春畑道哉 2nd Mini Album「FIND MY PLACE」2012.12.05 RELEASE !!

今回のアルバムタイトルは「FIND MY PLACE」。春畑道哉が改めて自分自身と向き合い、いま一人のギタリストとして表現すべきこと、自分の立ち位置を再認識するというテーマに基づいて付けられたタイトルである。制作に入る前に春畑は、新たな側面をリスナーに感じ取って欲しいという思い、またライブツアーとレコーディングメンバーを固定したメンバーで回りたいという意志の下、共演ミュージシャンの人選を行なった。そして今回ドラマーに松田 弘(サザンオールスターズ)。日本を代表するインストゥルメンタルグループ”DIMENSION”のメンバーからKey小野塚晃とSax勝田一樹。スガシカオなど多数のアーティストをサポートして活動するベーシストの坂本竜太という、キャリア、スキル、実力全てを持ち得たこの4名のミュージシャンとタッグを組んだ。まさに全音楽ファン必聴のインストゥルメンタル作品。

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FIND MY PLACE

「FIND MY PLACE」 ライナーノーツ 楽曲解説

ソロツアー詳細

「FIND MY PLACE」ライナノーツ Text by 藤井徹貫

  十年は偉大、二十年は畏るべし、三十年は歴史になる。中国の古いことわざらしい。継続の重さを説いている。85年にデビューし、まもなく歴史の域に達するTUBE。そのギタリストであり、メロディメーカーでもあり、アレンジの中核を担ってきたのが春畑道哉だ。
  彼のソロワークは87年のミニアルバム『DRIVIN'』から始まった。20歳そこそこの彼が見せた大器の片鱗はあまりにも鮮烈だった。あれから25年、今ここにあるのは12年ぶりの新作となるミニアルバム『FIND MY PLACE』。あえて一言で表わすなら、歌える歌っているギター・インストだろう。
  歌えるとは、文字どおり、どの曲をとっても歌えるのである。曲の主題となっているメロディも、曲の骨子となっているリフも、曲のアクセントとなっているフレーズも、はたまた印象的なリズムまでも、歌えてしまう。くちずさめる。ジェフ・ベックの「You Know What I Mean」のようにだ。
  では、歌っているとは…。これまた文字どおり、ギターが歌っている。ときにのびやかに、ときにシャウトし、ときにせつせつと歌っている。そう、ギターを歌わせている。「パリの散歩道」のゲイリー・ムーアのようにだ。
  歌う。語源は訴える(訴う)とも言われる。思いを、心情を、願いを訴えるもの、それが歌。『FIND MY PLACE』は歌で溢れている。ギター・インストであるから歌詞はない、ボーカルもない。が、歌が溢れてくる。
  それが表テーマとしたら、裏テーマもある。こちらもあえて一言で表わそう。インタープレイ。辞書には相互作用と載っている。が、音楽用語のそれは、ミュージシャンがお互いの音に反応して高まっていく演奏のこと。いうなれば楽器での会話。それを支えているのが松田 弘(サザンオールスターズ)のドラムであるのは言うまでもないだろう。
  会話。ご存知だろうか、我々の日常会話においても、話している相手から受け取る全情報(感情や印象など)のわずか7%に過ぎないのである、言葉そのものにより伝わる割合は。残り93%、つまり会話で伝わるほとんどの情報は相手の表情や身ぶり、もしくは声の大きさやトーンによっている。この非言語コミュニケーション(ノンバーバルコミュニケーション)の結晶こそインタープレイだ。
  ただし、たかが言葉、されど言葉。その存在は大きい。言葉あるいは歌詞のない音楽の住人たらんとすれば、それ相応のスキルを求められる。下手には無理。マンUの熱烈なファンのウサイン・ボルトが入団を希望したとかしないとかニュースになったが、四方山話としてなら有りだが、現実的には無し。チームのインタープレイを台無しにするだけだ。
  『FIND MY PLACE』をサッカーに例えるなら、楽曲はフィールド、コード進行は戦術。その中を縦横無尽に駆け回る変幻自在のプレイヤーが春畑のギターとなる。ときにトップ下として攻撃のタクトを振る。ときには遠藤よろしくボランチから絶妙のパスを供給。もちろん鋭角的なドリブルでゴールを狙うストライカーの顔も見せる。ドラムはザックジャパンの生命線である吉田+川島か、ならばベースは長谷部、サックスは香川、キーボードは内田+長友か。彼らの卓越したスキルと、それに支えられたプレイに興奮してしまう。
  興奮の中で思い出すのは、ぼくの記憶が定かなら、88年4月6日夜の神戸。のちにロックの殿堂入りする事になるギタリストも、当時から春畑道哉の才能を認めていた事実。そんな早熟なギタリストが今やっと、実年齢にふさわしい表現に達したのかもしれない。背伸びもせず、迎合もせず、斜に構えることもなく、ありのままの自分でギターを弾いているように聴こえる。だから、この言葉を贈る。
There is your place in our heart loving your guitar.

