ディック・リーからのメッセージ

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ニュー・アルバムの準備をするのは、いつもワクワクさせられるものだ。使えるマテリアルに膨大な可能性があるからね。そしてこれはいつも、全プロセスの中でもっとも楽しい部分なんだ。

過去2・3枚のアルバムで、僕は自分の音楽に対し、ある基本的な心構えを持って仕事をしてきた。たとえば、新しいアジア音楽のアプローチで取り組んでみたり、最近の『トランジット・ラウンジ』ではよりファッショナブルで、クールで、レトロなクラブ・サウンドを狙ってみたり、というように。

このアルバムにアプローチするにあたって、僕はそういう前もって考えておいたアイデアをすべて放り出して、自分の魂を奥深く掘り下げ、自分の音楽とは本質的に一体何なのかを見つけだしてみようと思ったんだ。 

僕がいちばん大切にしている持ち物のひとつに、長年の間に書き貯めた歌が載っているソングブックがある。完成した歌であれ、詞の断片であれ、それらは僕の音楽的記憶のコレクションになっている。ひとつひとつの歌が、僕の人生のある時点で起こった出来事を思い出させるものになっているんだ。だから、このアルバムでは自分の音楽に対して極めて誠実でウソのないアプローチを取ることにし、僕が1973年から書いてきた歌を取り上げてみた。

初期の頃に書いた古い未発表の歌もあれば、他のシンガーのために書いた歌のカバーも、あるいはこのアルバムのために書いた全く新しい曲もあるけれど、ここに収められた曲はすべて身の周りに起こった人間関係について歌っている。その意味で、本当の人間的感情に溢れたとてもリアルな作品になっている。また、この感情を飾り立てるというよりはより高揚させるような音楽的アレンジを取ることによって、誠実さを保つよう努めた。こうして作品をプレイバックして聴いてみると、歌そのものの「リアルさ」と明快さを楽しむことができる。リスナーのみなさんにもそんな気持ちで聴いてもらえたら、と願っています。