ココロノウタ

THE CODE 〜暗号〜

鈴木雅之

ESCL-3872/シングル/2012.4.11/¥1,223(税込)


 イントロからどこか懐かしさを覚えるような耳に優しいサウンド。歌い出しの、そのひと声から、じんわりと染みこむようなマーチンのヴォーカル。聴こえてくる歌詞からは、誰もが感じている命と魂の不思議さへの想いがあふれ出す。昨年、ソロ・デビュー25周年を迎えたヴォーカリスト・鈴木雅之が、四半世紀のヒストリーと「これからの鈴木雅之」を交錯させたニュー・ナンバー、それが「THE CODE 〜暗号〜」だ。
 曲の誕生は、実は2011年の2月にまで遡る。ソロ・デビュー25周年を迎えるに当たって、マーチンが企てたミッションのひとつが、過去にコラボレーションしてきたアーティストとの再コラボ。山下達郎、小田和正を始め、25年の時間の中で様々なアーティストとコラボレーションを重ね、そのすべてを「鈴木雅之流ラヴ・ソング」に昇華させてきた彼が選んだのは、槇原敬之だった。

「マッキー(槇原敬之)とは、いつかまたコラボしてみたいと思っていたし、アニヴァーサリーに華を添えてくれる存在として、このチャンスに一緒にやりたいって思ったんだよね」(鈴木雅之)

 その思いを受けた槇原敬之が曲を書き上げた。とは言っても、単に「楽曲を提供してもらう」というシンガー・ソングライターとヴォーカリストの一方通行的な関係ではないところがマーチンの流儀。何度も曲想、歌詞への思いをマッキーに語り、その意を受けた形で曲作りが進行する。

「最初に鈴木さんからお話をいただいた時には『これはもう超ラヴ・ソング』を作ろうって思っていました。それがまさに鈴木さんの25周年に相応しいだろうと思って。でも、その後、鈴木さんと話している内に、大切な人が亡くなった時に感じた鈴木さんの想い、それがテーマになっていったんですね」(槇原敬之)

「男と女のラヴ・ソングでありながら、もっと深いところで『魂』がふれあっていく、つながっていく、その思いを歌えたら……そんなことをマッキーと話したんだよね。もしかしたら、生まれる前から出会っていたり、つながっていたのかもしれない。それを感じさせてくれる『暗号』を持った人がいる。そんな想いが詰まったメロディーと歌詞を、見事にマッキーが届けてくれたんだ」(鈴木雅之)

 こうして誕生したナンバーだったが、完成の直後に2011年3月11日がやってくる。震災を体験した全員が驚き、戸惑い、悩み、そして傷みを抱えた中で、ある意味で究極の出逢いと別れを歌ったこのナンバーは、「震災後の逡巡と紆余曲折」の渦に巻き込まれていく。

「2011年という年が、鈴木雅之にとって25年目のアニヴァーサリー・イヤーであること、その年にこのナンバーがあって、そして震災がやってきた……そんなことのすべては自分にとっての何かの『縁』だと思ったんだ。それを感じた上で、2011年の鈴木雅之がやれることは何だろう、その結果がカヴァー・アルバム『DISCOVER JAPAN』なんだよね」(鈴木雅之)

 25周年のミッションであったリリースやツアーを見直さざるを得ない中で、『DISCOVER JAPAN』を作り上げる。その1年は、マーチンにとっても、そして広い意味で「被災者」である聴く側にとっても必要な時間だったのではないだろうか。それは、「THE CODE 〜暗号〜」という、深いテーマを表現した曲を熟成させる期間でもあった。音楽的な面では『DISCOVER JAPAN』で見事なオーケストラ・アレンジを披露した服部隆之が、世界中のエスニックな楽器の音色を随所に散りばめたサウンドを構築。まるでひとつの魂が地球の周りを自在に舞うような、そして音楽が過去から未来へとつながっていることをイメージさせるような、かつての鈴木雅之にはなかった新しい世界観を作り上げた。
 そのサウンドに乗って25年のキャリアがあるからこそ歌える鈴木雅之のヴォーカルが響く。槇原敬之は、鈴木雅之を「誰の曲でもすべて自分の曲にしてしまう、まさにシンガー・ソングライターのようなヴォーカリスト」と表した。カップリングである槇原曲のカヴァー「SPY」に関しても「大納得です。もう『SPY』は、鈴木さんの『SPY』でいいんじゃないかって思うぐらいです」と絶賛する。「暗号」に「SPY」と重ねてくる、マーチンの音楽的な洒落っ気も見逃せない。
 そんなディテールも含めて、「つながり」を何よりも大事にしてきたからこその26年目なのだ。

「ひとつの曲に込められた様々な『縁』、それこそが『THE CODE=暗号』でもあると思うんだ。鈴木雅之もひとりの人間として2011年を経験して、そしてソロ・ヴォーカリストとして26年目の一歩を踏み出した。そのことが誰かにとっても一歩を踏み出すための力になれればいいなと思っています」(鈴木雅之)