女性として、大きな経験である(出産)という人生の節目を迎え、レコーディング以外の表立った音楽活動を控えていたbird、約2年振りとなる久々のオリジナル・アルバムが完成!
「人生/ 生まれてから死ぬまで」という大きなテーマを日常の身近な題材で書きつづった、偶然にも自身の体験(出産=生まれる)ともリンクする興味深い内容のアルバム。
birdの新しい音世界のパートナーとして冨田恵一/冨田ラボ(冨田恵一としてもキリンジのアルバム「For Beautiful Human Life」以来、約3年振りとなるフル・アルバム・プロデュース)をプロデューサーに迎え、アンダーグラウンドから、ポップスなトラックまで、縦横無尽に冨田ワールド満載。第2章というに相応しい新たなbirdサウンドが完成!参加作家勢はキリンジ堀込泰行、COIL岡本定義、冨田恵一等、そしてbird自身のペンによるもの。今まで通りbirdによる全作詞、心地良く心に染み込むbirdの歌声も第2ステージに突入!
表題曲の「ファーストブレス」は、人生における「生まれる」というテーマのもと、本人書き下ろしによるもの。2006年bird meets “マエストロ”冨田恵一のタッグで造り出す新しい音世界、All Music Lovers必聴!!
birdのニュー・アルバム『BREATH』には、ひとりのシンガー・ソングライターであり、ひとりの女性である彼女に訪れたさまざまな偶然の重なりの物語が詰まっている。2004年夏に、〈架空の未来リゾート〉というコンセプトを持つアルバム『vacation』でイマジネーション溢れる世界観を極めた彼女は、2005年1月にインドへ旅をして一回リセット。そこで、〈人が生まれてから死ぬまで〉という次のアルバム(『BREATH』)のコンセプトを得る。6月には、前年に続いて宮古島での環境保全をテーマとするチャリティー・フリー・ライヴに出演。そこで古謝美佐子によるオキナワを代表する子守唄 “童神”を歌ったbirdは、8月に同曲のカヴァーをシングルとしてリリースする。この大らかな雰囲気に包まれた宮古島で子守唄“童神”を歌う彼女のお腹のなかには、新たな命が宿っていたという。9月にベスト・アルバム『bird’s nest』で音楽活動にひとつの節目を付けた彼女は、妊娠中であるためレコーディング以外の表立った活動を控えることに。
年が明けて無事に出産後、2年ぶりとなるオリジナル・ソングで〈母〉となった〈NEW bird〉がスタートする。2006年6月、“童神”へのアンサー・ソングとして、また彼女が愛して止まない沖縄の風土や人々の心への感謝を込めて出産後に書いた“ファーストブレス(Okinawa Limited Ver.)”を〈鳥〉名義で沖縄限定シングルとしてリリース。『RAINBOW HAWAII』など現地レコーディング作品でも知られるKAMA AINA(青柳拓次)、RT(高田漣)、MOOSE HILL(伊藤ゴロー)という〈島音楽トライアングル〉と共に録音された、〈生まれる〉というテーマを持つこの曲は〈オキナワ+ハワイ+ブラジル〉なユル〜くて愛すべき仕上がりとなった。そして9月には、冨田ラボこと冨田恵一プロデュースによる、アルバム先行シングル『SPARKLE』をリリースする。
「子供を生んだことによって歌える言葉の幅が増えた」と語るbirdは、〈人が生まれてから死ぬまで〉という『BREATH』のコンセプトについて、「どんな人も必ず通ることなので、(歌を届ける)対象を狭めることのない〈普遍的なテーマ〉。ちょうど普通に歩く感じ」だと語る。冨田ラボ名義での『shiplaunching』でも現代最高峰のポップ魔術師っぷりを見せてくれた今作のプロデューサー・冨田恵一も、「壮大なテーマなんだけど、それに囚われすぎずに〈ポップ〉ということを意識した」という。birdが新たに挑戦する世界観に冨田マジックがどう施されるのか、または冨田サウンドの上でbirdがどんな歌声で羽ばたくのか――聞いただけでワクワクするコラボレーションだが、結果は予想を超える出来映えになった(聴いていただければわかります)。
