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『半世紀No.5』メンバー全員オフィシャル・インタビュー

出席者:川西幸一/手島いさむ/奥田民生/EBI/ABEDON
(『50祭』開催順)

司会:兵庫慎司

インタビューその1:『50祭』とは何だったのか!? 編

──最初に川西さんの『50祭』をやった時って、どのようなきっかけで話が始まったんでしょうか?
全員:……。
EBI:……自分がやりたい言うたんじゃない?
川西幸一:(笑)いやいや、そんなこたあないよ!
や、まあでもほら、もともと『阿部40祭』が前にあったでしょ?(2006年9月にABEDONが40歳記念イベントを大阪・横浜・山形で開催)
奥田民生:そうだ、あれのせいだ!
ABEDON:あれをやったばっかりに(笑)。
──あの山形公演のアンコールで、民生さん川西さんとABEDONさんでセッションして、その時の感触がとてもよかったから再結成を考え始めた、と前におっしゃってましたよね。だから、あれをやってなかったら再結成してないかもしれないですよね。
ABEDON:それもあるね。おかげでこんなんなっちゃった(笑)。
──その流れで川西さんの『50祭』もやろうと?
ABEDON:まあそうだね。
川西:というか、始まった時がちょうど50だったんだよ。
EBI:2009年が?
川西:うん。再活動を始めた年が、俺が50になる年だったんだよ。アルバムを出してツアーした年が。
奥田:それでまあ、「50だから何かするか」みたいな話になったんじゃないの?
──で、シングルと日本武道館2日──。
川西:それと大阪城ホール。
──あ、そうだ。シングルを盤で出したのも川西さんだけだし、じゃあ最初がいちばん大きい規模でやったんですね。
川西:うん。で、いちばん疲れたんだと思うね(笑)。
奥田:……なんだっけ? 50本やったんだっけ、ライブ。
──あ、そういう企画でしたね。7月1日から誕生日までに、ユニコーンとBLACK BORDERSを合わせて50本ライブをやる、そのゴールが大阪城ホールという。
川西:まあ、だいたいね。1,2本ずれてるかもしれないけど(笑)。
──PUFFY、BLACK BORDERS、ユニコーンと出ずっぱりでしたよね。
川西:うん、あれはひどかったと思うよ。転換の時にもサブステージでライブやってたからね。
奥田:あれのせいで倒れた説がある。
EBI・手島いさむ:はははは!
ABEDON:あの蓄積が何年か後に出てね。筋肉痛が遅くに出るみたいな感じ?(笑)。
川西:ほんと大変だったよ、あれ。ごはん食べる時間なかったもん。
奥田:あれで残りの人がみんな怖気づいて、「絶対やるもんか」と(笑)。
川西:でもテッシーの時もまあまあ大変だったよね。
手島:50本やったからね、ユニコーンと電大で。
川西:ABEDONの時も大変だったと思うよ。
奥田:俺とEBIがラクだったね。ふたつに分かれてるみたいなもんだったから。
ABEDON:ああ、同じ1年のうちでね。
川西:そう、なんか流されたような気がしたんだよなあ、あれ。
EBI:(笑)いやいやいやいや! 大変でしたよ。
奥田:やるこたやりましたよ。
手島:でもニコイチみたいな感じで──。
ABEDON:そうそう。そこらへんがなんかね、出てるね、人生がね。
奥田・EBI:わはははは!
川西:なんか理不尽だよねえ?
ABEDON:なんかねえ?
川西:ものすごいやった感あるよ? この3人は。
奥田:俺もあるよ! やった感は。でもまあ、ABEDONは最後だったしね。
手島:それで10年だもんね、『阿部40祭』から。
川西:だからもう、ああいうのはやらない!(笑)。
──じゃあ川西さんの時に「ヤバい、これが俺にも回ってくるのか」という恐怖を?
奥田:まあ、確かにね。
ABEDON:あったね。
手島:でも川西さんの場合、半分くらいは好きでやってる部分があったから──。
川西:(笑)そんなこたあないわい!
奥田:いや、俺らも一応、半分ぐらいは好きでやってる部分があったって言わなきゃいけないですよ?
手島:(笑)ああ、そうか。
ABEDON:まあでもね、あの川西さんので、次のテッシーにすごいプレッシャーがかかったと思うよ。
手島:うん、ほんとねえ──。
奥田:で、衣装の方に行ったよね。
川西:逃げたよね。
手島:(笑)逃げたわけじゃない、別に。
ABEDON:馬とかね。
──あの1回ごとの構成は、どなたが中心になって考えるんですか?
手島:あのねえ、これ共通のルールで、ほかのメンバーが考えたことをやるっていう。曲もそうだもん。本人を4人でいじる、っていうのが基本的なルールだったような気がする。
ABEDON:50歳とかの記念の時って、持ち上げるのってこっ恥ずかしいでしょ、どっちかっつうと。だから逆に辱めを与える、っていうのが根底にあるっつうか。
EBI:テッシー、なんで衣装ナポレオンだったん?
手島:なんでやろねえ?
奥田:確かに、なんでナポレオンだったんだ?
手島:……あ、あの時、4人の近衛兵の帽子が先に決まったんじゃない?
ABEDON:……いや、曲が「甘えん坊将軍」だったからじゃねえの?
川西:そうだよ、「将軍」からだよ。将軍からナポレオンになって、ナポレオンから近衛兵になって。
EBI:それで馬も。
ABEDON:そこらへんはまあ、適当で。だいたいでね。
──ナポレオンはフランスで近衛兵はイギリスですしね(笑)。
