2000年2月7日。 ミュージックシーンの大切な才能をまた、一人失ってしまった。
「BIG PUN 心臓発作で死す」の訃報。このニュースに世界中が悲しみにつつまれた。
とりわけ、地元ニューヨークでは、その衝撃は大きくニューヨークポスト誌では、
記事を1面に大々的に取り上げ、またラジオ HOT97 では1日中追悼番組を組むという
状況となった。

アメリカで HIP HOP は、既に非常な大きなマーケットとなっているが、 それでもセールスとストリートからの支持の両立のできるアーティストは少ない。 基本的に売れたアーティストはストリートからの支持を失っていく傾向にあるからである。 (セル・アウトと呼ばれる)ストリートからの支持を失わず、かつ幅広い大衆からも絶対的な人気を持つ。 そんな非常に少ないラッパーの1人が BIG PUN であった。 実際、前作であり、デビュー作にあたる「CAPITAL PUNISHMENT」は98年にリリースされ、 ベスト・ラップ・アルバムとして、この年のグラミー賞にノミネートされ、 ダブル・プラチナ・セールスを記録している。 また、現在ヒット中のジェニファー・ロペスの「Feelin' So Good」にもコラボレーション参加するいっぽうで、 THE BEATNUTS の「Off The Books」等、クラブやストリートで大ヒットした曲にも多数参加しており、 絶妙なバランス感覚を持つラッパーであった。 そんな BIG PUN の魅力は、当然ライム・スキルや声の良さもあるが、 一度見たら忘れない彼の風貌と唯一無二の存在感=つまりキャラクターにあり、 それが何よりも幅広い層のファンに愛された理由だろう。
さて、本当に待望という言葉がふさわしい BIG PUN の新作「YEEEAH BABY」
シーンからの期待も非常に大きかったニュー・アルバムは、前作を上回る傑作となっている。 これが、遺作となってしまったのは本当に残念でたまらないが、遺作にして、最高傑作といえる。 「YEEEAH BABY」の収録曲を紹介しよう。まず、3曲目の「It's So Hard」は、 シングル「You Know What's Up」が全米チャートでも絶好調だった DONELL JONES が参加。 すでに NEW YORK のラジオ HOT97 では、AIRプレイされており、日本でもクラブヒット間違いなしといったところ。 アルバム発売後にシングルカット予定。続いて、8曲目の「Leather Face」はストリート向けのシングル。 また、M.O.P参加の6曲目「New York Giants」は期待通りの勢いのある<血が煮えたぎる系>のナンバー。 さらに、アルバムのラストを飾る16曲目「You Was Wrong」は、盟友 FAT JOE と 今乗りに乗っている RUFF RIDERS から DRAG ON をフィーチャーしており、UNDERGROUND では、話題となること必至。 以上、突然の死とはいえ、まるで最後の力を振り絞ったかのような、捨て曲ナシの素晴らしいアルバムとなっており、 はやくも2000年の HIP HOP を代表する1枚である。


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