のライナーノーツの中のマイケルの歴史を一字一句覚えるくらい熟読して、そこからマイケルを好きになったんだ。とにかく、ソロだけじゃなくてジャクソンズの良さもこの機会にぜひ、新しいファンに知ってもらえれば嬉しいです。

  • ケント

    当時の音楽の温かみとかノリって、ダンサーとしても好きな部分なんですよ。何よりも人の心を動かしますよね。

  • ケント

    あっ、マイケルのオーディションで、みんながステージに上がってアップする時に一番最初にかかった曲が「キャン・ユー・フィール・イット」で、僕、すごい感動したんですよ。大好きな曲だっていうのもあるんだけど、“今、ここにいることを、二度とないこの場所にいることを感じているか?”っていうマイケルのメッセージをもらった気がして、“これだ!”って思ったんです。

  • 西寺

    お〜、今、全身鳥肌立った(笑)。

(取材・構成/染野芳輝)

ケント・モリ、西寺郷太 記念写真

ケント・モリ 写真

ケント・モリ 1985年3月3日、愛知県生まれ。2006年 単身渡米。2008年 マドンナのワールドツアーダンサーに抜擢される。2009年 マイケル・ジャクソンによって専属ダンサーに選ばれるも、自ら辞退。2010年 ダンサーとしてアメリカ永住権を取得。チャカ・カーンの専属ダンサーを務めながら、日本を含む世界を舞台に活動の場を広げる。これまで世界35カ国、70以上の都市でパフォーマンスを行っている。2010年6月25日、マイケル・ジャクソンの一周忌に最初で最後の自叙伝「Dream&Love」を上梓。

「Dream&Love」マイケル・ジャクソンとマドンナが奪い合ったある日本人ダンサーの物語 6月25日発売 税込価格\1,575 扶桑社

西寺郷太 写真

西寺郷太 1973年東京生まれ京都育ち。早稲田大学第二文学部卒。バンド「NONA REEVES」のヴォーカリストや音楽プロデューサーのかたわら、マイケル・ジャクソン研究家としても各メディアで活躍。雑誌「SPA!」での連載、TBSラジオ「小島慶子 キラ☆キラ」でのレギュラーも好評。著書に「新しい「マイケル・ジャクソン」の教科書」(ビジネス社)「マイケル・ジャクソン」(講談社現代新書)がある。

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