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浅野:メニューの最初の方でサブ・ステージに移って、アンプラグド・スタイルで演奏しましたね。

misato:「もう山のようにやることがいっぱいあったから(笑)。『GROWIN’UP』でドーンと出てきて『すき』という曲で花道を通って本ステージに辿り着いて『BELIEVE』を歌って。オープニングでみんな沸点に達してると思ったから、ちょっとその空間に体を預けて、夏の風を楽しめるようにアンプラグドは4曲目から入れました。球場の真中にきて『素顔』『いつか きっと』と2曲歌って。また本ステージに戻っての『ウルトラ・メドレー』も32分数秒あるので(笑)、余分なおしゃべりをなくしてどんどん進めなきゃっていう気持ちがあって」

『ウルトラ・メドレー』は21曲、32分という壮大な内容でしたが、編成を作り上げるまでがたいへんだったのではないですか?

「それは(バンド・マスター&ベーシストの)有賀(啓雄)くんの才能ですね。有賀くんがだいたいチョイスしてくれて、“この曲のこの部分は削ろうよ”とか、逆に“ここはどうしても足して欲しい”とか、あとから私が言って。だいたいこんな感じって言うのだけ伝えたらあとは有賀くんが繋いでくれたんですね。だけどスパルタ教育のようにリハーサルの初日からメドレーは必ず練習しました。やっぱり(一曲ごとに)サイズもテンポも違うから体に覚えこませないといけないということで初日からずっとそれを毎回、修行のように、他のリハーサルが終わったら、“はい、それでは『ウルトラ・メドレー』いきます”って言って、最後に“ダッシュ10本”みたいな感じで演っていたので、バンドのみんながすごい集中力で取り組んでくれてましたね」

中盤に演奏されたナンバーもスタジアムで育ててきた曲のオンパレード。最高の選曲でした。

「どうせ聴いてもらうんだったらイントロから鳥肌が立ってもらうような、“ワッ”と喜んでもらえるような選曲に今年に限ってはするべきだと思うし、自分もそうしたかったので、できる限りファンの方たちが納得してくれる選曲にしたつもりなんですけどね」

そういえば、去年19回目をやる前に“来年(20回目)はそんな選曲になるはずだから、19回目は私の演りたい曲にこだわりたい”と言ってましたね。

「そうですね。ちゃんと考えてるんです(笑)。どうしてもお客さんはいつもベスト盤的なものを、特にスタジアムでは望まれるんですけど、私は現在進行形なので、去年は『Blue Buttefly』というアルバムの曲をどうしても聴いて欲しかったし、今年のことも漠然と想定していたから、どちらも“なるほどな”っていうものにできましたね」

大江千里さん、山口智充さん、佐橋佳幸さんなど、ゆかりのゲストを迎えての演奏も盛り上がりました。

「ゲストは、私は誰も呼んでないんです(笑)。呼んでないって言ったら失礼だけど、大江千里さんとぐっさん(山口智充)は、“コンサートに出ていただかなくてもいいから観にきて”って。あの場所に一緒に居て欲しい、立ち会ってて欲しい人たちだから、忙しいだろうけど来てねって言った2人。佐橋佳幸さんに関してはバンドのメンバーたちが“やっぱりこの曲で佐橋に登場してもらいたい”というミュージシャンシップにのっとって“ここは佐橋の場所を空けておこう”みたいな感じで実現して。“あの人もこの人も舞台に引っ張り上げる”ということはしたくなくて。同じ空間に居て欲しいという人たちに声をかけたんです。他にも来て欲しい人はたくさんいるけれども、“オールスター夏の祭典”みたいになっちゃうのもよくないし、ファンの人たちは一番は私の歌をスタジアムで聴きたい、一緒に歌いたいっていう想いが強いと思ったから。ぐっさんに“ジミヘンみたいなのやって”って言ったのは私のリクエスト。“怪しげなギタリストが登場して明らかに弾いてないじゃんっていう感じはどうかな”って言ったら、“面白いですね”ってノリノリで。さすがだった。“来てね”って言っておきながら、私たちがぐっさんに楽しませてもらっちゃった(笑)。千里さんも『10years』でピアニストとして参加してくれた。20年間、“お兄ちゃん”として私を見続けてくれている視線ならではの『10years』のピアノだったと思う。佐橋くんのギターで『センチメンタル カンガルー』と『パイナップルロマンス』、思わず“雨のバカ”って言おうと思っちゃいましたよ(笑)。あの二人の真中に立っていると蘇りますよ(注:雷雨に見舞われたV4のとき、ギターを弾いていたのが佐橋佳幸だった)。
それぞれの人たちが持っている愛情の濃さというか、人間的な情の深いところを持ってスタジアムに参加してくれたから、“居て欲しい人”がみんな居てくれて嬉しいって思いました」

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