<モデスト・マウス オフィシャル・インタビュー by新谷洋子>
アイザック・ブロック(2007年5月4日)
Q: 今グリーンズボロにいるんですよね。
I: そう、ノース・キャロライナのグリーンズボロだ。
Q: ツアーの調子はいかがですか?
I: そうだな、いい日もあるし、すごくいい日もあるし、あんまり良くない日もたまにあるけど、
全体的にはかなりいい感じに進んでいるよ。
Q: 全米1位、おめでとうございます。このニュースを聞いた時、どこにいました?
I: 自宅にいて、オレはたいしてすごいとは思わなかったけど、ほら、家族とかスタッフはすごく喜んでいたよ。
Q: 2年前のインタヴューを読んでいたら、「次のアルバムを出す頃には人々はオレたちのことなんか忘れてる」
と語っていましたが、予想がはずれたようですね。
I: そういうことになるんだろう。それって、なんだか悲しい予想だよね。でもオレは間違っていたみたいだ。
Q: あなたたちに限らず最近はザ・シンズやアーケイド・ファイアやブライト・アイズなど、
インディにルーツがあるアーティストが続々成功を収めていますよね。そうした動きが、音楽シーンに関して
希望を与えてくれたのでは?
I: っていうか、オレは最初から音楽全般に希望は持っていたから。いつだっていい音楽はたくさんあるからね。
ここ数年はすごくいい状況だし、ただ単に、より多くの人が、オレがいいと思う音楽に耳を傾けるように
なったってことさ。「この状況がどれだけ続くか様子を見ようじゃないか」って感じだね。とにかくいいことだと思う。
それに、もし一般大衆の大部分がそういう音楽を聴いていなかったとしても、どっちみちいい音楽はどこかで
生まれ続けているわけだから。
Q: あなたは前作のヒットに何ら影響を受けていないと強調してきましたが、もっと若い頃に
ブレイクしていたら違ったと思いますか?
I: ああ、危険だったかもしれないね。あまり若いうちに物事がトントン拍子に進んじゃうと、
結局あとになって失望させられることになると思うんだ。それに、良からぬ注目を浴びずにバンドが
成長できる時間を確保するってのは、すごく意味があることなんだよ。オレたちの場合も、物事が
好転し始める前に、まずは何年も時間をかけて自分たちが何者でなんのために音楽を作っているのかって
ことを理解し終えていたから、すごく良かったと思う。でなければカっとなってしまっただろうし。
そういうことにならなくて良かったよ。
Q: じゃあ人々の注目をもてあましたり、イラつかされるということもなく?
I: ああ。「イラついた」という表現はあてはまらないし、もてあますこともなかったね。
Q: ヒット・アルバムを受けて新作を作るというプレッシャーも一切なかった?
I: いいや。なぜってそんなの、オレがなぜアルバムを作るのか、アルバム作りのどこが
楽しいのかってことと、一切関係ないからね。"たくさん売るためにはどうしたらいいんだろう?"
と考えながら作るわけじゃない。オレはただ曲を書いて、自分とバンドのみんながハッピーになれるよう
全力を尽くすだけ。ただ、素晴らしいプロジェクトを作り上げたいだけなんだ。
オレが心配しなくちゃならないのはそこまでで、あとは管轄外だよ。唯一オレが責任を負っているのは、
本当にいい音楽を作るってこと。でもってそれを計る唯一の基準は、オレがいいと思うか否かで、
ほかの人の意見は関係ないんだ。
Q: 前回のツアーの途中で、オーディエンスの層が変わったなと感じたりしませんでした?
I: いいや、そういうことはあんまり考えなかった。誰が来て誰が来なかったとか、逐一チェックしないからね。
ただ、オレたちのライヴにはブラックメタル・ファンはあまり来ないみたいだね(笑)。
Q: でも脱退したギターのダン・ガルッチには、許容範囲を超えていたってことですね。
I: 少なくとも彼はそう言っていたよ。ほかにもパーソナルな理由があったんだと思う。
それが何なのかオレには分からないけど。単にオレたちに付き合うのがイヤになったのかもしれないし、
彼が言った通りなのかもしれないし、奥さんと一緒に過ごす時間がもっと欲しかったのに、思っていたより
忙しくなってしまったのかもしれない。
Q: あなたの友人ジェイムス・マーサーが率いるザ・シンズも、長年インディで活動してきた末に、
モデスト・マウスと同時期にブレイクしましたよね。お互いの人生に起きたことについて、
ふたりで話をしたりするんですか?