「生きるということの分岐点を曲にした」という『BREATH』。オープニングは、 タイトルどおりのテーマを持つ“おなかの中で”。そして、この世に生まれ出て〈初めての呼吸〉を意味する“ファーストブレス”のアルバム・ヴァージョンが続く。沖縄限定シングルとは打って変わり、ダンサブルでアッパーなアレンジとなっている。爽やかでメロディアスなポップ・ナンバー“Dear my friend”は「人に自分の思いや感じていることを伝えたいな、伝わると楽しいな」という〈コミュニケーション〉がテーマで、「人が歩いたり、走ったり、踊ったり、と動く速度が変わると見えてくるものも変わる」というテーマを持つ“ツツジの蜜をめしあがれ”は、放課後に思いっきり友達と遊びまわる楽しさを陽気なカリビアンのリズムで表したナンバー。続く“記憶の水槽”は、心地良いバックビートに乗って、〈毎日いろんなことを覚えて、そして忘れていく〉という記憶の不思議をちょっぴり切ないメロディーで歌う。先行シングルでもある“SPARKLES”は〈恋をする〉がテーマで、軽快なリズムと突き抜けたメロディーに恋のドキドキ感が詰まった陽性チューン。続く、〈旅をする〉がテーマの“マイ ペン ライ”は、タイ旅行をモチーフとしたちょっとファニーかつソウルフルなナンバーだ。
そして、しっとりと落ち着いたスロウ・チューン“やわらかな旋律”のテーマはスバリ〈愛する〉。良い事もあれば悪い事もある、何気ない日常のなかの小さな幸せをシンプルに描いたbirdの歌詞が本当に素晴らしい。〈笑う〉がテーマの“よろこびの種”はポジティヴな力強さを表すミドルテンポのナンバーで、シンプルでさり気ない言葉を重ねたこの曲でもbirdの歌詞の才能がキラリと光っている。次の“laboratory”はグッと趣向を変えて、厳かな美しさを持つストリングスの音色をバックにbirdは、〈老いる〉というテーマを思慮深い視点で見事に歌い表している。そしてラスト・ナンバーとなる“パレード”のテーマは〈死〉。「暗い感じにしたくない」というbirdの要望に対して冨田はニューオーリンズの明るく派手なお葬式(のパレード)を思い出して、かの地の陽気に跳ねるリズム〈セカンドライン〉の曲を書く。彼女なりの死に対しての見解を歌ったこの曲は実にドラマティックで、人の親=母となったことによって得たであろう、ちっちゃなエゴを超えて広い視野に立った、力強く、慈愛に満ちたものになっている。
一曲一曲聴き飽きることのないヴァラエティーに富んだサウンドをクリエイトしている冨田のポップ・マジックは冴え渡り、birdの歌はその一曲ずつ異なったテーマごとにさまざまな感動を我々に与えてくれる。そして特筆したいのは、壮大かつ現実的なテーマを持っているにも関わらず、birdがこの『BREATH』(=呼吸)という人間の一生を描き切った世界からは決してネガティヴな印象は受けず、アルバム全体が明るくポジティヴなエネルギーに満ち溢れているということ。そして、その明るく躍動的な世界を自由に羽ばたくbirdの歌声も最高に明るくて力強く、素晴らしいということも最後に付け加えておこう。
1. おなかの中で
人がお母さんのおなかの中にいる感じの曲を冨田さんにお願いしました。このコーラスワーク、かなりグッときます。このアルバムのオープニングにふさわしい一曲だと思います。
2. ファーストブレス
今回のアルバムのコンセプトが出て来たのは、昨年一月のインド旅行へ行ったのがきっかけです。「人が生まれてから死ぬまで」人が生きているうえで必ず通るポイントポイントを音楽にしてみたいなあ、と思いました。昨年夏、自分が妊娠していることがわかり、せっかくなら出産を終えてから「生まれる」というテーマの曲を書こうと思いました。そして出産を終え、作曲にとりかかりました。人が生まれるときの静と動、初めての呼吸、そんなドラマチックな感じをこの曲に込めました。冨田さんにお願いして子供の心音をリズムに混ぜていただきました。
3. Dear my friend
