BRUCESPRINGSTEEN

「ワーキング・オン・ア・ドリーム」の始まりについて少し書いてみよう。

「マジック」のミキシングをやっていた最後の数週間の間に、〈ホワット・ラヴ・キャン・ドゥ〉と言う曲を録音したんだ。“ブッシュ政権時代における愛”について考えてみたような感じの曲だった。素晴らしい曲ではあったけど、「マジック」に合う曲というよりは、新しいアルバムの1曲目の方がふさわしいように感じられたんだ。それで、プロデューサーのブレンダン・オブライエンが「じゃあ、今すぐもう1作作ってしまおうじゃないか!」と言われたけど、1年に2作もアルバムを出すなんてデビューの時以来やっていなかったから、俺は乗り気じゃなかった。それに、普段はそんなに早く曲を書かないしね。

でもその晩アトランタの宿に戻って、それから1週間の間に、何曲か書いたんだ(〈ディス・ライフ〉、〈マイ・ラッキー・デイ〉、〈ライフ・イットセルフ〉、それから〈グッド・アイ〉と〈トゥモロー・ネヴァー・ノウズ〉)。それらが新作の前半を形成することになった。「マジック」で作ったサウンドに心が躍っていた俺は、この調子でやっていくのに十分すぎるほどの燃料が有り余っていることに気づいたんだ。スタジオを出る前にこれらの曲を視聴したブレンダンと俺は、ツアーの年の合間に何とか時間を見つけてこのアルバムを完成させようということで合意した。

ブレンダンと一緒にやるようになって10年余り、アルバムを完成させたり、様々なプロジェクトに同時に着手したりする能力(そう、俺たちはマルチタスクなんだ!)を培ったことで、最高の音楽をより着実にファンに届けるための流れを作ることができるようになった。こういうことをずっとやりたかったんだ。

俺たちは時間を作ってセッションをブッキングして、ツアーが終わったばかりの頃にバンド・メンバーを集めて、曲を書いて、新しいアルバムをレコーディングするのと同時進行で、Eストリート・バンド始まって以来の最高のショウをオーディエンスに見せていたはずだと思っている。このアルバムを聴いてもらえることに心躍る思いだよ。そんなプロジェクトのそもそもの始まりについて一言書きたかったんだ。

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