I: 具体的に話し合ったことはないけど、ジェイムスは時折オレにアドバイスを求めるんだ。
自分と異なる視点から意見を聞きたいらしくて。健全にバンドを運営する方法とかね。なんだってオレなんかに
アドバイスを求めるのか理解できないけど(笑)。そんなわけで彼とはよく話すよ。成功云々って話題は出ないけど、
ジェイムスとオレのように同じ立場にいる人間にしか理解できないことがあるからね。バンドのメンバーよりも
分かり合えることがあるんだ。オレたちの会話を一字一句ここで再現したりはしないけど、うん、話はする。
Q: 新作に関しては、前もって温めていたアイデアなどはあるんでしょうか?
I: 曲作りを始めるまでは一切なかった。アルバムが自然に形作られるままに任せるんだよ。
6人のメンバーがいて、みんなでオレの家に集まって、曲を書いて、曲が自ずと生まれるに任せて、
そうしているうちにどういうタイプのアルバムなのか、どういうヴァイブのアルバムなのか、段々見えて来るんだ。
で、もしも補強すべき箇所があれば、そこにフォーカスしてさらに練ったり、もしも特定の方向に
傾いているように感じたら「もうこういうテンポの曲は書かないように留意しよう」と言い聞かせたり……。
でも大方は、アルバムが形作られるままに任せるよ。
Q: でも当初はコンセプト・アルバムに近いものを考えていたそうですね。
I: ああ、曲作りの段階でコンセプト・アルバムにしようかって考えていた時期があった。
でも、最初からコンセプトを決めてアルバムを作るなんて健全なやり方じゃないなと気付いたんだ。
5人の船乗りが何度も何度も繰り返し死んでしまうというストーリーを思いついて、それに準じて曲を
書こうとしたんだけど、あまり長続きしなかった。一時的なものだったよ。曲を書く前にアイデアを縛っちゃったら、
リアルな曲は絶対生まれない。だからコンセプトがあったのはほんの一瞬のことで、そうはならなかったんだ。
Q: 前作のジャケットの裏には新作のアートワークに使用された、碇がつながれた気球の絵がありますよね。
「海」や「航海」といったテーマは当時から頭にあったんですか?
I: ああ。前作ではこのテーマはより奥のほうに潜んでいて、今回はそれが表に出てきたんだよ。
だからあの絵がジャケットに相応しいと思ったのさ。
Q: 今回からジョニー・マーがメンバーに加わったわけですが、あなたは単刀直入に「バンドに入らない?」と
誘ったそうですね。断られると思ってました?
I: いいや、必ずしも「ノー」と言われるとは思ってなかった。でも、「イエス」は全く予測してなかったよ。
Q: というと?
I: つまり、どんな答えが返ってくるのか全く予測がつかなかったんだ。でも、試してみる価値はあると思った。
少しばかり強引ではあったけれど、試す価値はあったし、実際試してみて良かったよ。
Q: 彼に断られていたら、違うアルバムになっていたと思いますか?
I: ああ、間違いなく違うアルバムになっていた。その違いは説明できないけどね。
Q: ジョニーの起用についてエリックなんかと相談はしたんですか?
I: いいや、それは必要ないんだ。みんなオレを信頼してくれているからね……
本当に全身全霊でオレの判断を信頼してくれているんだ。これまでにもいい判断を幾つかしてきたし、
相談しなくても良かった。実際、喜んでくれたよ。
Q: ジョニーに求めていたことは、最初から具体的に分かっていたんでしょうか?
