「もうすでに、何度も感動してる」

レコーディング全工程完了から間もない11月末のある日、TAKUYA∞は真顔でそう語った。自分自身を感動させることができなければ、それを聴き手たちに分け与えることはできないし、それ以前に、強い信頼関係で結ばれたメンバーたちを納得させることすら不可能に違いない。が、彼が恥ずかしげもなく吐いたその言葉に、メンバーたちは躊躇なく頷いてみせた。その笑顔が、このアルバムが飛び越えたハードルの高さを物語っていた。

UVERworldの第2弾アルバムは『BUGRIGHT』と題されている。英語の辞書を調べてもこの単語は見つからないし、いわば言葉自体が間違ったものでもある。が、何かの間違いで生まれたものがすべてを解く鍵になることもあるし、正解はかならずしもひとつだけじゃない。この造語に込められたのはそんな意味なのだ。蛇足ながら、“R”を“L”に換えれば、それは虫たちを寄せ集めるライトのことになる。それは、ふと、多くの人間を吸い寄せる特性を生まれながらにして持ち合わせた、彼らの音楽そのものを連想させもする。

「明日死んだとしても後悔のないようでありたいんですよ。もちろん本当に死んでしまうわけにはいかないんだけど、何かの間違いでそういうことになったとしても、常に後悔のない状態でありたい」

このアルバムには、いわゆるコンセプトめいたものは存在しない。が、敢えて言うなら、TAKUYA∞のこんな発言に象徴される“精一杯生きること”への渇望が作品全体を貫いている。決意表明のごとくオープニングに据えられた「ゼロの答」はそれを象徴するものだし、初めて5人で“無”の状態から作り始めたという「Home微熱39℃」も、メンバーたちのなかに共通する“記憶のなかの風景”を発端とする「シャルマンノウラ」も、それぞれに楽曲の醸し出す温度や匂いは異なっているが、やはりそれを感じさせる。タイトルそのものにそうした意志が凝縮された「Live everyday as if it were the last day.」については説明するまでもないだろうし、5人の絆をそのままカタチにした楽曲ともいうべき「一人じゃないから」についてもそれは同じことである。

同時に気付かされるのは、すべての楽曲に必然が、存在理由があるのだということ。TAKUYA∞は「すべては偶然の産物でしかない」と言い切る。が、必然性があるからこそ呼び起こされるのが偶然というやつなのではないだろうか。仮に誕生が偶発的であろうと、それが生き続けていくなかで伴ってくるのが存在理由というものなのではないだろうか。シングル・チャートで自己最高の2位を記録した「君の好きなうた」をはじめ、「SHAMROCK」、「Colors of the Heart」といったヒット曲たちが実証しているのもそんな事実だし、「君の好きなうた」のストーリーを受け継ぐ「51%」、ライヴで体感できる日の到来が待ち遠しい「EMPTY96」や「DISCORD」といった真新しい曲たちも、これからそれを証明していくことになるのだ。

そしてもうひとつ明らかなのは、この『BUGRIGHT』もまた、1stアルバムのタイトルと同様にタイムレスな作品であり、2007年最初の名盤として記憶されるべきものだということ。彼らの生み出す“死なへん曲”は、仮にいつか世界に終わりが来るとしても、最後の最後まで輝き続けようとする意志にみなぎっているのである。で、思う。もしかしたらいつか、“bugright”という言葉の意味が辞書に載る日が来るのかもしれない、と。