手島:だからまあ、「あっちの方」っていう(笑)。
──で、奥田さんとEBIさんが同じ年、2015年に──。
手島:分散されてたよね、1年にふたりだから。
奥田:だから川西っつあんのとテッシーのを見て、「あんなしんどそうなのはやめようぜ」と。「まだ多数決2対3で勝つから」って。
EBI:はははは!
ABEDON:「もうやめよう」っていう雰囲気になるよね?
EBI:そうそう、「もうええんじゃないか、無理することない」って。
ABEDON:ラジオとかでちょっと発言したりして、「もういいんじゃないですかね」とか。
奥田:そう、後ろ向き発言をしといて、やるにしてももうちょっとラクに。
──奥田さんの広島はわかりますけど、EBIさんが横浜だったのはなぜだったんですか?
EBI:えーとね、海に近いとこでやりたくて。
川西:ああ、EBIだからね。
手島:お台場も海だよ?
ABEDON:『大漁祭』だからね。船が入れるから、あそこ。開港してるから。
EBI:『大漁祭』っていうワードはね、けっこう最初からあったんすよ。
奥田:パシフィコ横浜、後ろがすぐ海だしね。
──で、最後の集大成がABEDONさんの『50祭』で。あれ大変そうでしたね、特に『アベストテン』のコーナーとか。
ABEDON:あのコーナーね。大変でしたねえ。
──あの2日間だけで、ヨッチ(ABEDONが扮する昭和のアイドル)もファンにすっかり定着して。
奥田:ヨッチのソロ・ツアーやるんだって。
全員:はははははは!
手島:どこに現れるん? 今度は。
ABEDON:ニッチなとこ(笑)。
EBI:ずっとヨッチのままなん? ゲストじゃなくて?
奥田:ゲストでABEDONが来るぐらいじゃない?(笑)。
──もちろんABEDONさんがいちばん大変だけど、あの回はメンバーも大変だったと思うんですけども。衣装替えとか、ダンスの練習とか。
手島:っていうふうに見えただろうね。確かにあのコーナーは休むとこなかったけど、ほかはね……ABEDONの動きを見てたらね、これはちょっと、お気の毒としか言いようがなかった。
ABEDON:(笑)。
手島:「しんどそうやなあ」って。しかもね、前の日、俺らが休んでる時も、会場に残って映像用のロケとかやったりしてるわけですよ。
ABEDON:間に合わねえんだもん、だって。
──重ねてききますが、60祭はやらない?
川西:……(しみじみと)ああいうのはやめよう。
手島:(笑)って言ってますけど、別の形で、とかね。
川西:だいたい、生きてるかどうかわからないし。
ABEDON:じゃあ追悼ライブで(笑)。
奥田:だってABEDONが60になる時、川西っつあん67だからね?
川西:そうよ。もういないいない。いるかもしれないけど、使いものになるかどうかわからん(笑)。
ABEDON:チャーリー・ワッツ叩いてるでしょ、だって。75歳で。
川西:じゃあまあ、お祝いを……内輪で飲みに行きゃあええやん。
ABEDON:まあ、とりあえず一区切りですね。
手島:で、まあ、ニーズがあればね、本人がやるでしょ。
──『ABEDON50祭』の時、ABEDONさんがニューヨークまでマスタリングを学びに行くレポ映像が流れたじゃないですか。それでこの『半世紀 No.5』のマスタリングをやった、というのを知って、「ああ、あそこからフリになってたのか」と。
ABEDON:いや、ニューヨークに行った時は、このアルバムのマスタリングをすることは決まってなくて。なんかね、いろんなことが重なったんですよ。いろんな背景があって、自分でマスタリングできるようになればいいなって思ってたタイミングだったのと、『50祭』の時に、何か映像のね──。
奥田:EBIが漁船に乗ってエビを獲りに行った映像のようなのがね。
ABEDON:そういうのが必要なタイミングだったから、マスタリングを学びに行こうと。
手島:……あれ? 民生はなんかやったっけ?
ABEDON:工場行ったじゃん。
手島:ああ、ドラムの工場行ったな。
奥田:……あれ、俺ので行ったんだっけ?
ABEDON・手島・川西・EBI:はははは!
奥田:なんで俺があそこに行ったんだろう?それにしても。
ABEDON:趣味じゃない?
EBI:はははは! ドラム好きだから。
奥田:マジで? てっきり川西っつあんのに俺がついて行っただけかと思ってた。
EBI:テッシーは手島に行ったよね。
手島:そう、手島っていう島に。
川西:ほんとはフランスのテッシーっていうとこに行くとこだったんよ。
手島:で、「そこに行かされるぐらいなら手島に行く!」って。
EBI:なんで? ええじゃん、フランス。
手島:だって地図見たら、ただのブドウ畑のまんなかなんだもん。
川西:いいじゃない! 画になるよ?
──EBIさんが漁船に乗せられたのはハードでしたよね。
ABEDON:いやいや、そうでもないらしいよ?
EBI:いやいや、けっこうきつかったなあ!
川西:生きたエビを触るのが嫌いだったっていう(笑)。
奥田:はははは。エビそんな好きじゃないっていう。
ABEDON:ライブの時もさあ、刺盛りでエビが出てきたのにマグロから食おうとして、盛大につっこまれてたしさあ(笑)。
EBI:はははは! あれは共食いになるからダメなんよ。
手島:でもABEDONがニューヨークに行ってくれたおかげで、メンバー自身でマスタリングができたわけで。それはそれで収穫が大きいファイナルでしたね。
奥田:……でも確かに俺、いちばんラクだったわ(笑)。言われて気づいた。

