KEN ISHII TALKS ABOUT "SLEEPING MADNESS"

次に各曲について、それぞれの曲のタイトルも何か暗示的な感じも受け取れるんですが、それぞれの曲のタイトルの意味、その制作の背景みたいなところを教えてもらえますか?

自分がつくっている音楽って基本的に言葉の要素が少ないものなので、なるべくその曲をつくった時の気持ちとかきっかけとかを、その曲のイメージとあった言葉にしてタイトルにするようにしているんです。まず1曲目の「Khaotic Khaen」で、“Khaen(ケーン)”というのはタイの笛の名前でこの曲の全編にその音が入っているんだけど、前々からこういうネイティヴな音をエレクトリックな音と雰囲気的にフュージョンさせたいという気持ちがすごく強くて、ただそれは民族楽器音とエレクトリックな音をきれいにミックスさせるというものでは決してなくて、ネイティヴな音と電子音を合わせたときに、ちょっと混沌とした感じをもった、変なカタチのものになったというような雰囲気を出したかったので「Khaotic Khaen」というタイトルにしました。

2曲目の「Misprogrammed Day」はその曲をつくっている時というよりも日常の中で何か物事がうまくいかない時、自分で全部わかってはいるんだけど、それでも「これって誰かか仕組んでんじゃないのかな?」って思ってしまうことがあったりして、そういう気分の日のことをあらわした曲です。

3曲目の「Where Is The Dusk」というのは、これも小さい頃から思っていたことなんだけど、夜寝ようとベッドに入るじゃないですか。その時に眠りに入る瞬間ってどういう感じなのかな、その直前の意識ってどういうものなのかって思うんですよ。それを確認して寝ようと思うとなかなか眠れなかったりして(笑)。“Dusk”って言葉自体は黄昏れとか夜と昼の境目というような意味なんだけど、それを自分がずっと感じているそういった想いに置き換えてみたという曲なんです。

4曲目「Enso Online」の“Enso”というのは「演奏」。この言葉は曲をつくっている時に参加したDJ スプーキーが使った言葉で、最初にどういう曲にしようというディスカッションをいろいろとやった後に彼がいくつかのパートをつくって送ってきた時、それらに仮のタイトルがつけてあって、そこに“Enso”と書かれていたんですよ。彼とは2年前くらいからサーバースペース上でのコミュニケーションをやってきたので、その“Enso”と“Online”という2つの言葉をくっつけてタイトルにしたんです。

5曲目の「24bit Optimist」は今の自分を素直にあらわしたような曲です。基本的にはテクノロジー好きなんだけど、あくまで「好き」以上でもないし以下でもない。今自分のスタジオ環境も24ビットで、世の中には48bitとか96kとかあるんだけど今現在の時点ではそれにリアリティを感じているし。あと、僕が曲をつくるときというのはいつも前向きな気持ちから作品がうまれるわけで、決して悲しさとかからではないところから出てくるのでこの「24bit Optimist」というタイトルにしたんです。(*2)

*2: 現在もっとも一般的な音楽データ形式が24bit。これを最終的にミックスダウンの作業などでCDの16bit/44kHz.フォーマットに変換する。
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