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浅野:長い年月と数々の伝説を積み重ねてきた“西武スタジアム・ライブ”。その「最終章」をどのような内容にしようと思って臨まれましたか。

misato:「まずは歌う私自身が一番楽しくやれるものにしようと思っていたんですけど、実際20周年ライブをやるに当たって、足しげく通って下さったファンの方含め、どの人が観ても満足してもらえるライブにしたいという欲も出てきて。“あの曲も、この曲も”って思うけど、時間に限りもあるし。去年印象的なシーンをみせたから、今回はこの曲はやらないとか、この曲はやっぱりやろうとか色々と考えながら決めていきました。20周年の節目、最終章というのも確かに大切なんですけど、それが次に繋がっていく掛け橋になるようなものにしたいと思って。本ステージからサブ・ステージまで繋がる花道を作って、一年一年数字(年号)を書いていったら結構な距離があったんです。それが次への掛け橋になるっていう私が頭で描いていたものを、きちっと舞台に具体化してくれて。あの一本の花道が今回の20年の舞台を象徴してくれたんじゃないかなって思いますね」

花道とか『ウルトラ・メドレー』のときのアルバム・ジャケットの掲示とか、観る側としてはその時代時代を振り返る気持ちになりました。それは美里さんも意識していたのですか。

「振り返るというよりも、メドレーだから1曲あたりの演奏が短い中で、演奏した瞬間に“あっ、あの曲”って思える象徴的なものとしてレコード・ジャケットが出たら瞬時に曲と画が繋がっていくだろうと思ったんです。曲がすぐわかるアイコン的なものですね。すごいテンポの速い授業なので(笑)、映像を使って説明しないと“あーっ、あの曲なんだっけ”って思ってるうちに次にいってしまうので。それもサビだけでなくそうじゃないフレーズもスタジアム向けに歌詞をチョイスして繋げたりしてたので、だったら映像と直接繋がる方が“あっ、あの曲だ”ってすぐに結びつくかなと思ってああいう演出にしました」

オープニングにサブ・ステージの下から飛び出して登場し、気球に乗って一周するというアイデアは?

「15周年のときに気球を一回やったんですけど、そのときはアンコールのときに使ったんです。“もう一度気球に乗りたいな”っていう単純な思いからなんですが(笑)、今回はのっけからしっかりお客さんの表情を見て、花道のところに戻ってくるという形をとりたいと前々から思い描いていたので」

お客さんもブルーのシートをかかげたり、人文字で「V20」と書いたり、美里さんにアピールしてましたね。

「去年の西武はテーマが『Blue Butterfly』だから“あれをやりたい”って私が言ったんですね(注:お客さんが青いシートをステージに向けて一斉にかざす演出)。でも今年は私は何もオーダーしてないんですよ。ファンクラブの人たちとスタッフが自主的にやってくれたんです。オープニングのイントロでステージに上がっていく瞬間、バーッと鳥肌が立って“よし始まる!”っていう思いで。出て行った瞬間に“あーっ、今年はこういうブルーのシートなんだ”って初めて知った。なおかつ「V20」って白い人文字で書いてくれたのが見事で、その情景を見てガツンときました。その演出にびっくりして、とっても嬉しくて。ひとりひとりがシートをかかげてる顔がメチャメチャ嬉しそうなんですよ。人が喜んでる顔ってすごく素敵だなって思った。私、ニコニコしながら涙がぼろぼろ溢れて。コンサートをオープニングからそういう空気にしてもらえるアーティストは、なかなかいないだろうなって思いました」

ファンからの感謝の気持ちなんですね。

「みんな歌ってくれてるしね。歌詞も覚えてくれてるし。だからちゃんと“届いていたんだな”って思います。もし西武がすごく大仕掛けのアトラクション的なコンサートであったら20年は続かなかったと思う。アリーナ席やスタンド席の端っこの方まで、それぞれに受け止めてる曲があって、好きな曲があって、言葉が届いてたんだなあってオープニングから感じましたね」

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