楽曲解説 Text by 藤井徹貫

  鷲が飛ぶ。曲名どおり、大きな翼を広げ、大きな空を悠然と往く、鷲の姿が見えてくるパートから始まる。そして現われるのは、隼のサックスと鷹のキーボード。「上を見ぬ鷲」(何者も怖れる必要がなく、思うままに振る舞うこと)のことわざのまま、ギターは雄々しく気高く大空を往く。ラストのギターのディレイは飛び去った鷲が残した旋風だ。

  序奏→提示→展開→再展開→と、まるで物語でも読むかのように進む曲。序奏でのエンベロープフィルターをかましたファンクからジャズへと展開するあたりは、まさに結末の見えない物語。この先どうなる!?と好奇心があおられる。物語の背景あるいは情景ともいえるリズムの変遷も肝。ちなみにギターの音色がまったくジャズでない点もRUDEでステキ。4分15秒頃からのギターとサックスのデュオにも外耳道が広がってしまう。

  サックスのイントロに続く、ギターのメロディは指弾きだろうか。音の粒が独特だ。語るように歌い始めたギターが徐々に熱を帯びて行くと、目に浮かぶのはソウルフルなシンガーが体をくの字に折り、片方の手を強く握り締め、もう片方の手に持ったマイクに魂を注ぎ込む姿。曲の構成やアレンジもボーカル曲そのもの。歌心が溢れる松田 弘(サザンオールスターズ)のドラムは流石の一言。本作の表看板と言いたい。

  ファンキーでロックなナンバー。もちろんメロディも、リフも、オブリも、どれもこれも歌えてしまう。スキル不足だと、からまわりしてしまいそうなフレーズも、さすが軽々と決め、ぼくらリスナーのロック心に着火する。もうくちずさむだけじゃ飽き足らず、ギターを抱え、あっちもこっちもコピー。かくして2分30秒頃からはギターVSサックスのバトルが勃発。Oh Yeah!!

  色気のあるディストーションで始まる。それだけでもう別世界の扉が開いてしまう。扉の向こうでは、三日月が哀愁の雫を垂らし、ベルベットの夜陰に風紋が浮かび、十字路の真ん中で二枚舌のミミズクが手招きしている。見える筈のないものが見え、聴こえる筈のないものが聴こえる、それがこの曲の力だ。歌詞もボーカルもないインストだから天外天も桃源郷も旅できる。

  12月の夜空を描いたソネット。凍える夜、ベテルギウス、シリウス、プロキオンを探しながら、隣にいる好きな人の手を握るとき、この曲が流れたら…。星を見るのが好きな宙(そら)ガールが急増中の昨今、この曲をプレゼントしたら…。できる事なら、12カ月のhoroscopeシリーズをお願いしたい。それにしてもラストのハーモニックスが憎い。星の瞬きが見える。

  本作では唯一、TUBEが見える曲。骨太のギター・トーンは前田亘輝の声を想起させる。力強いメロディからは諦めるなよ、何かを始めてうまく行かなかったら、またやり直せばいいさ、そんな歌詞が聴こえてきて心が熱くなる。これはTUBEで春畑道哉が確立したスタイルでもある。自ら築いた居場所だ。その曲に「The ONE」と名づけた気持ちを思うと、さらに胸が熱い。

  エレクトリックギターとピアノだけのバラード。Everlasting Place(永遠の場所)とはどこか、自分にとってのそれはどこかと思いながら聴くと、こみあげてくる。失くした何かに呼びかけるのか、握った掌の中にある何かにつぶやくのか、ギターは歌う。あなたにとっての永遠の場所とは…。聴く者の中にある真実と共鳴する曲だ。きっと抑えきれないものに出会えるだろう。

TUBE Live Around Special 2012〜SUMMER ADDICTION〜
TUBE Live Around Special 2012〜SUMMER ADDICTION〜 TUBE Live Around Special 2012〜SUMMER ADDICTION〜 初回生産限定盤 TUBE Live Around Special 2012〜SUMMER ADDICTION〜 通常盤

春畑道哉プロフィール

1985年TUBEとし「ベストセラー・サマー」でレコードデビュー。3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」のヒットでバンドとしての地位を確立。1987年TUBEと並行して、ソロ活動を始め、現在までに、シングル2枚とアルバム10枚(ミニアルバム、ベストアルバム含む)をリリース。1992年シングル「J'S THEME」が日本初のプロサッカーリーグであるJリーグオフィシャル・テーマソングとなる。1993年のJリーグオープニングセレモニーでは音楽を担当、国立競技場の5万人の観衆を前にライブを行った。2002年5月9日米国のギターメーカー・フェンダー社と正式にアーティストエンドース契約を交わした。春畑のギターテクニックとセンス、またコンポーザーとしての実力ミュージシャンへの影響力、そしてフェンダーをこよなく愛する姿勢が総合的に認められて全面的なサポートが約束された。エリック・クラプトンなどの人気、実力、影響力を兼ね備えたギター・プレーヤーのシグネチャモデルを誕生させてきたフェンダー社が初めて日本人ギター・プレーヤーとして春畑道哉モデルを発売した。春畑にとって栄誉なことであり、日本のミュージックシーンにとって記念すべき出来事となった。

Discography

Drivin'Smile On Me GUITAR LANDDream Box MoonReal Time Color of LifeRED BIRD Michiya Haruhata BEST WORKS 1987-2008〜ROUTE86〜J'S THEME J'S THEME (Jのテーマ)Best Day of Your Life

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