1987年にソロ活動をスタートさせたTUBEのギタリスト春畑道哉が12年ぶりの新作ミニアルバムをリリース!!
「FIND MY PLACE」
楽曲解説
Text by 藤井徹貫
M1. EAGLE FLY
 鷲が飛ぶ。曲名どおり、大きな翼を広げ、大きな空を悠然と往く、鷲の姿が見えてくるパートから始まる。そして現われるのは、隼のサックスと鷹のキーボード。「上を見ぬ鷲」(何者も怖れる必要がなく、思うままに振る舞うこと)のことわざのまま、ギターは雄々しく気高く大空を往く。ラストのギターのディレイは飛び去った鷲が残した旋風だ。
M2. RUDE SWING♪
 序奏→提示→展開→再展開→と、まるで物語でも読むかのように進む曲。序奏でのエンベロープフィルターをかましたファンクからジャズへと展開するあたりは、まさに結末の見えない物語。この先どうなる!?と好奇心があおられる。物語の背景あるいは情景ともいえるリズムの変遷も肝。ちなみにギターの音色がまったくジャズでない点もRUDEでステキ。4分15秒頃からのギターとサックスのデュオにも外耳道が広がってしまう。
M3. sign
 サックスのイントロに続く、ギターのメロディは指弾きだろうか。音の粒が独特だ。語るように歌い始めたギターが徐々に熱を帯びて行くと、目に浮かぶのはソウルフルなシンガーが体をくの字に折り、片方の手を強く握り締め、もう片方の手に持ったマイクに魂を注ぎ込む姿。曲の構成やアレンジもボーカル曲そのもの。歌心が溢れる松田 弘(サザンオールスターズ)のドラムは流石の一言。本作の表看板と言いたい。
M4. EXPERIENCE #9
 ファンキーでロックなナンバー。もちろんメロディも、リフも、オブリも、どれもこれも歌えてしまう。スキル不足だと、からまわりしてしまいそうなフレーズも、さすが軽々と決め、ぼくらリスナーのロック心に着火する。もうくちずさむだけじゃ飽き足らず、ギターを抱え、あっちもこっちもコピー。かくして2分30秒頃からはギターVSサックスのバトルが勃発。Oh Yeah!!
M5. CROSS ROAD
 色気のあるディストーションで始まる。それだけでもう別世界の扉が開いてしまう。扉の向こうでは、三日月が哀愁の雫を垂らし、ベルベットの夜陰に風紋が浮かび、十字路の真ん中で二枚舌のミミズクが手招きしている。見える筈のないものが見え、聴こえる筈のないものが聴こえる、それがこの曲の力だ。歌詞もボーカルもないインストだから天外天も桃源郷も旅できる。
M6. Dec. horoscope
 12月の夜空を描いたソネット。凍える夜、ベテルギウス、シリウス、プロキオンを探しながら、隣にいる好きな人の手を握るとき、この曲が流れたら…。星を見るのが好きな宙(そら)ガールが急増中の昨今、この曲をプレゼントしたら…。できる事なら、12カ月のhoroscopeシリーズをお願いしたい。それにしてもラストのハーモニックスが憎い。星の瞬きが見える。
M7. The ONE
 本作では唯一、TUBEが見える曲。骨太のギター・トーンは前田亘輝の声を想起させる。力強いメロディからは諦めるなよ、何かを始めてうまく行かなかったら、またやり直せばいいさ、そんな歌詞が聴こえてきて心が熱くなる。これはTUBEで春畑道哉が確立したスタイルでもある。自ら築いた居場所だ。その曲に「The ONE」と名づけた気持ちを思うと、さらに胸が熱い。
M8. Everlasting Place
  エレクトリックギターとピアノだけのバラード。Everlasting Place(永遠の場所)とはどこか、自分にとってのそれはどこかと思いながら聴くと、こみあげてくる。失くした何かに呼びかけるのか、握った掌の中にある何かにつぶやくのか、ギターは歌う。あなたにとっての永遠の場所とは…。聴く者の中にある真実と共鳴する曲だ。きっと抑えきれないものに出会えるだろう。


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