インタビューその2:『半世紀 No.5』全曲解説編

1 半世紀少年

──これは、ラップになったのは──。
川西:これは自分がやりたかったん。BLACK BORDERSやってた頃に……それまでラップって嫌いだったのよ。でも『50祭』の時に武道館に出てくれたDAG FORCEって奴がいて。ライブをKenKenに誘われて観に行ったん。KenKenも一緒にやってるから。それ観たらすっごいよくて、「ああ、こういうことなんだ!」と思って。
それで好きになって、やってみたいなって。でもできんから、「ABEDON手伝って」って、一緒にやってもらって。俺のラップはやっぱり拙いけど、これをやってたのもあって、何年後かの「さらばビッチ」はちょっとだけ進化してたと思うんだけど。個人的にはけっこう好きだったのよ、「さらばビッチ」をEBIとラップしてる時の感じが。
奥田:だけどねえ、本当に覚えられないんですよ、ライムを。
川西:(笑)。
手島:繰り返す回数じゃない? ずっと練習してれば出てくるようになるんじゃない?
奥田:だってすっげえ練習してたじゃん、あん時。1日中やってたやんねえ?
EBI:俺が付き合わされたよね。
川西:やっと今は、諳んじられるけどね。
手島:(笑)諳んじとるんかい!
川西:いつでもどこでも歌えるんで。
奥田:ほんとに? もう忘れたでしょ。忘れとるよ、絶対。
川西:いや、入ってるんだよ、もう完全に。今やってみようか?
EBI:(笑)。まあライブの時、あれだけ走り回りながらねえ。
川西:そう、カンペ置けないんだよ、あれ。だから本番で「……」って出てこなくなる時、けっこうあったもんね(笑)。

