WITH BOCHUM WELT

レーベルのコ・オーナーであるグラントには「90年代のクラフトワークだ」と評されるボカム・ウェルトことジャンルイジ・ディ・コスタンツォは25才のミラノに住む青年。彼のバックグランドに流れる音楽から現在、そしてこれからの彼について、週末でスイスへ遊びに行く直前の彼を引き止めて(笑)聞いてみました。

まず、音楽を始めた時期と最初に手に入れた楽器とを教えて下さい。

BOCHUM WELT(以下BW): 今25才なんだけど、13才の頃からピアノで作曲をするようになったんだ。そしてその頃からムーグとかオーバーハイムとかのアナログ・シンセサイザーを買うようになった。その頃サンプラーなんかは高くて買えなかったし、フェアライトを買うなんて、自分でクラブを一つ経営するくらいのものだった。テクノロジーの最先端を手にするということは、ある種の特権だったね。

その頃はどういう音楽が好きだった?

BW: トレバー・ホーンのプロデュース作品が好きで、ABCの「ザ・ルック・オブ・ラブ」とか、アート・オブ・ノイズなんかを好きで聴いてたよ。

エレクトリック・ミュージックにハマっていったのはどうして?

BW: そうだね、最初からエレクトリックな音とロマンチックなものの融合みたいなところに自分の興味があって、それでピアノで作曲するようになったんだけど、アンログ・シンセサイザーの音色とクラシック・ミュージックとの融合がつくりだす独特の雰囲気にすごく魅せられて...。

1994年からあなたはTRCやAXODYA、KROMODEといった地元のレーベルからも作品を発表してきましたね。リフレックスから発表してきたものと、これらのレーベルからのものとで作品に違いはありますか? またこれら地元のレーベルについても教えてもらえますか?

BW: まず作品の違いについてだけど、確かに違いはあるね。リフレックス、そしてエイフェックス・ツインは独自のスタイルと雰囲気をつくり出してきた。リフレックスからの作品にはそういった彼らのパイオニア的精神を念頭においた作風にになっている。AXODYAやKROMODEからの作品はもっと発作的というか、パッと浮かんできたものを発表しているね。リフレックスからのものはもっとディープだね。TRCというのは地元ミラノのレーベルで、彼らのことは僕が小さな頃から知っているんだ。1993年の末に僕の作った4曲入りのDATを彼らが気に入ってくれて、それでリリースしようということになったんだ。そして更にそれをリチャードとグラントの二人が来に入ったんで、それがリフレックスからもリリースされることになった。それが「Scharlach Eingang」だね。

現在使っていつのはどんな機材?

BW: アップルのニュートン2000、マックのSE30!、パワーブック5300c、パワーマッキントッシュ7300 604/166を96MB/2GBで、オープン・ミュージク・システム、ビートニク、ヴィジョンとキューベース、コルグの1212マルチ・チャンネル・オーディオ・インターフェイス、オーバーハイムやOSCやムーグ、そしてローランドのシンセとドラムマシン、アカイのサンプラー、マッキーのミキサー、ヤマハのモニターにソニーのDATといったところかな。

影響を受けたアーチスト、共感するようなアーチストっていますか?

BW: 実は現在トーマス・ドルビーのサポートで新しいアルバムを制作しているところなんだ。すごくエキサイティングだね。ずっと最新のテクノロジーを使った作曲ということに興味を持ち続けていたんだけど、トーマスが現在取り組んでいるビートニクというシンセサイザー/サンプラーはまだベータ版だけど、16ビットのインタラクティブなオーディオCDを制作することが可能なんだ。これは革命的なことだよ!だってこれまでのテレビゲーム中のサウンドはクオリティーを高くしようとすると60MBから100MBといった容量を必要としていたんだけど、このビートニクではプラグイン・シンセサイザーがあるおかげで16ビットのサウンドが数キロバイトで提供できてしまうんだ。これでゲームのプログラマーはサウンドの容量を気にせずにゲームを制作することができる。坂本龍一の書くオペラは好きだね。あとはジュリアン・メンデルスゾーンやトレバー・ホーン。ジャズ・ピアニストではビル・エヴァンス、指揮者ではギル・エヴァンスが好きだ。ドビッシーやバッハも好きだね。

ジャズやクラシックといったアコースティックな音楽も好きなんですね。

BW: うん。僕は小さな頃からポップスやジャズ、クラシックを聴いて育ったんだ。僕の曲を聴いてダンスミュージックというヒトもいるけど、そんなふうに考えたことはこれまでに一度もないよ。僕がつくっているのはあくまでリスニング・ミュージックだよ。

アルバム「MODULE 2」には何か決まったコンセプトはあったんですか?

BW: 「MODULE 2」は12ビットのフィルターを使って制作したんだ。80年代の美しいメロディをもったテレビゲームのような雰囲気を出したかったんだ。過去に、いろんなテレビゲームや1950年代のSF映画などからのノイズやサウンド録り溜めていたDATがあったので、それらをオーバーハイムやOSCにサンプリング、エディッティングすることから始めたんだ。

これまでに他のアーチストと一緒に作品を手掛けたことはありますか?

BW: 1994に発表した「Scharlach Eingang」の中の曲をクリス・ジェフス(サイロブ)がリミックスしたことはあるね。今手掛けているアルバムでもミラノのG.ヴェルディ音楽学校のミュージシャンたちとオーケストラ曲をつくっているんだ。

現在のお気に入りの5曲とオールタイムのベスト5を教えてもらえますか?

BW: 最近聴いているのはトーマス・ドルビーのつくったサウンドトラックで「The Gate To The Mind's Eye」やプレファブ・スプラウトの新譜、坂本龍一の「スウィート・リヴェンジ」、それとリフレックスのものだね。オールタイムのトップ5というと;

  1. 「Astronauts & Heretics」「光と物体」/トーマス・ドルビー
  2. 「シェルタリング・スカイ」「ラスト・エンペラー(OST)」/坂本龍一
  3. 「Donkey Rhubarb」(with Phillip Glass)「Ambient Works Vol.1」/エイフェックス・ツイン
  4. 「コレクション」/ロキシー・ミュージック
  5. 「エレクトリック・カフェ」/クラフトワーク

といったところ。

じゃ最後に日本のみんなへのメッセージを。

BW:
「Love's pleasure drive his love away」
「the painter's brush consumes his dreams」
(William Butler Yeatsの2つの言葉)


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