誰かに自分の思っていることや感じていることを伝えるってなかなか難しいです。でもコミュニケーションは生きていくうえでとても大事ですよね。私の場合は音楽で何かを伝えようとしているのですが。。伝えたいな、伝わると楽しいな、そんな感じの一曲です。
4. ツツジの蜜をめしあがれ
アルバムの中で一曲遊べる、セッションできるようなものがあればいいなと思って作りました。テーマは人が歩いたり、走ったり、踊ったり、と動く速度が変わると見えてくるものも変わる、くるくる楽しく&かわいい曲です。歌詞の情景を音の遊びの中で味わってもらえたらうれしいです。
5. 記憶の水槽
人は毎日いろんなことを覚えて、そして忘れていきます。ずっと忘れていたことをなにかのスイッチがオンになると一気に思い出すことってありますよね。不思議ですこしせつない一曲に仕上がりました。
6. SPARKLES
先行シングルになった曲です。「恋をする」というテーマで出来た一曲です。人が恋としているときのあの自分を見失ってしまう感じ、こみ上げてくるエネルギー。新しい価値観にひたれる瞬間。やっぱり人は恋をし続けないといけませんね。そんなキラキラした一曲です。
7. マイ ペン ライ
「旅をする」というテーマで作りました。人はいろんな旅をしますよね。生きていくこと自体が旅、新しい何かを探すのも旅、私にとって音楽も旅。この曲は以前タイに旅行したことがあり、タイのほんわかした感じも入れてみました。マイ ペン ライはタイ語で「気にしないでー。くよくよしないでー。ゆったりねー」みたいな意味で、タイの人がよく使う言葉です。
8. やわらかな旋律
「愛する」というテーマで作ったものです。いろんな愛のかたちがあると思います。何気ない日々の1ページを切り取ったような情景が浮かぶ一曲だと思います。シンプルでかっこいいものに仕上がりました。
9. よろこびの種
人が笑う瞬間ってホント、素敵だと思います。なににもかなわない感じだなあと思います。歌詞は温室へ行っていろんな植物が育っているのを見てヒントをもらいました。
10. laboratory
人は生きているといずれ歳をとっていきます。この曲のテーマは「老いる」です。言葉で書くとなんだかこわいのですが、この曲は人が歳を重ねていくうえで、いろんな経験をして知恵をつけて、若いときとは違う、人としての味わいみたいなもの、でもまだまだ自分自身の実験は死ぬまでつづく、そんな感じを歌詞で書けたらなあと思って書きました。始めは海が見える情景を書いてみたのですが、冨田さんのトラックを聴いて、なんだかすごく森な感じがしたので、森の中の情景に書き直しました。アルバムの中ではかなりコアでかっこいい一曲になりました。
11. パレード
人は生まれてそして誰にも訪れる、「死」をテーマにした一曲です。冨田さんにこのアルバムの内容をお話したときに、死をテーマの曲なんですけど、暗い感じにしたくないです、と伝えたところ、ニューオリンズのお葬式はかなり派手だということを教えてもらいました。セカンドラインのリズムでアッパーな感じはどうでしょう?と冨田さんから言われ、それならパーっとしてていいなと思い、それが形となった一曲です。アルバムの中で一番歌うのが大変だった曲ですが、とてもがんばったのでいい感じになったと思います。人が死んだらどうなるのか、死んだ事がないのでわかりません。でもこの曲には今の私の死に対する気持ちが歌詞に入っていると思います。
人の一生を表現したコンセプト.アルバムにしたい、しかもポップに。依頼を受け、最初にこんなことを言われた気がします。「ポップに」というところがポイントですね。どんなコンセプトであれ、コンセプト.アルバムは大仕掛けになりがち。ましてや「人の一生」という大きなテーマであればなおさら重厚だったり、荘厳だったり、過剰になってしまいがちです。だけれどもそれを「ポップに」表現したいというところに大きく賛同しました。繰り返しますが、「人の一生」は本当に大きなテーマです。
多くの人は尻込みしてしまいがちでしょうが、それを「ポップに」表現するアルバムを作りたいなんて!
birdさんのバランス感覚は素晴らしいですね。そして「とてもポップな」アルバムができたと思います。