2 川西五〇数え唄

──これ、「作詞作曲:ユニコーン」になっていますが──。
奥田:でもこれ、4人でやってるんだよね。本人は歌ってない、横で見てた。みんなで「一つ」から「五〇」まで50個考えて、それを持って代々木公園に行って、カセットで録った。
──じゃあ入ってるセミの声とかのSEは──。
EBI:SEじゃない。ほんとのセミの声。
川西:蚊に食われたわぁ、あん時。
奥田:あれ、イベントに出た時でしょ?
──あ、「サンスターオーラ2プレゼンツ J-WAVE LIVE」?
川西:それそれ。
EBI:それの空き時間に、代々木公園に行って。
川西:『50祭』のあとに……BLACK BORDERSでツアー回ってて、移動日に大阪で、洗濯物が溜まってたからコインランドリーに行ったんだよ。で、洗濯してたら「♪一つ 人より目が細い~」って、この曲がかかって(笑)。「さみしいなあ、これ」と思ったことがあった。「場末感がすごいなあ」って。
──この曲、客前でやったことあります?
奥田:やったよ。
手島:その年台風でね、九州のイベントが1本飛んだの。それで、なんか別のイベントをユニコーンでやろうって、DRUM LOGOSでやった時に歌ったの。
川西:ああ、そうだそうだ。
手島:でっかい歌詞カードを書いて、手拍子だけで。

3 新甘えん坊将軍~21 st Century Schizoid Man

手島:これはみんなで集まって、俺がちょっと離れてたら、4人でアコギ持ってゲラゲラ笑いながら作ってて。ノリノリで。
ABEDON:あの、テッシーくんが持ってきたのが、わりとフォーキーでメロディアスな曲だったんで。
川西:「ハードロックじゃないじゃないか!」っていう話になってね。
ABEDON:そういうベクトルでアレンジして。
川西:「新」って付いてるのは、もともと「甘えん坊将軍」はABEDONだったから。
ABEDON:二代目みたいなね。
川西:もともと「甘えん坊将軍」と「怒りん坊将軍」と「忘れん坊将軍」があったのよ。3人が将軍だったの。
EBI:よくわからん(笑)。まあ、ユニコーン界におけるね。
川西:あの時ライブで使ってた馬はねえ、民生くんが持ってるんですよ、今。
奥田:あれ? どこ行ったんじゃろう? 最近見ない。
川西:どっかに出て行ったの?
EBI:はははは。旅に出た?
ABEDON:車庫とかにいるんじゃない?(笑)。

4 ゴジュから男

手島:これは普通に曲を作って行って、歌詞を4人に付けてもらって。っていうシステムが、この時確立されたんですね。
──ギター、得意のライトハンド奏法をやりまくっているのは、メンバーからの指定ですか?
手島:いや、なんとなく「こういうもんだろう」っていう。「WAO!」以来、流れで。なんでか知らんけど入ることになってるんです。
川西:老化を防ぐためにね、手先を動かして。
手島:そう、負荷をかけていかんと。
ABEDON:歌詞はね、ヨン様みたいにアゲていかなきゃいけないんじゃない?みたいなことで、こうなった気がする。なんかね、サムソンってロゴあるでしょ? そこに「I」を足すと「イサムソン」になるなっていうのに、レコーディング中に気づいて。それで「イサムソン」から「イサムハンサム」に。
──「手数と 口数を 両手にかかえて」という素敵なラインがありますが。
川西:これは民生じゃなかったっけな、書いたの。
手島:民生か川西さんか、ミックスな感じがするね。
奥田:覚えてないなあ……。
──非常に手島さんを言い表してるなあと。
川西:まあ、みんなそう思ってるでしょう(笑)。
手島:誤解を生むから、手数っていうのはやめてくれる?
──いや、そっちの手数じゃなくて、ギターの速弾きの方の。
川西:(笑)来る者は拒まず?
手島:去る者は追うっていう(笑)。

5 ロック! クロック! オクロック!

手島:これはおもしろかったね。
奥田:ジャパメタね。
川西:ジャパメタだったもんね、昔。
手島:最初に出会った時に、そんなようなイメージがあったんですよ。民生が広島でやってたバンド、READYがね。そこはやっぱり外せないんじゃないかと。そこでABEDONが、みんなのアイディアを入れながら、ギターを弾いてどんどん作っていって。「ボーカル、そんな音域出んのか!?」っていうような曲になったけど、見事にちゃんと歌えたというね。
──イントロのアイディアはABEDONさん?
ABEDON:いやあ、もう俺たち天才かと思いましたね、あのイントロができた時。僕ねえ、あれ気に入ってるんですよ、個人的に。
手島:あのイントロで「ジー」って音がしてるのがすごい好きなんだよね。
──ああ、アンプから出てるノイズね。
ABEDON:あのねえ、これは何回も聴いた、できあがってから。だいたい聴かないんですけど、これは何回も聴いた、気に入っちゃって(笑)。
──でもABEDONさんの音楽性って、70年代洋楽ハードロック感はあるけど、ジャパメタ感はあんまりないですよね。
ABEDON:ああ。でもねえ、世代的に、聴いてましたよ。
奥田:そういう仕事もしてたしね。
ABEDON:そう。もともと笹路正徳さん(ABEDONの師匠)を知ったのも、LOUDNESSのアルバムに参加していらっしゃったからだし。
──奥田さんは? 歌ってみていかがでした?
奥田:え? いや、まあ、苦手じゃないですよ(笑)。
手島:得意得意。あと、この頃から、スタジオに小道具を持ち込むというのが恒例化されたんですね。カツラとかバンダナとか。
奥田:まあMV撮りも兼ねてね。

