Interview
大山百合香
大山百合香の清涼で美しい歌。それは島から受け継いだ星の歴史
大山百合香 05年、4月にシングル「海の青 空の青」でデビューし、8月にはセカンド・シングル「ブーゲンビレア」をリリースした大山百合香。彼女の歌は壮大な自然風景を映し出し、聴き手に清涼な島の香りを残す。同年の夏に宮古島で行われたサンセット・ライブでは、彼女の声と美しい島の景色が境界線なく溶け合っているようで、あらためて彼女の歌が持つアイランド感に浸った。それもそのはず。奄美群島、沖永良部島。海と空に囲まれた隆起珊瑚礁の島。豊かな自然に恵まれたその島で彼女は生まれ育った。

「沖永良部島は何もない島なんですよ。あるのは海や空、畑があってサトウキビがなっている。ため池や家がぽつんぽつんとあって、たまにハイビスカスが咲いてたり、犬が歩いていたり、本当にふつうの島。だけど私のなかではとても存在感のある島です」

彼女はその何もないという島で、逆に恵まれた自然環境や濃密な人間関係のなかで彼女なりの感性を育んだ。

「畑に行くとばあちゃんたちが花刈りとかしてるんですよ。なので幼いころはばあちゃんと話しながら草とかちぎったりして遊んでました(笑)。友達と学校帰りに道に咲いている花を採って蜜を食べたり、サトウキビをとって食べたり」

そして島に伝わる歌や母親が奏でるピアノの音など、彼女の周りには音楽を身近に感じる環境もあった。

「ばあちゃんやおじぃが三線を弾きながら歌ってたり、母親がピアノの先生をしていたり、有線から流れてくる民謡をお父さんがよく歌うもんだから真似ていっしょに歌ったり。幼いころから歌も楽器も自然とそばにあって、特別に習っていたわけではないけどしょっちゅう歌をうたってました。周りの環境にいちばん感謝しないといけないなと思ってるんです」

島の暮らしのなかで自然と感じ取った歌うことの楽しさ。いま、それをひとりの歌い手として表現する彼女の歌は躍動する喜びに満ち溢れている。歌と出会えた喜び、そして感謝の気持ちを込めて歌い上げるニュー・シングル「星の歴史」は一片の曇りもなく純粋で美しい。本当に柔軟で優しい歌だ。プロデューサーに朝本浩文を迎え、bonobosの蔡忠浩が作詞を担当。そして「星の歴史」のみならずC/W「永良部の子守唄〜Where is Your Mammy?〜いったーあんまーまーかいが」を含め2曲にウチナーグチ・レゲエDJ U-DOU&PLATYをフィーチャーした。さらに鳩間可奈子の三線やでいご娘の比嘉けい子による島太鼓の音を織り交ぜ、深みのあるアイランド・レゲエ・サウンドに仕上がっている。

「この歌、「星の歴史」はすごく哲学的な歌詞なんですよ。恋愛とか友人とか親に対する愛だったり、いちばん感じたのはばあちゃんとか先祖に対する愛。その人たちがいたから今の私がいる。哲学的だけどあたりまえのことでもあって、歌詞をパッと見ただけでなんか幸せだなーって思いました。島を離れて3年が経つんですけど沖永良部島があるからがんばれる、みたいに島が自分のなかでの支えになっている部分はとても大きい。でもそれ以上に島から出発した私の気持ちが、いま、また島に向かっていくというか、回帰していってます。歌をうたうことで島に恩返しをしていきたいと思うんですよ。お世話になったから。いつもありがとうって」

「星の歴史」に込められた思い、それは大山百合香の誓いなのかもしれない。故郷を遠く離れ、歌い手としての道を歩むなかで、故郷の沖永良部島や親や祖先、そして彼女の歌を聴いている人すべてに向けた彼女の誓い。

島に生まれ、育まれた大山百合香の感性で歌われる美しい歌。それはある意味、島から受け継いだ歴史でもある。いま、大山百合香はその歴史をまた次に受け継ぐために「星の歴史」を歌っている。

(四王天 信和:沖縄ハンズ・ライター)
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