I: いいや、そういうことに関しては、具体的な予測なんかつかないんだ。
ただ、ぼんやりとした"何か"を期待するだけさ。もちろん、彼がどういうギター・プレイをするのか知っていたし、
オレたちのサウンドにうまく融合できるんじゃないかと思っていたわけだけど、具体的な結果は予測がつかなかった。
それに、こういうコラボレーションがどういう結果を生むのか、前もって知りたいとは思わないよ。
Q: でも一旦会ってみると、すぐに意気投合したんですよね。
I: そうなんだよ。実にフレンドリーな空気の中で始まった。オレが考えていたよりも遥かにフレンドリーで、
もっとぎこちなくなると思っていたのにそうはならなくて、会った瞬間から真の意味で意気投合できたんだ。
あれは興味深い経験だったね。思ってもみなかった。最初はもう少しぎこちないかと思っていたけど、
全然そうじゃなかったよ。
Q: ギタリストとしてはスタイルが対照的だそうですが、ふたりのケミストリーは
やはり補足し合う関係と言えるんでしょうか?
I: というより、全く質が異なるものが融合して、別の新しいものを作り出すって感じかな。
Q: あなたはスミスの熱狂的ファンではないそうですが、もし熱狂的に崇拝するミュージシャンが相手だったら、
こういう形でコラボレートすることはできなかったと思います?
I: というか、オレは「崇拝」ってのはあんまりしないんだ。対象が神だろうがロック・ミュージシャンだろうが。
Q: じゃあソングライティング・パートナーとして何を引き出してくれたと思いますか?
I: 彼は6分の1の貢献をしてくれた。ほら、バンドには6人のメンバーがいて、
ジョニーはその中で彼の役割を果たしたのさ。アルバムに与えた影響の大きさは、ほかのメンバーと同量だ。
インタヴューをやっていて、そこの部分が忘れられがちだってことに気付いたよ。
バンドにはほかにもメンバーがいて、みんな才能溢れたミュージシャンだからこそ一緒にプレイしているんだ。
そして、彼ら全員の貢献やスタイルも、オレとジョニーの貢献と同等にアルバムのサウンドに影響を及ぼしているんだよ。
Q: 今回は2人目のドラマーを加えましたよね。作品ごとにメンバーを変えて、バンドの力学を意図的に
変えようとしているのですか?
I: 少しそういう部分はあるね。最近はそういう傾向が目立つかな。ここ数枚のアルバムに関しては。
それまでは準備期間というか、ベースになる力学を構築している最中で、まだ変えるまでに至らなかったんだよ。
でも、アルバムごとに音を変えるには編成を変えるのが一番だ。たとえ同じメンバーだとしても、
楽器を途中で交換したりしてね。
Q: 曲作りの出発点となるアイデアはあなたが提示するんですか?
I: いいや。誰でも提案できるよ。エリックだったりジョニーだったりオレだったり。
まあ、理由を説明するまでもなく、パーカッショニストやドラマーが提案することは頻繁にはないけど、
絶対ないとは言い切れないよ。
Q: 今回はジェレマイアもバンドに戻り、あなたとエリックと3人のオリジナル・メンバーが揃ったわけですが、
やはり感慨深いものですか?
I: うん。なんたって彼らは……オレのファミリーだからね(笑)。
Q: 結成から15年が経ちます。モデスト・マウスについて最も誇りに感じていることは?
I: 多分それも、オレたちがファミリーであり続けているってことなんだと思うよ。
Q: 8月に来日公演が控えていますが、ファンへのメッセージを頂けますか?
I: オレは「ファンへのメッセージ」的な人間じゃないんだ。
Q: じゃあ日本での印象深い思い出はありますか?
I: 〜〜〜〜(ここだけ聞き取れません。「キリヒト」と言ってるようにも聞こえるので、前回のツアーで共演しているのかも?)
もうずいぶん昔の話だからね。
Q: モデスト・マウス、或いはあなた自身に関する大きな誤解というと?
I: オレが鬱っぽいって話。
Q: それだけ?
I: ああ、それだけだよ。それに正直言って、ほかの人たちがバンドやオレについてどう思っているかってことに、
気を揉んだりしないからね。時間ももったいないし、心にもそんな余裕はないよ。自分の友人や家族のことだったり、
彼らとの関係だったり、考えなきゃならない大切なことがたくさんあるから、ほかの人たちには構っていられないんだ。
ジョニー・マー(2007年5月4日)
Q: 全米1位、おめでとうございます。すでに25年のキャリアを持つあなたですが、
それでもこういう記録はエキサイティングなのでしょうか?