6 私はオジさんになった

──この曲は奥田さんがお気に召したようで、「50祭」のあとにフジロックでもマツダスタジアムの「ひとり股旅」でも歌っておられましたが。
奥田:この曲はねえ、何がいいって、本当に体力を使わない曲なんですよ。
手島:コスト・パフォーマンスがいい。さじ加減が自分でできるんじゃない? この曲は、民生がギターで家で作って持ってきて、みんなでああだこうだアレンジして、2時間ぐらいでできて、録った。
──突然直球でシリアスな名曲だなあと思ったんですけど、考えたらABEDONさんも1曲はそうだし、みなさんもそれぞれそうなんだなあと。
奥田:シリアスっていうか、まあ一応、そうだよ。
ABEDON:ひとりで作ってたらそうなっちゃうよ、やっぱり。だって、ひとりで「G・K・B・Rをティッシュで握った」って書く?(笑)。
川西:人格崩壊してるよね、ひとりでそれ書いてたら。
ABEDON:それ、書いて人に歌ってもらうから楽しいわけで。まあだから、一応50歳の決意みたいな曲になったんじゃないですか? そこで確立した、みたいなのがあるんじゃないですか? 1曲はメンバーが書いて、1曲は自分で書くという。

7 TAIRYO

──これはラモーンズ・ミーツ・大漁節という?
奥田:まあ、パンク。僕がジャパメタでEBIがパンク──。
EBI:の出身だから。
川西:ABEDONが歌い出しの「♪ほりうち~」っていうのを作ってきたんだ、確か。
ABEDON:あ、そうそうそう。「♪と書いて何と読む~」って。
川西:そっからダーッと4人で作っていって。寅さんのような口上もあるしね。
手島:ライブのタイトルが『大漁祭』だったから。祭りといえば──。
ABEDON:そうね、祭りといえばサブちゃん、みたいなのもあったね。それで衣装もああなって──。
手島:「でもパンクだろ」って話で、演歌とパンクがミックスされた。
──あの、歌詞の「大量マッチ売り」ってなんなんですか?
EBI:「大量マッチ売り」ですか? ……。
手島:っていうか、そこをきかれたらもう!(笑)。そこはきくもんじゃないよ!
EBI:そう、意味ないよ! 「なんなんですか?」って言われても!
手島:わかってくれよ! ものすごい恥ずかしいじゃないか!
奥田:「なんなんですか?」ってききかたはないだろう!
──いや、こういう歌詞だけど……ほかの部分は「カラムーケ」とか「シオフーレ」とか、ちゃんと意味があるじゃないですか。でも「大量マッチ売り」と「カオリ カオルコ カトリーヌ」だけわからなくて。
手島:だから、意味ないんだって!!
EBI・ABEDON:あはははは!
川西:「カオリ カオルコ カトリーヌ」はねえ、最初に「カオルコ」っていうのが書いてあったんだ、確か。ここの歌詞は、いわゆる源氏名にしようっつって、いろいろ検索していったら、このへんの名前がトップ5ぐらいに入ってたんだ。
手島:「4文字の女の子の名前の源氏名って、なかなかないよね」って話になって。
EBI:べつに俺の遍歴じゃないよ?(笑)。

