『ボブ・ディラン・モノ・ボックス』には、ボブ・ディランの最初の8枚のアルバムが収められている。しかも当時のディラン自身が意図したアルバムの本来のサウンド、ひとつのチャンネルから飛び出すパワフルな、直接的で即効性を持っているモノラルミックスを入念に再現している。1950年代半ばには、すでにステレオ・レコーディングの技術が開発されていたが、1960年代のトップアーティストたちは、あいかわらずモノ・レコーディング、モノ・ミキシングを好んだ。結果として、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、ボブ・ディランも自分たちはモノ・ミックスに全情熱を注ぎ、ステレオ・ミックスはエンジニアに任せていた。
『ボブ・ディラン・モノ・ボックス』には、ボブ・ディランの貴重な写真と著名な評論家であり長年にわたるディラン愛好家でもあるグリール・マーカスのすばらしいエッセイを掲載した豪華なブックレットが添付されている。また、それぞれのアルバムは1枚ごとにオリジナル・アートワーク、1960年代に発売されていたのと同じように、ステッカーやレーベルを忠実に復刻した紙ジャケットに入れられている(日本盤は独自に日本制作での紙ジャケ化。海外サイズとは異なる日本製紙ジャケ・サイズ13.5cmX13.5cmで、オリジナルMONO LPから精巧に再現)。
1962年3月に発売されたデビュー作『ボブ・ディラン』から、1968年1月に発売された『ジョン・ウェズリー・ハーディング』までの8枚のアルバムは、レコード史上に輝く重要な作品とだれもが認めている。『ザ・ウィットマーク・デモ』と『ボブ・ディラン・モノ・ボックス』をあわせ聞けば、1960年代のボブ・ディランの幅広い作品を知ることができるし、駆け出しのソングライターから、世界でもっとも創造性に富む傑出したレコーディング・アーティストに成長していった驚異的な年代記でもある。