1987年にソロ活動をスタートさせたTUBEのギタリスト春畑道哉が12年ぶりの新作ミニアルバムをリリース!!
「FIND MY PLACE」
ライナーノーツ
Text by 藤井徹貫
 十年は偉大、二十年は畏るべし、三十年は歴史になる。中国の古いことわざらしい。継続の重さを説いている。85年にデビューし、まもなく歴史の域に達するTUBE。そのギタリストであり、メロディメーカーでもあり、アレンジの中核を担ってきたのが春畑道哉だ。
 彼のソロワークは87年のミニアルバム『DRIVIN'』から始まった。20歳そこそこの彼が見せた大器の片鱗はあまりにも鮮烈だった。あれから25年、今ここにあるのは12年ぶりの新作となるミニアルバム『FIND MY PLACE』。あえて一言で表わすなら、歌える歌っているギター・インストだろう。
 歌えるとは、文字どおり、どの曲をとっても歌えるのである。曲の主題となっているメロディも、曲の骨子となっているリフも、曲のアクセントとなっているフレーズも、はたまた印象的なリズムまでも、歌えてしまう。くちずさめる。ジェフ・ベックの「You Know What I Mean」のようにだ。
 では、歌っているとは…。これまた文字どおり、ギターが歌っている。ときにのびやかに、ときにシャウトし、ときにせつせつと歌っている。そう、ギターを歌わせている。「パリの散歩道」のゲイリー・ムーアのようにだ。
歌う。語源は訴える(訴う)とも言われる。思いを、心情を、願いを訴えるもの、それが歌。『FIND MY PLACE』は歌で溢れている。ギター・インストであるから歌詞はない、ボーカルもない。が、歌が溢れてくる。
 それが表テーマとしたら、裏テーマもある。こちらもあえて一言で表わそう。インタープレイ。辞書には相互作用と載っている。が、音楽用語のそれは、ミュージシャンがお互いの音に反応して高まっていく演奏のこと。いうなれば楽器での会話。それを支えているのが松田 弘(サザンオールスターズ)のドラムであるのは言うまでもないだろう。
 会話。ご存知だろうか、我々の日常会話においても、話している相手から受け取る全情報(感情や印象など)のわずか7%に過ぎないのである、言葉そのものにより伝わる割合は。残り93%、つまり会話で伝わるほとんどの情報は相手の表情や身ぶり、もしくは声の大きさやトーンによっている。この非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)の結晶こそインタープレイだ。
 ただし、たかが言葉、されど言葉。その存在は大きい。言葉あるいは歌詞のない音楽の住人たらんとすれば、それ相応のスキルを求められる。下手には無理。マンUの熱烈なファンのウサイン・ボルトが入団を希望したとかしないとかニュースになったが、四方山話としてなら有りだが、現実的には無し。チームのインタープレイを台無しにするだけだ。
 『FIND MY PLACE』をサッカーに例えるなら、楽曲はフィールド、コード進行は戦術。その中を縦横無尽に駆け回る変幻自在のプレイヤーが春畑のギターとなる。ときにトップ下として攻撃のタクトを振る。ときには遠藤よろしくボランチから絶妙のパスを供給。もちろん鋭角的なドリブルでゴールを狙うストライカーの顔も見せる。ドラムはザックジャパンの生命線である吉田+川島か、ならばベースは長谷部、サックスは香川、キーボードは内田+長友か。彼らの卓越したスキルと、それに支えられたプレイに興奮してしまう。
 興奮の中で思い出すのは、ぼくの記憶が定かなら、88年4月6日夜の神戸。のちにロックの殿堂入りする事になるギタリストも、当時から春畑道哉の才能を認めていた事実。そんな早熟なギタリストが今やっと、実年齢にふさわしい表現に達したのかもしれない。背伸びもせず、迎合もせず、斜に構えることもなく、ありのままの自分でギターを弾いているように聴こえる。だから、この言葉を贈る。
There is your place in our heart loving your guitar.


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