8 VERTIGO

──このパンクっぽい歌い方は、どなたかがディレクションを?
EBI:これは「TAIRYO」を先に歌って、あれがああいう感じだったんで、それに寄ったんじゃないですかね。パンクっぽく。
──じゃあメンバーのむちゃぶりじゃなくて、自発的に?
EBI:自発的に。自主的に。
手島:はははは。
ABEDON:やる気を見せてね。
EBI:誰にも言われてないのに。
──「思えば遠くへ 来たもんだなんて 本当はそうでも ない気がするぜ」っていうラインが、とてもすばらしいなあと。
EBI:あ、ありがとうございます。
──さっきの奥田さんの曲同様、やっぱり2曲目はマジなんだなと。
EBI:いや、これねえ、めちゃマジなんですよ。ほんとこの時の自分の気持ちで。
ABEDON:もうね、触れなかったもん、俺ら。
EBI:オチてる時。ものすごい大変な時だったんです、これ。
──個人的に?
EBI:うん。健康的に。
奥田:誤診されたんだから、誤診。
川西:医者に「堀内さん、話があるんですけど」って呼ばれて。
──で、誤診だったんですか?
川西:いや、誤診じゃないんだけど、心配性の先生で。「ということもあるかもしれないんだから、もう一回ちゃんと検査しましょう」って言われて。で、検査したらなんともなかったっていう話(笑)。
EBI:まあ、そういうことです。だからこの曲はもう、みんなに励ましてもらおうと思って。
ABEDON:あ、それで「ファイト!」なの?
EBI:そう、「ファイト! ファイト! 海老! レッツゴー!」って……めちゃまじめに話してる(笑)。
手島:でもEBIの素がだいたいわかったよね、この曲で。『ゅ 13-14』の「道」っていう曲にもつながるようなね。
EBI:全然違うよ。
奥田・ABEDON・川西:はははは!
手島:いやいやいや、メロディとかコードとか。EBIが素でパッと曲を書くとこういうふうになるんだ、というね。

9 RAMBO N°5

奥田:ここまで来たらABEDONのはインストでいい、という話になりまして。
ABEDON:(笑)そうか。
手島:……あれ? これ、最初、なんの企画だったっけ?
川西:『ランボー』よ。『サクランボー』から『ランボー』になって。で、「『ランボー』だったらマンボでしょ」って言って、「マンボNo.5」をスタジオでずっとかけてたんだよ。そしたら、ああなっちゃったんだよ。
──ああなっちゃったというか、そのまんまというか。
川西:はははは!
手島:いや、「No.9」とか「No.8」もかけつつ──。
川西:でも「5人目だし」っていうのもあって「No.5」になったのね。
手島:これ、すんごい真剣に録音した。演奏も、いつもは一発で録るけど、この曲は分けて録ったもん。ブレイクできれいに音が切れるように……「ダッ!」て曲が止まるところで、ドラムをバシッと切らなきゃ、残響があるドラムじゃいかん!とか。この曲は凝ったよ。
川西:ライブで生演奏してないっていうのがいいよね。
──ああ、曲かけて5人で踊ってましたよね。
川西:とうとうそこまで来たかっていう(笑)。
奥田:まあMVで踊ってたんで、演奏するよりもそっちの方が伝わるかなって。
──この曲、さりげに美声ですよね。「♪サクランボー」の「♪ボー」のところとか。
ABEDON:ああ……なんか、Youtubeでそうやって歌ってたから(笑)。
手島:いや、まず民生が見本でワーッて歌って、ABEDONがそれにより抑揚をつけた、というか。
ABEDON:そうです! そのとおりです!

10 50/50

──この曲は、これまでの『50祭』の総括であると同時に、再始動から現在までのユニコーンも総括しているというか。山形で聴いた時は感動的でした。
ABEDON:そうですか。それはよかったです。まあ一応、最後なんでね。
手島:「50/50」っていう言葉を前向きに捉える、というのが革命的だと思いましたね、僕は。そういう解釈は初めてだったから。だいたいにおいてね、「50/50」ってリスクの分散のことを言うので。「ああ、そういう捉え方もあるのか!」と。
──「君と僕はそう ふたつでひとつ そして僕たちは いつつでひとつ 新しい今を うたおう」って、すばらしいですね。
ABEDON:よかったです。書いた甲斐があります。
──これ、シリアスで、かつABEDONさん個人の歌じゃないですよね。
ABEDON:いや、そりゃそうですよ。ユニコーンがあって、『50祭』があって、っていうことですからね。そのために書くので。べつに比喩も何もなく、ユニコーンのことを歌ってるわけで。まあそれは、そうあるべきじゃないですかね。
──あの、このアルバムの曲を、今後ユニコーンのライブでやることはあるんでしょうか。
奥田:いや、あるんじゃない? 曲によっては。
川西:「50/50」とかやりたいよね、ライブで。
手島:状況によるよね。
ABEDON:まあ、流れでやることもあるんじゃないですか?
奥田:ヨッチがカバーするかもしれない。
ABEDON:おっ!?
奥田・川西・手島・EBI:ははははは!
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