J: ああ、エキサイティングなんだと思うよ。予想外だったしね。……いや、「エキサイティング」ではないけど、
うれしくはあった。でも、ナンバーワンになったこと以上に、今回作った音楽にエキサイトしていたんだ。
だから、素晴らしいことではあるけど……僕をエキサイトしたのは音楽であり、このアルバムを作れたことを
すごくうれしく思っているよ。自分がプレイしてなくても、買って聴いていたと思う。
Q: アイザックから電話があった時、ミュージシャンとしてあなたはどういう時期にあったんですか?
ここ数年は自らバンドを率いてヴォーカルも担当し、キャリア再構築の渦中にありましたよね。
また新しいことを始めるにちょうどいい時期だったんですか?
J: いや、実は当時まさにヒーラーズのセカンド・アルバムのレコーディング中だったんだ。曲作りを終えて、
新しいバンド・メンバーを集めて、ヒーラーズとしての活動にすごく興奮していた。今もそれは変わらないよ。
それに、自分のギター・プレイにも大満足していたから、アイザックはちょうどいいタイミングに連絡をくれたのさ。
どっちにしても僕は大いにインスピレーションを感じていたし、すごく忙しくしていたからね。
ただ、18ヵ月後もモデスト・マウスとプレイしているとは思ってなかった。そんなわけで、当時の僕は忙しくて、
新しく試したいギター・プレイのアイデアを温めていたんだけど、そのアイデアをそのままモデスト・マウスに
持ち込んだってことさ。だから、僕にとってもモデスト・マウスにとってもいい結果になったんだ。
かなり具体的なアイデアを持っていたからね。
Q: でも常にたくさんのオファーがあるはずですよね。しかも自分のバンドで忙しくしていた時に、
なぜアイザックの誘いに応じたんですか?
J: それはなぜかというと、僕たちが一緒にプレイし始めた時、これまで何年も音楽をやってきた末に、
非常に特別なフィーリングを実感したんだ。自分たちが作っている音楽を簡単には解析できないけど、
すごくいい気分にさせてくれて、しかもその理由がいまいち分からない。そういうことが起きるのは、
14、15歳の時。友人たちと一緒に誰かの家に集まって音楽をプレイし始めた頃なんだ。
その瞬間だけの唯一無二のサウンドを鳴らしているのさ。若くて、楽器を弾き始めたばかりで、
まだほかの人の模倣ができないんだよ。模倣しようとしているんだけど、技術的に未熟だからうまくいかないない。
それって、素晴らしいことなんだ。なぜって、その時に鳴らしている音はすごくピュアでオリジナルだからね。
で、ポートランドにやってきて4日目だったかな、アイザックやほかのメンバーと一緒にいた時に、
「これは非常に特別なフィーリングだぞ」と感じたんだよ。その時僕たちがプレイしていた音楽は、
未だかつてモデスト・マウス自体を含めて誰も鳴らしたことがない音楽だったからね。随所に様々なタイプの
グループの影響が窺えるんだけど、誰かを模倣しているわけではなくて、全てが偶発的に起きていたんだ。
それゆえに僕は自分が何か特別なことに関与していると確信して、またここに帰って来ようと決心したのさ。
Q: つまり、その瞬間にフルタイムのメンバーになることを決心したんですか?
J: ああ。
Q: 脱退したダン・ガルッチがあなたの影響下にあったことには気付いていましたか?
J: そのことは、初めて電話で話した時にアイザックから聞かされたけど、過去の曲をプレイし始めるまでは、
あまり意識しなかったよ。 実際プレイしてみると、ごく僅かだけどピンと来る箇所があった。
僕がやりそうなことを彼もやっていたんだな、と。でもあくまでクールな意味でね。僕もダン・ガルッチのファンだよ。
彼は独自のスタイルを備えた、本当に素晴らしいギタリストだと思う。
Q: アイザックは色々興味深い評判がつきまとう人物ですが、あなたの印象は?
J: いっぺんに5つもの面を併せ持っている、という意味においては変わった人物だね。たいていの人は、
メロウか気性が激しいか、穏やかかやかましいか、どちらか片方に該当するよね。でもアイザックには
これらが全部同居しているのさ(笑)。彼は同時に、思慮深くて直感的で本能的でもある。
その上非常にフィジカルな人でもあって、ステージでは激しく動き回るし、たくさんのエネルギーを歌声に注ぐ。
そして知性の塊でもあり、同時に複数の方向に心を向けることができる。僕たちはいい友情を育むことが出来たよ。
彼は極めて常識的な人間で、知的でありながらストリート・レベルのしたたかさも備えているんだ。
Q: リリシストとしてのアイザックをどう表現しますか?同じことがあてはまりますか?
J: そうだね。特に新作の詞は、素晴らしいとしか言いようがない。アイザックが書く詞は
ポップ・ミュージックを豊かにしているよ。彼は必要とされていることよりも、
さらに深くまで踏み込んでいるように思うんだ。とてつもなくたくさんの意味を詰め込んでいるんだよ。
わかるかい?本当にたくさんのアイデアを1曲に託して、シリアスで不条理でポリティカルでシュールで……
そして詩的でもある曲に仕上げてしまうんだ。
Q: アイザック以外にも4人のメンバーがいて、すでにある程度ケミストリーが固まっていたと思うんですが、
そこに自分の居場所を作ることには苦労しませんでしたか?
J: それはなかったな。全員が、何よりもまず第一にミュージシャンだという共通項を持っているからね。
それに、僕以外の5人は以前から付き合いがあるものの、このラインナップで一緒に曲を書くのは
今回が初めてだった。どっちみち初めての試みだったのさ。以前からの知り合いでライヴは一緒にプレイしていたけど、
例えばドラマーがふたりいるのも、トム・ペローソが複数の楽器を担当するのも初めてだったから、
モデスト・マウスにとっては白紙状態で、新しい始まりみたいな時期だったんだ。
僕はそれに関わることができたのさ。みんなすごくフレンドリーで僕を歓迎してくれて、一種の兄弟愛が生まれて、
みんな常識的な人たちだからすごく助かったよ。
Q: 今回のモデスト・マウスは前作の大ヒットを受けて新作を作るという、非常にセンシティヴな時期にありました。
あなた自身も過去に同じような経験をしていますが、彼らがプレッシャーを感じているように見えましたか?
J: 『Float On』が(モダンロック・トラックス・チャートの)ナンバーワンになったことを僕が知ったのは、
彼らとプレイし始めてから3ヶ月、いや6ヶ月経ってからのことだったかな。
まさに『Float On』をレコーディングしたスタジオに行って、キッチンの壁に貼ってあった『ビルボード』誌の
チャートの切り抜きを見て、初めて知ったのさ。『Float On』という文字の周りを丸で囲んであって、
訊いてみるとみんな「ああ、そうなんだよね」って肩を竦めていたよ。アイザックも同じように
「ナンバーワンになったんだ」って肩を竦めていた。ふつうなら、出会って最初の5分間にそういうことは
教えてくれるものだよね。そんなわけで、大ヒットしたアルバムに続く新作を作っているということに関する会話は、
一切なかったんだよ。そもそも音楽的方向性に関する相談もなかったし、ファンの期待とか、「これはライヴでうまく
プレイできるだろうか?」とかいう話もないまま、僕たちはただとにかく満足するまで、自分たちがいいと感じるものに
辿り着くまでプレイし続けて……そして、それを"曲"と呼んだのさ。そういう作業を繰り返したんだよ。
非常にインスピレーションに満ちた期間だったね。外の世界で起きていることなど全く気にせずに何かをクリエイトする
というのは、素晴らしいことか、非常にマズいことか、どちらかなんだよ。僕たちの場合は前者だった。
だから大ヒット作を受けての新作だってことは一切頭になかった。それっておかしな話かもしれないし
実際おかしな話なんだけど、真実なんだよ。
Q: 『SPIN』誌のインタヴューではこのアルバムをザ・スミスの『ザ・クイーン・イズ・デッド』と
ザ・ザの『マインド・ボム』に比較していますよね。それはかなり大胆な発言ですが、共通項はどこに?
プロセスの濃密さ?それともミュージシャンとして大きな挑戦を課したアルバムということ?
J: 両方だよ。挑戦を課したアルバムであり濃密なプロセスでもあり、そしてさっきも言ったように、
とにかくインスピレーションに事欠かなかった。これらのアルバムはどれも、同じ過程を経て生まれたんだよ。
つまり、ミュージシャンたちが自分たちのやっていることにとことん惚れこんでいて、たとえ外の世界や
チャートやマスコミがみんな嫌ったとしても、全く気にしなかったってことさ。外の世界を遮断して、
自分たちがやっていることは素晴らしいんだと何の疑いもなく信じていたんだ。だからヒットしようがしまいが、
どうだってよかった。何かを作っている時にそういう気分になれるっていうのは、非常に心強い。それも、
プレッシャーを感じなかった理由のひとつなんだよ。とにかく自分たちがやっていることが楽しくてしょうがなくて、
例えば何ヶ月にもわたって1日18時間作業を続けても全然疲れない。そういう状況だったのさ。本当に触発されていたんだ。
Q: じゃあ、アイザックとマット・ジョンソンとモリッシーの間には、カタリストとして共通項はありますか?
J: マットとアイザックには共通項があるよ。ふたりとも本当に……逞しくて、夜型のキャラで、
非常に男性的なんだけど同時に詩的でもある。そしてふたりともバンドの運営においてリーダーシップを発揮し、
ギャングの親玉みたいな存在なんだ。僕にとってすごく興味深い共通項は、ふたりとも知性に溢れているけど、
同時にリアルな人間であろうと心がけていることだよ。強烈な個性を持ちながら、スターとして扱われることを嫌う。
その点を僕は心からレスペクトする。僕にとって、単に恐るべき才能と、たくさんのアイデアと、強烈な個性を備えている
だけじゃ、まだ半人前なんだ。残りの半分は、人間としての素晴らしさだよ。
これらふたつの面のバランスをとることができて、例えばダイナーで隣り合わせた人や、
ホテルで荷物を運んでくれたポーターと会話することに興味を持ちながら、次の瞬間ステージに立てば
バンドのリーダーになることができる――。僕に言わせれば、それで初めて完成するんだ。
Q: では、モリッシーとはあまり共通点はないってことですね。
J: ああ。アイザックとモリッシー、そしてマット・ジョンソンとモリッシーは、非常に人間性が異なる。
でも僕がそう言ったからといって深読みして欲しくないんだ。みんな深読みするんだけど、誰だってもう
納得しているはずだよ。全然違う質を備えているんだ。
Q: 息子さんがモデスト・マウスの大ファンだそうですが、新作にはどう反応していました?
J: 気に入ってくれているし、家族みんながすごく気に入ってくれている。僕が関わることには何でも、
家族全員が関与しているんだよ。息子は当初、ミックスの出来がデモに劣ると感じたらしい。
デモをすごく気に入っていたからね。でも今では彼も、彼の友人たちも、みんな気に入ってくれているよ。
ほかにもいろんな音楽を聴いているけどね。
Q: 今の編成のモデスト・マウスにはまだまだポテンシャルがあると思いますか?
J: ああ、そう願っているよ。いいケミストリーが生まれたし、この18ヶ月の間に一緒にたくさんの経験をしてきたし、
アルバム作りは非常に濃密な作業だったからね。それに、僕はすでにモデスト・マウスと37回ほどライヴをやってきた。
アルバムは発売されたばかりだけど、リリース前にも北米やオーストラリアをかなりツアーして、
18ヶ月間ずっと一緒に過ごしてきた。だから、そうやって築き上げたものを発展させないなんてもったいないし、
もっとたくさん音楽を作るべきだと思うよ。
Q: 8月には来日が控えてますね。
J: うん。すごくエキサイティングになるだろうな。かなりいいライヴを披露できると思うよ。
ふたりドラマーがいて、僕とアイザックのギター・プレイがお互いを挑発し合って……。
僕たちのライヴはかなりアグレッシヴだし、いい曲がたくさんあるし、いいショウになるはず。
ものすごく楽しみにしているよ。
Q: これまでにアメリカには何度も行ってるでしょうが、実際に住んでアメリカン・バンドの一員として活動してみて、
アメリカという国に今も興味をかき立てられますか?
J: 「興味をかき立てられる」というのはもうないかもしれないな。むしろ、よりベーシックで機能的な利便性に惹かれるね。
特にポートランドでは、ミュージシャンたちや僕と同じような考え方の持ち主たちが、いいネットワークを作り上げていて、
クリエイティヴな人々の共同体が形成されている。だから、どこかに朝食を食べに行けばいつもアーティスティックな
人たちに出会えるんだ。ビジネスマンたちに押しのけられるんじゃなくてね。